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無謀! 瞬発力企画2 会場  作者: しいな ここみ
第六回目 『ゲシュタルト崩壊』『マインドセット』
143/155

藤村 としゆきさまのゲシュタセット

「こんにちは。うちの医院は初めてですね?」


「はい」


「どんな症状でしょうか?」


「はい。私は、見慣れているはずのものが、認識できなくなるときがあるんです」


「ほう。どんなものが認識できなくなるのです?」


「身のまわりの物、どれにでも起こるんです。家具、車、建物、……妻の顔など」


「なるほど。どんなものにでも、ですか?」


「はい、ときには空や信号機にまで起きることもあるんです」


「うーん」


 医者は、しばらく横を向いて考え、やがて言った。


「症状は、『ゲシュタルト崩壊』ですね」


「え、なんですかそれは?」


「文字などを見つめていると、記号として認識できなくなることがありませんか?」


「……まあ、そういうこともあったような」


「それが『ゲシュタルト崩壊』なのですが、あなたの場合、それがすべての対象に起きているようですね」


「すべての?」


「目に映るすべてのものに、です」


「はあ……。それで、どうすれば」


「大丈夫ですよ。この症状は、記憶は正常なので、ただちに生活に支障が出るようなことはありませんから。薬を処方しておきます」



 ────3日後



「症状はどうですか? 薬は効きましたか」


「全然ですよ、先生。前よりひどくなっています。実は、交通事故を起こしてしまいまして」


「事故! どうしたんですか?」


「私の過失なんです。赤信号で進んでしまったのです」


「赤信号では止まらなければいけないのは、分かってますよね?」


「はい。頭では分かっています。なのに認識できないんです。どうしてでしょう?」


「これは……、『ゲシュタルト崩壊』の症状が進んでいますね」


「ど、どういうことでしょう?」


「つまり、『ゲシュタルト崩壊』が、あなたの『マインドセット』にまで及んでいるということです」


「え? マインドセットってなんですか」


「マインドセットとは、一言で言えば、あなたの『信念』です。社会的、個人的なあなた自身の行動の規範が、バラバラになっているようです」


「は、はあ……」


「それは、『何をするべきか』、あるいは『何をしてはいけないか』、という行動に表れるわけですよ」


「……なるほど。先生、そういうことだったんですね」


「はい。だから、『赤信号では進んではいけない』、と知っているのに、進んでしまった、と」


「『してはいけない』とわかっているのに、やってしまったわけですね……」


「そうです。それで、治療ですが……」


「実は、さっきから、先生の顔もゲシュタルト崩壊しているんですよ」


「ああ、やはり症状が進んでますね」


「この前は、先生と初めて会ったから大丈夫だったんです。今は、先生を知っているのに、誰だかわからないんです」


「そうですか。あれ? ……どうしました? なぜ、包丁なんか持っているんです?」


意味なんて元々ないですからね。


人の命にも……(*^^*)


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― 新着の感想 ―
医者も危ない職業ですね。。
あっ… 危ない。
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