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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

現世と夢うつつ

作者: 小波

 

 



 こんばんは。ミステリーテラーの羽毛田です。

今夜は中秋の名月。みなさんは月を見上げておられますか。古来より月の光は人を狂わすなどと申します。特に丸い月夜は犯罪も増えるとか‥

今宵は月にまつわる不可思議なお話をお楽しみください。


 赤ん坊の産声


 産院


 初めての出産を終えたばかりの母親は涙を目に溜めている。するすると流れ落ちそれを見守る助産師達‥。では先生あとはお願い致します。先生も産み終えたばかりの母親の神々しい姿に目を奪われていたが赤ん坊の方を見ると安心して心は平常へ戻っていった。そして大事な仕事を終えた体を縫合し始めた。


 救急車が駆けつけるとアパートの扉は開け放たれていて野次馬の声がしていた。人をかき分け中へ入るとそこは血の海‥真っ暗な部屋には白い月明かりが入り込み血の海は夜の海、ぬめぬめと黒く暗く広がっていた。電気が通っていないと言う小さなアパートで背の低い老人がナイフと一緒に繋がったまま寝転がる。‥


 地球のあちこちでサイレンと産声が上がる。満月というのはそういうものだ、、ひとりで女を歩かせちゃならない。昔の人の言うことはたまには当たるだろう?



 水分が多いそれを満月は利用して人を操っては天から見下ろし笑っていた。何も手を加えなくても月が地球に近づくだけでこのような景色になってしまう。周期が来るのを月は楽しみにしていた。退屈なものにとって残酷なニュースは時として癒しになりえる。孤独な月は宇宙をぐるぐるまわるだけだから。地球という雑多なくせに美しく愚かで豊かで‥ショーを見ている気分だった。しかも近づけば近づくほどショーは激しくダイナミックに動いてくれる。


 そんな大きな丸い月を人間は見上げて美しいですねと微笑む。ましてやプロポーズにまで利用する。


 月の秘密はまだ解き明かされていません。人の子は星の子、星は月から生まれたのです。子である以上親の方が全てが見通せる。私たちはただ団子でも食って愛を分かち合っていればいいでしょうが、月の母さんは地球に引き寄せられて弾けそうに廻り続けている。


 近過ぎれば互いを狂わす、母と子であるという説をわたしは信じていたと思います。いいえ、月は今宵も私たちを優しく照らします。遠くから親のように。


 夜で暗いはずなのにやけに煌々と明るくて‥ただそれだけで体の血潮が蠢き出す。月も私たちを見下ろし見守り私たちも月に羨望を送りこの目に映る世界に世界の一部の自分に感傷的になる。


 私はある時から月をじっと見るのはやめました。ある時というのは出産でした。初めての子供を産んだ後タクシーの窓から子供を抱きしめて見上げた月はきっとスーパームーンと呼ばれる現象でした。それは大きくて大き過ぎて恐ろしく見えました。子供を奪い去られてしまう、そんな気持ちになりました。(それってかぐや姫ですけど)あの時は産後の不安な状態でそんな気持ちも引き起こされたのかも知れないです。何かを引っ張る力がある月。あれから夜にひとりで外で満月を見たいなどと思わなくなりました。出産という野生的な行動を経た私に月は新しい感情をもたらしました。



 今宵、台風が近づき雲が空を覆っています。月は見えません。

 宇宙ってどのくらいの広さなんだろう?あの時かぐや姫にはならなかった子供が言葉を操れるようになりそう言いました。それは、私たちの目から見える範囲でしか測れない。どれくらい広いのか光の誕生した光年で数字を出すしかない。


 人間に出来るのはその程度。数字に頼らざるを得ない感覚、感じようとするその想いだけでその闇と月は新たな物語を産むでしょう。


 人から人が出てくるそういう未知と自分が自分であることが頼りなげであること。


 わたしは今日も月と闇にその向こうを見ようと藻搔いたりして遊んでいるのだと思う。









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