笹門 優さまのゲシュタセット
VRMMO『ラストソング』。
吟遊詩人の『呪歌』や魔法使いの『呪文』などを自ら設定する事が出来るという画期的な、人によっては面倒なシステムを採用したRPGであった。
勿論面倒な場合などはデフォルトのモノを使用出来るが、例えば呪文であれば一定の法則下で設定する事が出来、そんな独自な呪文詠唱は通常よりも強力な効果を発揮したのだ。
剣士などは『集中』や『自己暗示』、『誓い』など、一部のスキルには同じ様な要素が組み込まれ、『技』や『奥義』の威力や汎用性に変化を与えられた。
もっとも、そんなだからこそ混沌とした光景も生まれていったのだが…………。
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大勢の冒険者たちが入り乱れ戦う相手は巨大で醜悪な姿を晒す毒巨人ポイズンジャイアントである。
爛れた皮膚は不気味に胎動するように蠢き、時折破れては周囲に毒を、瘴気を蒔き散らかす。
それはこちらから攻撃を仕掛けても同様だ。
斬撃も打撃も、傷ついた部分からひたすら毒を放出する。
それはヒドく皆の士気を低下させた。
「エンチャンター! バフをくれっ!
このままじゃ『士気崩壊』で能力値が低下する!」
戦いに集中していた剣士が漸く指揮を出した。
所詮中ボスと、寄せ集めたレイドバトル。 まともにリーダーすら決めていなかったのだが、このままでは敗北は必至だった。
「我は求める折れない心 士気よ 癒されよ 『レジリエンス』」
「お前なら出来る 出来る 出来る! 『セルフエフィカシー』!」
「あれはカボチャ あれはカボチャ あれはカボチャ 気の持ちようでボスもザコ! 『マインドセット』!」
順に『士気回復』『自己支援』『他者支援』である。
毒巨人の迫力に押されていたパーティーがやって機能し始めたのだ。
「お前の心は決して誰にも侵されない 『アイソレーション』」
「ざまあを言わせたらあ! 『シャーロンフロイデ』! からの『ダークトライアド』!」
強烈な一撃だ。
デフォルトでは『怒りの一撃』と『三連撃』である。
多少でもシステムの恩恵を受ける為に技の名前だけを変えるプレイヤーも多い。
ポイズンジャイアントが毒の息を吐いた。
「お前達、大勢でよってたかって! そんな事をして恥ずかしくないのか!?」
ついでに毒も吐いたがそんな事を気にするような人間はレイドバトルなんてしないのである。
「よし! 敗北前の台詞が入ったぞ! もう少しだ!」
それどころか喜びを露わに襲い掛かった!
その様相はバーバリアンかバーサーカーか。 なんと後衛職のバードがリュートを両手に持ち殴り掛かったではないか。
「『認知バイアス』! 『マインドフルネス』! からの、『ゲシュタルト崩壊』!!」
その一撃にポイズンジャイアントは倒れたのであった……………。
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「なんかお前らの技名、偏ってなかったか?」
「そんな事はないだろう? 普通だよ、普通」
そんな事を宣う彼等が心理学を学ぶ学徒であるのは言うまでもない。
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台詞の中にある『』は全部そっち系の言葉です。
うまいなぁ……




