転生者がいたんだが思ってたのと違う。なんで?
この物語は獣人の主人公が転生者たちに会いにいきその生活をのぞいたり手助けしたりツッコミをいれる物語。
数多の転生者を抱える世界で主人公が見るものとは?
転生者の数だけ物語がある!
そんな闇鍋みたいな世界を主人公と一緒に覗いてみませんか?
自分は転生者ではない。
最強のスキル持ちとか、チートとかそういった神様からの恩恵を受けてこの世界に生まれ落ちたのが転生者。
俺は転生者をこの目で見てみたくて旅に出た。
俺の住んでいる所は神の住まう場所と言われる、人々に恩恵を授ける神様たちが住んでいる場所で細々と暮らしている。
別に自分は神様では無い。
神様に拾われてきた虎の獣人だ。
そこには色んな神様がいて、人はみな1柱の神に選ばれ加護を貰う。
それは街の教会で7歳になると加護の儀式にて授かる事ができる。
転生者がチートと呼ばれるのには理由があり、他の人とは違い神様から恩恵を受けられる。
加護は職業に直結したりする。
鍛治の神様とか、剣豪の神様とか。
豊穣や水神、炎神など八百万の神様がいる。
それぞれの得意分野で剣士や魔術師、鍛治師や料理人などの職種につく。
豊穣の加護を受けると、農業系のスキルを多く授かる。
例えば、小さい範囲だが雨を降らせる雨乞いや育成を加速する育成倍速、読んで字の如く植物鑑定などがある。
ただし、剣豪が剣術スキルで料理人になって居たり、豊穣が植物鑑定スキルで冒険者だったり。
加護によってもらえるスキルが違うだけで基本的に本人の希望の職に着くことができる。
さすがに努力が必要だが。
職種を選ぶ道標みたいな物で、絶対では無い。
転生者が受けられる恩恵は、神々が転生してきたこの世界の理から外れた者たちを憐れみ、通常なら一つしか得られない加護に加えてもう一つ加護が与えられるらしい。
その二つ目の加護のことを恩恵と呼んでいる。
転生者にしかありえない現象であるため、鑑定されて転生者だとバレる事もあるそうだ。
が、大体の転生者はスキル隠蔽保持者だ。
神様たちが転生者に必ず授ける加護とは別枠の特別なスキルだ。
転生者特典で、転生前にスキルの選択が出来ます。
なんて事はこの世界ではありえないのだ。
全ては神の思し召し。
どの神様が自分に加護をくれるかは神のみぞ知る。
俺はこの知識を創造神のユウスケ様から教えて貰った。
創造神様も転生者らしいく、日本の物語「ラノベ」の知識も教えてくれた。
結構面白くて色々話してもらった。
転生者の魂を導き、生まれてくる場所や前世の徳によって境遇を決めるのがユウスケ様のお仕事の一つで色々な事を知っている。
とある世界の日本と言う国から連れてきているらしい。
勇者は魂を異世界から連れて来られ、ユウスケ様によりこの世界の住人に転生する。
所謂異世界転生ものと言うらしい。
転生者の数は未知数で、どいつが転生者かは本人意外知らない。
カミングアウトしなければ。
でも俺にはわかる。
別に俺の能力とかでもスキルとかでも無い。
彼らに会った時に感じた違和感。子供なのに異様に大人びていたり、魔法を作り出したり。
そう彼らには独特の知識があるのだ。
日本と言う国の文化や機械の知識から、おばあちゃんの知識とか。
ユウスケ様に拾われるまでは知り得なかった知識を彼らは持って生まれてくる。
一般人ができないことが出来て愛されているのが大体は転生者だ。
王族の第三王子とか、いじめられていたお姫様とか。
最近は辺境の村人に生まれ変わったり、獣人や魔獣なんかに転生する奴もいる。
自由過ぎだろ、転生者。
そんなのみてみたいよな!
転生者の勝ち組の人生。
ハーレムとか、俺つええとか!
この世界魔王は居るけど、別に悪いやつじゃない。
魔族を束ねているだけで人の領域を侵すことはあまり無い。
この世界は沢山の魔王国ともっと沢山の人族の国と、一つの神の国でできている。
とまあ予備知識はこの程度で、早速旅に出ますか。
神様が作ってくれたランダムポータルで!
このポータルは神様達がが俺の為に作ってくれた、一度だけ何処かの村や都市に転送してくれる優れものだ。
俺の道楽に付き合ってくれる神様大好き。
いいか、お前ら。
転送や転移なんて転生者のチートスキルにしか無いんだよ。
さあ、旅のはじまりだ!
って意気込んで転送されて来たんだが、ポータルマジ酔う。
略してポマう。
目がまわる。改善の余地ありだったんじゃ無いですか神様方。
まぁ、いいや。
さて、ここは何処かな?
看板とか無いからね。
ゲームとかじゃよく有るみたいだけど。現実はそんなに優しく無い。
目と鼻の先に村があるから、転送位置は完璧だな。
ポマうが無ければ。
とりあえず村に入るか。
そういえば俺の事を話して居なかったな。
俺は虎の獣人で、今年で19歳。
獣人だからと差別される事の無い世界だから安心して旅ができる。
ラノベの中には獣人は奴隷なんてザラにある。
怖いよ、俺働きたくない。
でもこの世界は転生者のおかげで、奴隷制度もないし転生者様バンザイ!って感じ。
まあ俺もただの虎じゃ無いんだけど。
それはおいおいな。
木造の壁で囲われた村の入り口に向かうと、門番なのだろうか暇そうな老人が座っている。
「こんにちは」
お爺さんがこちらに気付きこえをかけてくれた。
「こんにちは、おじいさん!ごめんね、俺ここが何処かわからないんだけど」
おじいさんは少し驚いていたが笑顔で答えてくれた。
当たり前だけど普通目的もなく旅に出ないし、地図ぐらい待ってるはずだろ。
俺も持ってる。
でもランダムで転送されるから現在地はわからないのだ。
生まれ育った所を出たこともないしな。
「ここは、サシイヨの村だよ。何しに来たのかな?観光じゃ無いだろう?ここは何も無いからね。」
俺はおじいさんに近づき、辺りを見回しながら言った。
とても小さな村だ
「近くの村に住んでたんだけど旅に出ようと思ってね!俺方向音痴なんだよ。ところでこの辺は魔物とか出ないの?ダンジョンとかあったりする?」
俺は誤魔化しつつおじいさんに答えた。
「わはは!無いよ、無い無い!ここはこの世界で一番平和な村だよ。観光地もダンジョンもない、あるのは畑だけの村だからね。」
おじいさんは笑いながら言った。
豪快に大口を開けて笑うおじいさんが自虐的に言う
「そうなんだ。俺村に入りたいんだけど大丈夫?」
「おぉ、かまわねぇよ。なんもねぇ村だけどな!あと、村は大丈夫かも知れないが、街とかに入る時は身分を証明する物が必要だ。大きい所に言ったら冒険者ギルドに登録するなりして身分証を作りな。」
アドバイスをくれたおじいさんに御礼を言い、質素な門をくぐる。
おじぃ慣れておる。さては伝説の案内人(?)か?
田舎の村だ。良い意味で、のどかで活気のある。
畑作業をしている人、収穫した作物の下処理をしていたり。
俺は村人に宿屋の場所を聞いたがこの村には無いらしい。
まだ明るいし、次の街まで行くか。
地図によるとここか4、5時間で着くまだ9時だし行ってってしまおう。
ここから北に行けば少し大きな町があるみたいだし。
俺はおじいさんのいた門の反対側から出ることにした。
門に着くと5.6人くらいの人だかりが出来ていた。
馬車も一台止まっている。
門を塞ぐように止まっている為声を掛ける必要がある。
俺は別に人見知りでもコミュ障でもない。ましてや陰キャでは無い。断じてない。
でもさあ、初めての人とか大勢の人とかいると緊張しない?
「あの、何かあったんですか?」
俺が尋ねると村長と名乗るイケおじが答えてくれた。
「みない顔だね。私は今から娘を送り出さなきゃいかんのさ。」
「送り出す?嫁入りかなにか?」
俺が聞くと冒険者っぽい男の人が慌てた様子で近付いてきた。
「おい!言うなよ本当のこと。今村長は最強に見栄を張っているんだ。本当なら駄々を捏ねて娘さんを引き留めたいんだよ!」
村長がその冒険者を睨む。
「なんで?相手の男がやばいの?」
「やばいといえばやばい」
別の冒険者のお姉さんが答えてくれた。
「英雄なのよ。彼女の彼氏」
「まじで!!」
「ええ、この国を苦しめていたダンジョンの吹きこぼしを、たった5人のパーティーで食い止めたのよ」
だから村長はダメとは言えないのとお姉さんが俺にウィンクしながら言う。
ウィンクいる?いらなくね?
「じゃあ今から街に英雄が来るの?」
「そうだ。祝勝記念の凱旋だな。」
「彼女1年近く会って無かったから、一目でも会いたいんだって。英雄はまだ故郷には帰れ無いから」
冒険者達の話を聞いて思った。
転生者案件じゃん。
「俺もついて行ってもいい?」
俺が聞くと冒険者の人たちは快くOKしてくれた。
自分の身は自分で守れるなら良いんだそうだ。
娘さんは戦えないが、馬車の貸し出しと少しの食料で依頼を受けた冒険者の彼らが護衛をするんだって。
「よろしくお願いします!」
さて、第一転生者はどんな人かな?
と、楽しみにしてたのに。
俺は転生者の運命を、その 過酷さを。
見誤っていたのかもしれない。