御田文人さまのひとつのおおきな(略)
ひとつのおおきなかたまりといくつものちいさなかけら
あるところに、しろい、おおきなかたまりがありました。
よくみると、そのかたまりは、いくつもの、ちいさなかけらでできていました
あるとき、ももいろのかけらがやってきました
「なかまにいれてくーださい」
おおきなかたまりのなかから、ひとつのちいさなかけらが、あるいてきました
「いいよ。でも」
ちいさなかけらは、ももいろのかけらをみて、いいました
「ぼくたちのなかまにはいるなら、しろくならないと」
「うん。でも、どうやったら、しろくなれるかな」
「かんたんだよ、みがけばいいのさ」
そういうと、ちいさなかけらは、ももいろのかけらをゴシゴシみがきだしました
「いたいよ!いたいよ!」
ももいろのかけらは、いいました
「だいじょうぶ!だいじょうぶ」
ちさなかけらは、さらにつよくゴシゴシみがきます
「いたいよ!いたいよ!」
「だいじょうぶ!」
「いたいよ!いたいよ!」
「だいじょうぶ!」
「あっ!」
ももいろのかけらのはじっこが、かけてしまいました
かけてしまったはへんは、ころがって、うみにおちてしまいました
「だいじょうぶ・・・ぼくがさがしてくるよ」
そういうと、ちいさなかけらはうみにもぐっていきました
どこまでも、どこまでも、もぐっていきました
それでも、ももいろのはへんはみつかりません
きがつけば、ちいさなかけらは、うみのあおいろにそまりました
「もうかえれない」
そうおもったちいさなかけらは、プカプカうみに、うかぶのでした
最後のページには、広い海に欠片が浮かんでいる絵が描かれている。
孤独で寂しい絵だったが、色合いは綺麗で、しばらく眺めたくなるようなセンスを感じさせる絵だった。
「へぇー、絵が上手いんだな。これって水彩?」
渡された絵本の原稿をテーブルに並べながら山本が言った。
午前11時の郊外のファミレスは人もまばらで、ゆったりとテーブルに原稿を広げる余裕があった。
「水彩風のCGです。そういうツールがあるんですよ」
佐藤は少し照れくさそうに言った。
「でも、ストーリーはまんまじゃねーか!大きな欠片がウチのフランチャイズチェーン、桃色のかけらが加盟店、ちいさなかけらはSV、すなわちお前。で、加盟店とやらかして逃げて退社したと」
「はい・・・やっぱりネタにするの不謹慎ですか?」
バツが悪そうに佐藤が伺う。
「いや、そんなの誰も気にしないよ。マズイのはそこじゃない」
山本は呆れたように言う。
「では、他にマズイ所って?」
佐藤は理解が追い付かないような顔で聞いた。山本は「そういう所だよ」と一旦呟いてから続ける。
「誰が面白いんだよ、こんな話?雰囲気だけのオシャレ絵本なんてニーズあるのか?」
「・・・」
意外な方向からの指摘に佐藤は言葉が出ない。
「こんな露骨にメタファー臭い話は、大人なら鼻につく。逆に子供には意味が分からない。結末が曖昧過ぎて教育効果も低いから親にも受けないだろ。想定ターゲットどこなんだよ?全部ひらがなってことは保育園年長ぐらいか?刺さらんだろ・・・こんな話」
山本の指摘が止まらない。
「・・・そんなガチな指摘が来ると思いませんでした。でも、言われれば、その通りだと思います。。。山本さんて、文学系強いんですか?」
佐藤はメモ帳を取り出し、細かに書き込みながら聞いていた。
「強くねーよ。普段は漫画しか読まない。全部顧客心理分析だ。ビジネスマンの視点で話してるだけだよ」
山本が広げていた原稿を集めて、佐藤に返す。
「だから、話半分で聞いてくれていい。持ち込み行ってプロの意見聞けば、また違うアドバイスも出てくるだろし・・・」
山本は一旦言葉を切って佐藤を見る。そして言った。
「この程度の話作るのに別にオレに義理立てしなくていいから。というか、読んだって元ネタなんて誰も分からんよ!義理立てるポイントが違うんだよな・・・」
こんな気が回るのなら、バックれずに仕事もケジメをつけろ・・・と、言いかけた言葉を山本は飲み込んだ。
「前からこういうの書いてたの?」
山本が話題を変える。
「はい。絵も文もずっと好きでした。いつか、ちゃんとチャレンジしたいと思っていて・・・」
佐藤はうつむく。その姿は、ガチガチの数値管理をするSVの姿とまったく重ならなかった。
「意外だな。お前もウチでは自分を削って白くしてたってことか」
山本が呟く。
「いや!そんな言い訳をしに来たワケじゃなく」
「分かってるよ」
皆まで言うなとばかりに山本が遮った。
遠くでネコ型配膳ロボットの「ご注文ありがとうにゃあ」という声がした。
佐藤は何度も手元の原稿をトントンと揃えている。
「こういうのどうだ?」
沈黙を破ったのは山本だった。佐藤が顔を上げる。
「桃色の破片を捜している道中で、小さな欠片は小鳥に合う。まぁ、子猫でも犬でも何でもいいんだけどな。欠片じゃない方がいい。とにかく、その小鳥が言うんだ。『綺麗な水色の欠片さん、こんにちわ』って」
「あっ!」
佐藤がまたメモ帳を取り出す。
それを見て山本が続ける。
「そこで欠片は気づく。自分も真っ白じゃなかった。そう思った時、足元には桃色の破片が落ちていた」
「で、それを拾って・・・」
佐藤は口をつぐむ、その先よくは自分では言えなかったからだ。
代わりに山本が続ける。
「水色の欠片は、大きな欠片のもとに帰るんだ。そして桃色の欠片とも仲直りする。ラストは見開きで大きな塊の絵。それも、遠目には白だが、よく見ると色んな色でできているような絵がいいな。どう?」
「はい!そっちの方が全然面白そうです」
山本は文章だけでなく、絵の構図アイデアもメモにまとめている。
それを見て山本は伝票を持って立ち上がった。
「じゃ、オレそろそろ次のアポがあるから」
即座に「払います」という佐藤に対し、「経費にするから」と山本。
「まぁ、しばらくは色々チャレンジしてみればいい。だが、いつまでもダラダラしない方がいいぞ。期限決めた方がいい。そんで、何かあったらいつでも連絡しな。首にならない限りオレは会社にいるつもりだから。がんばれよ」
山本は右手を差し出す。
「はい」
差し出された手を両手で強く握り返し、深く頭を下げて佐藤が言った。
「また、相談にのってください」
―了―
御田文人さまの作品かと思った……って書いてからサブタイトル見たら御田文人さまの作品だった!Σ(゜Д゜)←天然ボケ




