年越しの数
大学生の頃、実家に帰らず一人暮らしのアパートで年越しをした。
大晦日の夜は特にやることもなく、適当にテレビをつけたまま年越しそばを食べていた。
二十三時五十分ごろ、突然インターホンが鳴った。
こんな時間に誰だよ、と思いながら覗き穴を見ると、誰もいない。気味が悪かったが、まあ空耳だろうと無視した。
すると今度は、ドアの向こうから
「……カウント、始まりますよ」と、はっきりした声が聞こえた。
一瞬、テレビの音かと思った。でもテレビは無音。ドア越しにもう一度、
「今年も、数えましょう」
意味がわからず固まっていると、ドアの外から、低い声で数字が聞こえ始めた。
「……十、九、八……」
年越しカウントダウン?でもその声は妙に近く、息遣いがドア越しに伝わるほどだった。
怖くなってテレビの音量を上げた。ちょうど番組でもカウントダウンが始まる。
テレビ「五、四、三――」
ドアの外「……四、三、二……」
ズレている。
テレビが「一!」と叫んだ瞬間、
外の声は「……ゼロ」と囁いた。
直後、ドアノブが――
ガチャ、ガチャガチャガチャッ!!
必死で押さえながら、心臓が止まりそうになっていたら、急に静かになった。
しばらくして恐る恐る覗くと、やはり誰もいない。
翌朝、管理人に聞くと、
「この部屋、去年の大晦日に住人が亡くなってるんですよ」と言われた。
死因は孤独死。発見された時刻は晦日ちょうど。そして、警察の記録には奇妙な一文があったらしい。室内の壁に、爪で刻まれたような数字が並んでいた
「10」から「0」まで
俺は今でも、大晦日の夜になると、インターホンの音がしないか、必ず耳を澄ましている。
今年も、数えに来るかもしれないから。




