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無謀! 瞬発力企画2 会場  作者: しいな ここみ
第六回目 『ゲシュタルト崩壊』『マインドセット』
148/155

大野 錦さまのゲシュタセット

「うわ~ん! またいじめられたよ~! ケンカに強くなる道具を出してよ~!」


 とある眼鏡をかけたさえない小学五年生の男の子が自宅の自室に入るなり言う。

 いつも自分をいじめるガキ大将にこの日もコテンパンにされたのだ。


 言われた相手は、この男の子の同居人の青色のタヌキのようなネコ型ロボット。


「そうやっていつもボクを頼るんじゃない!」


 ロボットは冷たく突っぱねる。

 いつもはなんだかんだ文句を言いながら、男の子の願望をかなえる秘密道具を出してくれるのだが……。


「なんだよ! 今日はおかしいぞ!」


 男の子が強い調子で言うと、ロボットは意外な返事をした。


「実はね。ボクは元の未来の世界へ帰らなくちゃいけなくなったんだ」


「えっ!?」


 このロボットは未来から来た。

 この男の子を世話し、将来が素晴らしくなるように、と男の子の子孫が送った。

 だが、これは未来の世界である種の違法となり、ロボットは元の未来の世界への強制送還が決まってしまった。


「帰るのは明日なんだ」


「そんな! ウソだと言ってくれ!」


 男の子はママとパパの説得で、ロボットが元の世界へ帰ることを受け入れる。


「ねぇ、明日帰るのなら今日の夜は二人で散歩しない?」


 男の子は提案し、ロボットも承諾する。

 その日の夜。散歩をする二人だが、やっぱりロボットが帰るのが我慢できない男の子は一人になりたくなる。


「ボクはこの公園にいるから、キミは先に帰ってていいよ」


 男の子はロボットに言う。

 ロボットはこうして帰ったが、やはり心配でこっそり男の子が見えない位置でたたずんでいた。


「うお~っ! なんかむしゃくしゃするな~!」


 それは例のガキ大将。

 むしゃくしゃして眠れない彼も、男の子がいる公園にやって来た。


「おっ、ちょうどいいところにいるじゃないか!」


 ガキ大将は男の子を殴りかかる。

 またもボロボロにされる男の子。

 だが、この夜はいつもと違った。

 ガキ大将に這いつくばりながら、渾身の力で立ち向かう。


「ボクだけの力でキミに勝たないと……。ロボットは安心して未来へ帰れないんだ!」


 いつも弱虫の顔しか知らないガキ大将には、その表情がまるで別人のように見えた。

 まるで認識が崩れる、ゲシュタルト崩壊のようだった。

 ガキ大将は降参する。


「お、オレの負けだよ~! 許してくれ~!」


 ガキ大将は逃げて行った。


 公園のかげで見ていたロボットはボロボロの男の子を助け起こす。


「見てたんだろ。ボクだけで勝ったよ。これで未来へ安心して帰れるだろ」


 ロボットは大量の涙を流しながら男の子を自宅まで送り届け、未来の世界への入り口である男の子の部屋の机の引き出しの中に入り、未来へと帰った。



 翌朝。

 男の子はロボットがいないことを受け入れる。

 机の引き出しを開けたが、未来への入り口はない。

 すると引き出しの中に、ロボットのメモがあった。


「もし、君が我慢できないことがあったら、ボクの寝床にある道具を開け」


 ロボットが寝床にしていた押し入れには、飲み薬があった。

 男の子はこれを飲んだが、すでにこの現実を受け入れるマインドセットがなされていたので、処分のつもりで飲んだのだ。


 そして、男の子はこの飲み薬の説明書を読む。

 説明書にはこうあった。


「この薬を飲んで話すと、言ったことの反対のことが起こる」


 男の子の部屋にママが現れた。


「ロボットはもういないの?」


 現実を受け入れている男の子は涙をこらえ笑顔で言う。


「いるわけないじゃないか。もうロボットは帰ってこないんだよ。もう二度と会えないんだよ」



 すると……。

 男の子の机の引き出しから、なんとあのロボットが現れた!

 

「キミはあの薬を飲んで、ボクと二度と会えないことを言ったのかい!?」


 びっくりした男の子はロボットに抱きつく。


「うれしくない! これからまたキミといっしょにくらさない!」



おしまい


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