地湧金蓮さまのトリプルお題
猛「おかん、これ『ねぎ塩焼うどん』とちゃう」
母「えっ? なんで」
猛「『ねぎ塩焼うどん』言うんは、ねぎの塩焼き・素うどんとちゃうねん。ねぎ塩・焼きうどんやねん」
(猛、「ねぎ塩・焼きうどん」をスマホで検索し、写真を母に見せる)
「ほれ」
母「あ、ほんまやね。豚肉ようけはいっとるねえ。でも、わたし、わざわざスーパーに九条ネギ買いに行ったんやけど」
猛「それはご苦労さん。でも、買いに行くまえに、ネットで検索したらええやん」
母「わたし、ネギを串にさして、炭火で炙ったんやけど」
猛「いや、そういう問題ではなく」
母「あんたがちゃんと言わんから悪いわ」
猛「またすぐそうやって人のせいにする」
母「あんたは、ネギを串にさして炭火をおこして岩塩をつけてあぶった、このわたしの努力を認めてくれへん。母の愛を認めてくれへん」
猛「なあにが母の愛や。そんなん愛のおしつけやろ。愛の亡霊やん」
香「ちょっとちょっと。なあにまた喧嘩?」
母「そうなのよ香さん。猛がね、ネギ塩焼うどん食べたい言うてたから、作ってみたんよ」
猛「そんで、素うどんの上に、ネギの焼いたの載せて持ってきてんねん」
香「はあ。ネギきれいに焼けてますね。せっかく持ってきてくださったんだから、いただきましょうよ」
猛「アホか。そんなもん食えるかい」
母「まっ! そんなに気に入らなんだら、食べんとき!」
猛「そうさせてもらいます~」
母「憎たらしい、誰の子やろ」
猛「あなたの子です~」
母「かあー、もう我慢ならん」
<地の文>お母さん、どんぶり持って、ぷいっと帰ってしまいます。
そうやって、次の日の夕方【小拍子】
香「ちょっと、あなた。サ高住『漆黒の翼を喪失せし者』てとこから電話よ」
猛「は? 『漆黒の翼』? なんやそれ」
香「そこの担当者の方がね、お母さんが入居を希望されているから、保証人になってくれって」
猛「保証人? またあのおかん、なにをしてくれてんねん。ちょっと、行ってくる」
香「いってらっしゃい」
<地の文>数時間たって、母と息子、連れだって帰ってまいります。
母「(泣きながら)だってあんた、わたしのこと、『愛のお化け』言うたでしょ」
猛「愛のお化けとは言うてない、『愛の亡霊』言いましたけど」
母「一緒やないの! どこが違うの?」
猛「はー。それで。サ高住入ろうと思ったん?」
母「『ねぎ塩焼きうどん』作り方もまちがえてもうたし。一人暮らしする自信がなくなってしもうて」
猛「はあ。まあ入るにしても、もうちょっとええ名前のところなかったん?」
母「なんで? 『漆黒の翼を喪失せし者』かっこええやん」
猛「えええええー?」
母「またあんたはわたしのセンスを否定する。なんでもかんでも否定するんやから」
(母、手に持ったハンカチで鼻をかむ。)
<地の文>そこへ、小学生の孫が帰ってまいります。
等「なに、またお父さんとおばあちゃん、喧嘩してるの?」
母「そうよお、ねえ、サ高住『漆黒の翼を喪失せし者』って、変かなあ?」
等「サ高住ってなに? 『漆黒の翼を喪失せし者』……。かっこいいじゃん!」
猛「またわけわからんセンスの人が増えた。(やけくそ気味に)ほんならお前もサ高住に住め。そこから学校に通え!」
等「そうさせてもらいます~」
猛「また。意味もわからんくせに、しょうもないことを。ほんまに、誰の子や」
等「お父さんの子です」
【終】
「サ高住」……サービス付き高齢者向け住宅
等「サ高住……。そこに住みし者は皆、人間を喰らうようになるという、あの……」
猛「等、それは寄生獣や」




