田尾風香さまのひとつのおおきな(略)
王道っぽいハイファンタジー
(タイトル未定、時間が足りないけど、なんとか書いた
「あともう少しだ!」
俺は声を張り上げた。
目の前の魔王が放つ魔法を、俺を含む一般の兵士が作るちっぽけなバリアを何重にも組み合わせて、何とか防ぐ。俺たちの後ろにいるのは、魔王に生け贄として攫われた人間たち。このバリアを破られれば、せっかく助け出したその人たちも助からない。
ある日、突如世界に現れた「魔王」という存在と、それに付き従う凶暴な魔物たち。その圧倒的な力に、人間はなすすべもなく倒されていった。
最初は何とか抵抗していた国も、疲弊していく。もう駄目だと、人間は滅びるのだと、諦めかけた頃、何かの物語のように「勇者」が現れた。そして「聖女」や「大魔法使い」「剣聖」と呼ばれる者も、勇者の元に集っていく。
一体倒すのも命がけな魔物を、彼らは一撃で仕留めていく。その姿に、人々は再び立ち上がった。一般の兵士たちも勇者たちと共に、無辜の人々を助けるべく、魔物たちと戦いの場に立った。
そして今、勇者たちは魔王が誕生した地。魔王の膝元まで迫ったのだ。
勇者たちは魔王直属の配下だという魔物と戦っている真っ最中だ。その隙に、俺たちは魔王誕生の地、その奥深くに入り込んだ。
人間を捕らえて、それを生け贄にすることで、魔王とその配下はさらに力を増す。その捕らえられた人たちを助けるためだ。
それは上手くいった。……上手くいったはずだった。
助け出して逃げようとしたところで、魔王が現れたりしなければ。
いや、きっと分かっていて見逃されていたのだろう。俺たちを見てニヤリと笑って、問答無用で魔法を放ってきた。この魔法がどういうものなのかは分からない。だがきっと、魔王は俺たちすら生け贄にしようとしている。
だから、負けるわけにはいかない。
「勇者が来るまで、絶対に耐え抜け!」
俺はもう一度叫ぶ。その声に、バリアにさらに力が込められたのが分かる。
俺たちは弱い。魔王とまともに対峙したって、勝てるはずがない。けれど、弱くても集まれば。その力が一つに集まれば、時間を稼ぐくらいできるはずだ。
だが……。
「早く、きてくれ」
小さくつぶやいた。顔が白くなっている者。体が震えている者。口から泡を吹いている者。……限界だ。これ以上はもう、もたない。小さな力しかもたない俺たちは、瓦解してしまえばそこまでだ。
誰かが後ろに倒れた。膝をついて座り込んだ。バリアが弱くなる。ヒビが入る。「無理だ」とつぶやく声が聞こえた。そのときだった。
一筋の光が走った。
その光は、魔王の魔法を断ち切った。そして、気付けば俺たちと魔王との間に人影があった。そいつが、ふり返って俺を見た。
「悪い、待たせた」
「……遅いぞ。もっと早く来い」
「だから、悪いって謝ったじゃないか」
そいつは笑った。笑い事じゃない。こっちはやられる寸前だったんだ。だというのに、そいつは、俺の幼なじみは、まったく悪びれない。
『僕は勇者みたいだ。だからちょっと行って、魔王を倒してくる』
いきなり変なことを言い出したそいつは、手ぶらでさっさと出かけようとした。とりあえずぶん殴って止めて、「ちょっと行く」ために必要なことを、一緒にきっちり勉強した。あとは、笑って送り出してやろうと思っていたのに、「一緒に来て」と言われた。
そのときの笑顔と今の笑顔が同じで、無性に腹が立つ。
何の力ももたない俺がいたせいで、同じく何の力も持たない奴らが集まってしまった。そして、ここまで来てしまった。
「今のうちに、トンズラするぞ」
魔王なんて代物は、デカい力を持った奴がどうにかすればいい。俺たちみたいなのがいても、いいことは何もない。俺たちには俺たちのできることがある。勇者一人じゃ、助け出した多くの人たちを支えて一緒に逃げるなんて、できないからな。
勇者を見る。魔王と戦い始めている。聖女たちはどうしたんだよと思うが、それも俺たちが気にする事じゃない。
「今日はお前の誕生日だ。魔王討伐と一緒に、盛大にお祝いしようぜ」
パーティーを準備して、せいぜい驚かしてやろうと、俺は思ったのだった。




