菱屋千里さまのひとつのおおきな(略)
「何見てるんだい?」と祖母が言った。
「エヴァ」
「何だいそれは」
新世紀エヴァンゲリオン。主人公のシンジは幼い頃に父親のゲンドウに捨てられた。なのに突然呼び出され、巨大なロボットに乗れと言われた。なぜ自分なのか教えてもらえなかった。シンジが断ると、全身包帯だらけの女の子がストレッチャーで運ばれてきた。綾波レイ。代わりに乗ろうとする彼女を見て、シンジは乗った。逃げちゃダメだ、と自分に何度も言い聞かせながら。シンジはいつも父親のお古のテーププレーヤーを聴いていた。外の世界を遮断するためだったのか、父親からもらった数少ないものを手放せなかったのか。
知らない天井。鳴らない電話。お風呂は命の洗濯。ペンペン。ビールの缶。逃げ出した後。ハリネズミのジレンマ。レイの部屋の制服と下着、ゲンドウの古い眼鏡。私が死んでも代わりはいるもの。笑えばいいと思うよ。あんたバカァ? 加持のスイカ畑。四人目の適格者。アスカの母親。私の中に入らないで。綾波を返せ。カヲル。好きってことさ。ピアノ。星空。最後のシ者。ありがとう。僕はここにいてもいいんだ。おめでとう。帰ってきたら続きをしましょ。みんな死んじゃえ。LCLの海。浜辺。気持ち悪い。波の音。
「男の子がロボットに乗って戦う話だよ」
「ふうん。マジンガーみたいなもんかい」
「まあ、そんな感じ」
***
言葉は全体に輪郭を与える。大きな塊にできる。でも、小さな欠片たちは見えなくなる。
――大きな塊は、コアじゃない。
でも実際、すべての物語は二行にまとめられる




