笹門 優さまのお金
場所は山中。
時は秋。
人気はなし。
いるのは男がふたりだけ。
「金は用意してきたんだろうな?」
そう言ってきたのは、スーツを着た、それでも何処か薄汚く思える中年男。
下卑た表情がそう思わせるのだろう。 高いスーツを着せるのが勿体ないチンピラ染みた顔。
「仕方があるまい。 お前の様な男にやらなくてはならないのは業腹だがな」
金、お金、マネー、お宝、財宝。 そんな言葉が好きな、大好きな、愛してるといっても過言ではない男。
その為なら何でもする。
とは言っても腕っぷしはない。 ただ口で世を渡る。 詐欺、脅迫、言いくるめ。
それ故に怨みを持つ者は多い。
「持っていけ。 屑が」
大金の入ったスーツケースをヤツの前に滑らせる。
鍵を開けておいたケースは上手くヤツの手前で開き、その中身をさらけ出した。
──無数の札束が姿を現し、ヤツの目が釘付けになる。
「へへ、そう言うなよ。 これからも仲良くやっていこうぜ──!?」
手を伸ばしたヤツの姿が消える。
予め用意してあった落とし穴。 深さは5mほど。底には枯れ葉がたっぷりと。
「な、な、な、な………!? なんだあ!? 何が、何があっ!?」
穴に落ちないように気をつけて覗き込む。 男は金にまみれた……いや、偽札にまみれた姿のまま、こちらを見た。
「てめえっ! 何を……」
怒りの形相を向ける──まあ、迫力はない──ヤツのダミ声を聞き流し、枯れ葉と偽札にまみれのそこへ火の付いたマッチを落とす。
「な、何をしやがるっ!?」
その声を無視して、マッチを落とす。
一本ずつ、一本ずつ落としていく。
「ま、まさか、止めろぉ! 金は返す! アンタとももう会わない! だから止めろぉ!?」
「金にまみれて死ねるんだ。 喜べよ?」
マッチを落とす。 マッチを落とす。 マッチを落とす。
まあ、こんなモノか落ちたくらいじゃ、すぐには燃え広がる事もない。
「おや、残りが一本しかないな」
わたしの声が聞こえたのだろう。 ヤツが安堵の息をつくのが判った。
だが──
──バシャーン!
「わぷっ!? クセえ、ってガソリン!?」
隠してあったタンク。 中身はヤツの言うとおりガソリンだ。
「さあ、最後の一本だ。 気張れよ?」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
人々を騙し、脅し、食い物にしてきた男。
だからこそわたしに殺人依頼のきた男。
その最期は自分が愛して止まないお金さまを模した幾多の偽札との焼死。
似つかわしい、だろ?
てっきり相手の男は三途の川の渡し守かと……
ストレートにそのまま終わるのもいいですね(๑•̀ㅂ•́)و✧




