続・金の斧~鉄の心と泉の女神~
本作は、有名な寓話「金の斧」を読んだときに感じた、
「正直って、そんなに単純なものだろうか?」という疑問から生まれました。
正直に答えることと、期待通りに答えることは、必ずしも同じではありません。
また、善意で与えられる“ご褒美”が、必ずしも相手を幸せにするとも限りません。
この物語では、教訓を語るつもりはありません。
むしろ、教訓を求めてしまう私たち自身を、
泉の水面に映して眺めているような気持ちで書いています。
気楽に、時々立ち止まりながら読んでいただければ幸いです。
正直者の木こりは言いました。私が落としたのは金の斧です。
あなたにもらった金の斧です。
女神は言いました。あなたは正直者です。なにか期待してるのかもしれませんが、もう私は何もしません。
木こりは言いました。いえ、私の望みは叶いました。再びあなたに会えました。
翌日、木こりは銀の斧を泉に投げ入れました。
もう何も起こりません。
木こりは満足そうに微笑むのです。
私に不要なものはお返しします。願わくば本当に必要な人が斧を手にすることを
澄んだ泉は夕日に照らされ、ほのかに紅みを帯びていく。
【蛇足】
女神は湖の底。
もう、どんな顔してあなたの前に立てばいいのよ…あ、行ってしまう…
泉は、ますます紅みを帯びていく。
奴はとんでもないものを落として行きました。
警部「貴方の心です」
【続・続・それから】
あれ以来、泉に色々落として行く人が増えたような気がする。もう、何が正解か、分からないよ。
【勇者】
あなたが落としたのはこの「どうのつるき」ですか?
勇者「はがねのつるぎだよ」
正直者のには、このどうのつるきを与えましょう。
(勇者は弱くなった。)
【アスリート】
あなたが落としたの、この銀メダルですか、それとも金メダルですか。
選手「銅メダルです」
正直者の貴方には、この金メダルと銀メダルを…
選手「自分で、取りに行きます」
【おむころ】
あなたが落としたのこの銀のしらすとわかめのおむすびですか?
それとも金のチャーハンおむすびですか?
おじいさん「隣のばあさんが握った人妻おむすびじゃ。このあと、ネズミのところで宴会になるところじゃが、お前さんは誰?」
【正直者の木こり】
あなたが落としたのは、この鉄の斧ですね。
木こり「はい」
…あなたは正直物ですね。
それではまた。
木こり「ありがとう」
【正解】
あなたが落としたのは、何ですか?
はい、鉄の斧。では、この調書に間違いが無いか確認して、サインか捺印を、お願いします。
【ヤンデレ】
エヘヘ。ごめんそれ、結婚誓約書…
【暇つぶし】
貴方が落としたのは、この金の駒ですね。
「いや、飛車だよ。」
では貴方にはこの金の駒を差し上げます。
「頭金。詰みだよ。」
【結論】
もう。最初から私の負けね。アナタ。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
書き進めるうちに、女神はだんだん万能な存在ではなくなり、
泉もまた「試練の場」ではなく、
人が勝手なものを落としていく場所になっていきました。
正直であることは、美徳かもしれません。
けれど、それを評価し、裁き、報酬を与えようとした瞬間に、
何かが歪み始めるのではないか――
そんな感覚が、最後の「結論」に繋がっています。
この作品に明確な答えはありません。
もし読後に「自分なら何を落とすだろう」と少しでも考えていただけたなら、
それが、この物語にとっての一番の“ご褒美”です。




