透明人間の後悔
──透明になったきっかけは?
「学生の頃、ある実験に巻き込まれまして。偶然の産物です。
最初は運命だと思いました。映画みたいに、世界を驚かせてやろうって」
──それが、どうして今は後悔を?
「おかしいと思ったんです。
透明なはずなのに、妙に目立つ。
街を歩けば振り返られ、電車に乗れば子どもに指を差される。
“そこに誰かいる”って──見えてるような反応をされるんです」
──何か原因に心当たりは?
「……ええ。あるには、あるんです。
だから、何もできなくなりました。普通に生活することさえも」
──それは?
「……若気の至りとは言え、後悔しています。
昔の自分に言ってやりたい。
『背中のタトゥーだけは、やめておけと……』」