清坂 正吾さまの青空
雲一つない青空。
絶好の撮影日和。
今日は、菜朗南小学校の創立100周年記念、全校児童による航空写真撮影の日である。
校庭では、児童と職員が並び、校章と『菜朗南小 祝100周年』の人文字を作る予定だった。
しかし──
6年1組は、窮地に立たされていた。
クラスの半数がインフルエンザで欠席。
彼らは、『祝』の『しめすへん』担当。
現在、担当児童は……たった一人。
担任の山田先生は、額に汗をにじませた。
(ど、どうする……。まさか、こんな日に半数が休むなんて……!)
「山田先生!」
振り向くと、校長先生が青ざめた顔で立っていた。
「どうしましょう……。『しめすへん』が、ほぼ壊滅状態です」
「校長先生……いっそ、『しめすへん』無しでは?」
「無し!?」
校長先生の脳内に完成図が浮かぶ。
『兄 100周年』
「いやダメでしょう! 『兄 100周年』って何ですか!? 誰の兄!?」
「では……『只』ということで」
再び、完成図。
『只 100周年』
「地味! なんだか地道に積み重ねた感じはしますが、お祝い感ゼロ!」
「……では、『ハロー』で」
『ハロー 100周年』
「ちょっと良い! 『新時代がキター!』という感がありますね!? いやダメだ! 何を一瞬ときめいてるんですか私は!」
校長先生は頭を抱える。
「では校長先生、何か妙案を……」
「う、うーん……そうだ! 近隣住民にご協力いただくのはどうでしょう!」
「名案です!」
職員たちは一斉に校外へ駆け出した。
一時間後。
山田先生が肩で息をしながら戻ってくる。
「校長先生……全滅です……。どうやら老人会の旅行の日だったようで……」
「な、なんと……!」
万事休す、と思われたその時。
5年2組担任の井上先生が、誰かを連れて校門から現れた。
「校長先生! お一人、ご協力いただける方が!」
「本当ですか!? 救世主ですか!?」
「はい! ご近所にお住まいの……デビル吉田さんです!」
黒いマントを翻し、その男は高らかに笑った。
「フハハハハ! 我輩に協力を求めるとは……ついにこの悪魔の力が必要になったようだな、人間ども!」
校庭に、不穏な風が吹き抜けた。
(救世主じゃなくて、悪魔だった……! え、大丈夫? 不審者を学校に入れちゃって大丈夫!?)
「ありがとうございます! 吉田さん!」
満面の笑みで、デビル吉田を迎える山田先生。
(え、知り合い? 山田先生の知り合い……?)
校長先生がそんなことを考えていると、山田先生が言う。
「正義くんも不安がっていたんですよ。お父さんが来てくれて、安心したでしょう」
(正義くん……? そうだ、『しめすへん』の唯一の生き残りは吉田正義くんだ! デビル吉田、保護者なの!? 不審者じゃなかったから、良かったけど……。でも、デビルの息子なのに、『正義』って……)
校長先生が、そんなことを考えていると、撮影用のセスナが近づいてきた。
(ヤバい! こうなりゃ、ヤケだ!! 今の時代、後で加工もできるだろう……)
「皆さん! さあ、自分の配置についてください。デビルさんと正義くんは、寝転がって『へん』の部分を作ってください」
セスナから、何度もシャッターが切られる。
一か月後。
(航空写真が出来上がったのか……。どれどれ……)
校長先生は、淡い期待を抱きながら封筒に入った写真を取り出した。
問題の「しめすへん」の部分。
吉田親子は、確かに寝転がり、形を作っていた。
しかし──
それは『ネ』ではなく──
『口』だった。
完成写真。
『呪 100周年』
校長先生は、そっと天を仰いだ。
雲一つない青空が、そこにあった。
おもしろかったです。めっちゃ笑いました(*´艸`*)
言葉のパズル師ですね(๑•̀ㅂ•́)و✧




