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無謀! 瞬発力企画2 会場  作者: しいな ここみ
第六回目 『ゲシュタルト崩壊』『マインドセット』
135/179

清坂 正吾さまのゲシュタセット

 うちの部署の高橋くんは、いつもテキトーだ。


 新入社員の遠藤くん。

 彼の指導係が、高橋くんである。


 ある時、遠藤くんが尋ねた。


「先輩、さっき部長が言っていた“マインドセット”って、どういう意味ですか?」


 高橋くんが答える。


「え、知らないの? “マインドセット”って、あそこの食堂のランチメニューだよ」


(ち、違う……。“マインドセット”は心のあり方、考え方の前提になるものよ! ランチメニューって何よ!)


 私は心の中でツッコんだ。


「ランチメニュー……?」


(さすがに遠藤くんも、違うって分かるよね……? 高橋くんのテキトーさに気付いたよね……?)


「ああ、Aセット、Bセットとかあるだろ? その一つだよ」


「へぇ~、さすがですね、先輩。何でも知ってるんですね」


(え、納得するの……? 遠藤くん、素直すぎない?)


「へへ……、だろ? でも、あそこの食堂はカレーがうまいんだぜ」


「そうなんですね。今度行ってみます。……あれ? でも部長が『プロジェクトの成功には、チーム全員のマインドセットが必要だ』って言ってましたよ?」


「ああ、それはあれだよ。“みんなでランチ食べて士気を上げよう”って意味だよ」


「へぇ~、そっかぁ。楽しみですね、みんなでランチ」


「ああ。でも俺はカレーを頼むけどな!」


(……大丈夫か、この部署)



 またある時。


「先輩、さっき山田さんが言ってたんですけど、“ゲシュタルト崩壊”って何ですか?」


(“ゲシュタルト崩壊”……。山田さん、日常でそんな言葉を使うの……?)


「“ゲシュタルト崩壊”……なんだ、知らないの?」


「はい……すみません。勉強不足で」


「“ゲシュタルト”っていうのは、あそこのケーキ屋のタルトだよ。“ゲシュタルト崩壊”っていうのは、“ゲシュタルトが崩れたから安くしますよ”って意味だよ」


(違う……! “ゲシュタルト崩壊”は、それまで普通に認識できていたものが、突然分からなくなる現象のことよ!)


「へぇ~。味は変わらないから、見た目を気にしなければお得ですね」


(遠藤くん……騙されやすいんじゃない……?)


「でも山田さん、『ゲシュタルト崩壊で“機会”の“機”の漢字が分からなくなった』って言ってましたよ」


「ああ、それはあれだよ。崩壊した“ゲシュタルト”を食べすぎて、漢字が分からなくなったんだろう」


「そっか。面白い人ですね、山田さん」


「だろ? でも俺はカレーが好きだけどな!」


(結局それか……。さすが、“セカンドボイス高橋”……)


 今日も、うちの部署は平和だった。

うまいな……


ランチセットなだけに


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― 新着の感想 ―
遠藤くん、超素直! でもそれじゃ世の中渡っていけないぞ。
 セカンドボイス高橋の適当ぶりに、何故でしょうか、癒されます。語り手の彼女のツッコミも的確ですね。難しい言葉がテーマでしたから、やはり難しいお話が集まるのかと思っておりましたが、こういう切り口もあるの…
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