清坂 正吾さまのお金
私は、とあるゲームに参加することになった。
このゲームでは、命を落とす可能性もあるという。
それでも、私は参加した。
――お金が必要だからだ。
娘の高額な手術費用。
私の命と引き換えになろうとも、必ず稼いでみせる。
「それでは、お集まりの皆様。ゲームを開始いたします」
会場のスピーカーから、無機質な声が響いた。おそらくゲームマスターなのだろう。
参加者はおよそ二十人。
誰もが無言で、互いを警戒している。
勝ち抜けば、賞金一億円。
生きて帰るか。
ここで終わるか。
「今回のゲームは、こちら!」
デン、デン、デン、デン、デン、デン、デン!
場違いなほど陽気な効果音とともに、スクリーンに大きな文字が映し出された。
『食べ物しりとり』
(……は? しりとり? 命がけで? しりとりを?)
「それではルールを説明いたします。食べ物をテーマにした“しりとり”です。順番に食べ物を答えていただきます」
「しつもーん」
背の高い男性が手を挙げた。
「日本で食べていないものでも、他国で食べられていればOKですか?」
「フフフ……とても良い質問ですね」
男性は、照れたように頭を掻いた。
(て、照れるな……!)
「食べ物かどうかの判定は、実際に回答者に食べていただきます。食べられれば、食べ物と見なします」
(え……? つまり、食べられれば何でもアリ?)
「しつもーん」
再び、同じ男性。
「バナナは、おやつに入りますか?」
「……それでは、くじ引きを行います」
(無視された……! さっき褒められて調子に乗ったな)
男性は、しょんぼりしていた。
◇
くじ引きの結果、私は三番。
「それでは開始します。一番の方からどうぞ」
「和牛サーロインステーキ五百グラム」
(いきなり贅沢! しかもグラム指定!?)
ジュー……ジュー……
奥から調理音が聞こえる。
やがて扉が開き、湯気を立てたステーキが運ばれてきた。
男性は幸せそうに頬張る。
私たちは、それを黙って見守る。
(……テンポ、悪くない?)
二番の男性の番。
(“む”って難しくない……?)
「ムール貝」
(おお、ある!)
しかし運ばれてきたのは──殻付きの生のムール貝。
(そうか! 料理名にしなければ素材のまま! まさか……死の可能性って、生食による食中毒!?)
男性は青ざめる。
「あ、あの……食べなかったら?」
「その場合は脱落。お帰りいただきます」
(え、帰れるの? 死なないの?)
「じゃあ……帰ります」
二番はあっさり脱落した。
「三番の方。“い”から始まる食べ物を」
「いちご」
運ばれてきたのは、いちごが一粒。
私はすぐに食べ終えた。
◇
その後も、しりとりは続く。
「ゴルゴンゾーラパスタ」
「タン塩十人前」
「江戸前寿司三人前」
「海老天丼、三つ」
(……ここ、お食事処? みんな注文してない?)
周回を重ねるごとに、参加者は満腹で脱落していった。誰もが満足そうな顔で。
そして最後まで残ったのは、私。
私は、お腹にたまらないものばかりを選び続けた。
こうして私は賞金一億円を手に入れた。
だが──
好きなものを腹いっぱい食べて帰っていった彼ら。
好きなものを我慢し、お金を得た私。
果たして、どちらが勝者なのだろう……。
いや、それよりも──
何だ、このデスゲーム!!
面白い! 読みながら色々と考えさせられました。『私も中学生の頃、ズレた質問を自信満々に先生の前まで歩いていってして、スルーされてトラウマ負ったなぁ』とか、『そうか、料理名で答えないといけないのか』とか、『そんなに食べたら脱落しちゃうよ』とか、『そうか、脱落しても幸せなんだ』とか、『いや、娘の高額な医療費のために闘ってたんじゃないの!?』とか、『なんだこのデスゲーム』とか──
ありがとうございましたm(_ _)m




