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みえないもの

 最後さっぱり終わってますが、細かく書くと親族の方に悪いので自分の感想で締めくくりました。

 多分怖い話。


 私は幽霊をいたら面白いなぁとは思うけど、見えないし聞こえない。

 怖い話は読むけど、どれも空想の産物として考えているのでそんなに怖くは感じていない、そんな人間だ。


 とあるブラック企業で働いていた私は、心機一転、転職しましてデパートの接客業から家電の接客業に転職した。

 一人一人丁寧に時間をかけて接客する方法から、一人一人数をこなしていく接客なので同じ接客でも動き方が全然違うので初めてのやり方を頑張って覚え……という段階は置いといて、周りの人達へと挨拶周りをした時の事だ。


 売り場の方へ上司と共に挨拶周りをしていた時、1人の男性が私には白黒に見えた。

 色がない。

 店内は商品がよく見えるようにとても明るいし、店員は目立つようにジャケットまで着ている……というのに、何故か服も肌色も全て白黒。

 ビックリして3度見ぐらいして、あれ?と思って上司の顔を見て、何も動じてない姿にあれ?と困惑していたら、私がまだその時20歳ちょいすぎぐらいだったので「若いから緊張するよね」みたいな空気で微笑まれ、困惑しているうちに挨拶が終わった。


 数日は売り場のやり方を覚えるのに必死で、同じフロアとはいえ体育館以上に広いフロアだったので、売るものが違えばあまり関わりのないその白黒の男性の事はすっかり忘れていた。


 数日後、たまたまその日はお客さんも少なく、仕事も覚えてちょっと暇してた私は自分の持ち場とレジの間を行ったり来たり歩いていたら、白黒男性も同じ事をしていた。


 目が合う。


 私はじっと彼を見つめた。


 うーん、今日も白黒……。



「ん?どうしたの」



 面倒見が良いと評判の優しい男性は、私が戸惑いつつ彼を見ている事に気がついた。

 彼の名前はAさんとしよう。

 Aさんの白黒な顔色に私は眉を寄せてしまう。



「えっと……あの、顔色悪いですよ。病院行った方がいいんじゃないですか?」


「え……」



 私の言葉に、Aさんはめちゃくちゃ戸惑っていた。なんでそんな戸惑うのか。こんな分かりやすい顔色ねーだろ。お前、鏡見ろと私はちょっとイラッとした。短気なのでしょうがない。


 しかも、私は普段人の顔色に気が付かないタイプなのだ。女性は体調悪い人の顔色気づきやすいというけど、人生で1度も気づけた試しが無かった。大体私が「あれ?あの人体調悪そうじゃない?」と気づいて声掛ける頃には「皆に言われるんだよね。今日は帰ろうかな…」と体調不良が悪化しまくった後。

 そんな私が気づくぐらいなのだ。相当、この人体調悪い。


 私は心配しまくった。



「救助車呼びましょうか?1人で帰れますか?」


「いや帰……え?なんで?」


「顔色本当に悪いですよ、立つの辛いでしょう」


「いや、え?いや……ん?」



 Aさんと私はこの会話が挨拶を抜かせば、初めての会話。

 なんかお互いの言いたい事が伝わってない感がある事には薄ら気づいていた。でも待って、コイツこんな顔色で売り場に立ち続ける気か?私は別の意味で震えた。仕事大好きすぎだろ。

 今の職場は家電だけど、メーカーによってメーカーの方針があり、働き方が違う。私はとあるメーカーで、Aさんも同じメーカー。このメーカーは売り場で接客する私たちを大事にしてくれるホワイトで(家電販売員の中で)超有名だったので、皆も納得して返してくれるというのに何故帰らないのか。

 

 ちょっと押し強く言った方がいいのかな。

 私は顔色がとにかく悪い、早く帰った方がいいと何度も言った。

 Aさんは戸惑う一方。なんでだよ、帰れや。

 そんな2人の変な空気を察したBさんが間に入り私の意見を聞いたあと、Aさんと顔を見合わした。

 ほら、な?Aさん顔色悪いだろ。帰るように後押ししてくれ。

 私がBさんがAさんを納得させる為の言葉を待ってると、何故かBさんは私に苦笑を浮かべた。



「Aさんタバコ吸うからさ、顔色悪く見えるんだろ。お前も禁煙頑張れよ」


「そうかそうか、だからかぁ〜。いや本数は減らしてるんだけどさぁ」



 何故か、タバコのせいになっている。

 絶対これタバコ吸うだけの顔色の悪さではない。

 私はこの頑張って諭していた言葉を流されて、ムカついた。


 お前がその気なら、私は分かるまで言ってやるからな。


 闘志をメラメラと燃やして、その日から私はAさんを見かけるたびに顔色が悪い、早く病院に行ってと声を掛けまくった。




※※※※※※※




 毎月3、4回(つまりは週一)は私の所属しているメーカーの販売員たちで飲み会が開かれていた。

 これはコロナ前の話なので、飲み会は大人数でやるのが普通の時の頃だ。


 若い女性でしかもお酒も弱いというのに人と話すのが大好きなので、飲み会も大好きだった私は毎度出席して周りが「コンプラがあるから本当に無理して来なくていいんだよ、いや、来てくれるのはとても嬉しいんだけどね、大丈夫?」「え!?毎回来てたっけ!?皆勤賞じゃん!?!」と周りを困惑させていたのはまた別の話。


 そんな楽しい飲み会でおじさん達の会話をふんふん聞いていた時だ。

 Aさんもあんなに体調悪そうな顔色してる癖に出席していて、もうあの顔色があの人の基準値なのかなと納得しかけていた頃だった。

 私の真向かいにAさん。

 でも顔色見る度に心がざわめくというか、見ていて気持ち悪くなるぐらいの顔色の悪さ。やっぱりおかしいよ、あの顔色。なんで立てるねんと眉をひそめた時だった。



「……今日も俺、顔色悪い?」


「はい、とっても。せめてお酒やめた方がいいんじゃないですかね…」



 目が合ったAさんが声をかけてきたので頷く私。

 はあ、やれやれ、なんで鏡見ても気づかないんだろう。私もしかして人より顔色見分け着くようになったかな……いや、この間あまりの顔色の悪さに違う人が周りに心配されて体調不良で早退した事にいなくなってから気づいたからな。会話してたのに気づかなかったし。それはねーな。

 じゃあなんでこのAさんの顔色の悪さに皆気づかないんだろう。

 いやでもこの人めっちゃキチンと話すんだよな。フラフラ歩かないし。ただ顔色がすこぶる悪いだけで……


 ちょっと酔った頭でもんもんと考えていたら、Aさんの右隣に座ってたご年配の先輩が話に入ってきた。


「○ちゃん、Aの事死ぬ死ぬ言うけどね、俺の方が片足棺桶に突っ込んでるから。酒もタバコも辞めてないしね。この年齢だからもうすぐポックリよ」


 Aさんの左隣の先輩も会話に加わる。


「俺なんかヘビースモーカーだから、○ちゃんから見たらもっと顔色悪く見えるでしょ」


「そうそう、死ぬとしたら俺たち2人からだから。Aは30代だし、全然長生きするから、安心しな」


「うんうん……いや俺もまだ40代ですけどね!?」


「あははは」

 

 ケラケラと笑いながら、何故かAさんを慰めている2人。涙ぐむAさん。


 は?


 何故私がなんか悪役の立場、なんか悪口言ってる風になっているのか。

 瞬時に心が燃えたぎる私。

 そんな私の隣に座っていたBさんが「あのさ」と耳打ちしてきた。



「顔色悪いってそんな言うのやめてくれる?」



 振り返る。

 なんかBさんに蔑む瞳で見られていた。


 ああ?????


 私、この時社会人になって初めてブチ切れた。

 優しさで言っていたのに、なんでこんな風に言われなきゃいけないの?

 私がAさん虐めたみたいじゃん。

 この優しさが何故伝わらない。

 まるで周囲には、Aさんの顔色が悪く見えてないかのような……


 いや、待てよ?


 思い返してみる。

 私が顔色悪いですよと声をかけるたびに困惑していたAさんの表情を。あれは困惑ではなく、傷ついた表情だったのか?

 あ、だからなんか最近は避けられていたのか。


 私は色々と納得した。

 はぁ〜〜そうかそうか、お前ら私の優しさを悪と決めやがったか。


 じゃあ心配しねーよ、ばーーーか!!!!


 酒もタバコも全部やっちまえ!!!


 私はやる事やったからな、もういいや。踏ん切りついたわ。コイツもう死んでも悲しくねーわ。何より親族でもなんでもない、ただの他人だったしな。

 私はめちゃくちゃ極端な性格なので、なんかもうこの先輩の事をどうでもよくなった瞬間だった。


 もし仮に、この小説をこの先輩方が読んでしまったとしても、いいよ。私、この時言われたセリフ忘れねーからな。

 



 そうして、私はAさんに顔色悪いと伝えるのをやめた。

 そして、あんまり顔を見ないようにした。


 何故かめちゃくちゃ気持ち悪いのだ。いや顔の造形ではなく、雰囲気が。Aさんの顔を見る度に、なんというか……ポジティブな自分が鬱になりそうになるぐらい、暗い気分になる。何故か。よく分からなかったけど。


 そうして見ないようにしていたが、私が避けるようになってから、Aさんが私に話しかけてくるようになってきた。

 何故なのか。

 ちょっとそこら辺今もよく分からないけど、先輩は「あのさ、最近肩こり酷いんだよね」とか「良い夢みない」とかなんかどうでもいい事ばかり話してきたので、私もどうでもいい話ばかりするような、そんな関係になった。


 先輩は肩こりが本当に酷かったらしく、肩を解すネックレスみたいなやつや肩に貼って置くタイプの家電製品を着けていた。


 私は骨盤がちょっと歪んでいて肩こりしやすいタイプだったので、肩凝り解消結構いいのかなと、使用感を聞く関係になっていた。


 そんなたわいも無い話をしつつも顔を見ない私に、多分Aさんは気づいていた。



 ある日、ちょっと遠くから(暇だったので)何気なくAさんの後ろ姿を見ていた私は気がついた。

 

 今日も今日とても白黒……いや?


 色は、あったのだ。

 A先輩には色がうっすらあった。あるけど、このAさんだけまるでどんよりとした曇りの中で歩いているような『上に何か遮るモノがいるような』暗さだという事に。


 私はAさんの頭上を見上げた。

 何もない。

 そりゃそうだ、私は幽霊見えないし聞こえないのだから。

 近づいたら分かるかな、と歩きつつAさんの足元まで視線を落とした時に、目を見開いた。


 Aさんの足元に影がない。


 いや、あるっちゃある。

 でも普通蛍光灯の下に立てば人の影の大きさなんて小さいものだ。実際皆も見たら分かる。蛍光灯の真下に立ったらそんなない。

 でも、Aさんの足元には丸い影が半径4~50センチぐらいでできていた。Aさんの影は何かに遮られていた。室内で丸い影ってなに?まるで傘をさしているみたいだ。


 いや、なんで??????


 私は初めて見る現象に、困惑してもう一度Aさんの頭の上を凝視した。



「○ちゃん」



 近づいた気配に気づいたAさんが、なんか戸惑いの声で私に言葉をかけてきた。

 私がAさんの上をガン見してるのが怖かったみたいだ。



「…………なんか、見えるの?」


「いえ、何も……」



 そう、何も見えないから、私は戸惑った。

 Aさんの顔を見つめて、もう一度頭上を見上げる。やはり、蛍光灯の明かりが何かに遮られていた。

 何いるの、ココに。

 ちょっと怖くなった。そして次の瞬間、色々考えた。

 漫画の世界だけだと思っていたけど、Aさんもしかして人間じゃないのかな。バレたらヤバいのかな。人間じゃないんですか?って聞いてみたい。いや違かった場合、聞いたら痛いヤツになるかな。やめとくか。


 私は微笑んで誤魔化した。




※※※※※※




 Aさんが白黒に見えるのは、体調不良ではなく『上になんかいるから』という事が分かったので、私はAさんを全く心配しなくなった。

 体調不良じゃないなら、大丈夫だろ。という安易な考えである。


 化学の発展したこの世界で、体調不良じゃないなら、大丈夫という考えになるのはおかしい事ではないと思う。多分。



 ある日、飲み会でまたパクパク食べながら先輩たちの話を笑いながら聞いていたら、違うメーカーの先輩がA先輩にサプライズ〜!と何かプレゼントを渡した。

 どうやらAさんは誕生日だったらしい。

 わぁー!おめでとう〜!と手を叩いてはしゃぐ皆。私も拍手しながら、何プレゼントしたのかなぁと気になった事を覚えている。


 贈られたのは、2つの帽子。

 オシャレが好きだというAさんにその方は色々考えて贈ったみたいだった。でもその時季節は真冬で、帽子は夏から秋にかけて活躍しそうな素材だった。

 私はその帽子をAさんが嬉しそうにかぶっている姿を見て、思った。



『勿体ない』



 ご飯をパクパク食べながらニコニコ表情を浮かべつつ、私は心の中で思った。



『着ける機会なんてないのに。勿体ないなぁ』



 そうして、ふと気がつく。

 なんで帽子をかぶらないと決めつけてしまったんだろう。無意識とはいえ、失礼だったな。


 ちょっと反省した。




※※※※※※




 夏になった。

 A先輩たちはあの帽子を贈ってくれた方たちと五人ぐらいでキャンプに行くという。

 いいないいな〜!と話を聞いていた私を「○ちゃんも行く?」と聞いてくれたAさん。

 でも私はそのメンバーの中にBさんもいる事を知っている。


 許すまじ、B。


 私は断った。話だけ聞きたいとお願いした。

(余談だが、キャンプいいな、未だに行った事ない。リア友よ、キャンプ行きたい。届けこの思い)


 そして忙しく仕事をこなしている時に、Aさんがウキウキしていたので、なんか楽しそうですね。どうしたんですか?と声をかければ「来週キャンプなんだ」と嬉しそうにしていた。



 私はこの時の事を鮮明に覚えている。

 もう3、4年前の話だけど、この時のシーンはまだ、覚えてる。



「来週……あの、先輩」


「どうしたの?」


「うーん、えっと……なんかほら、最近川辺の事故多いじゃないですか。行かない方がいいと思いますよ。多分来年がいいかと…」


「はははー、えーなんで。行くよ行くよ!行くからね!?」



 私の言葉はギャグだと流された。

 胸騒ぎが凄い。Aさんが来週キャンプ行くと聞いて、酷い焦りを覚えた。


『ああ…駄目かも』


 何がどうして駄目なのか全く分からないけど、私は何かを諦めた。




 数日後、Aさんの姿を職場でまた見かけた。

 私は何故か無性に嬉しくなって「生きてる!!!」となんか謎にめちゃくちゃホッとして慌ててAさんに声をかけに行った。


「キャンプ、行かなかったんですか?」


 何故か『先輩がキャンプに行っていないから、ここに居られている』と思っていた。


「ん?ああ、そうなんだよ。よく気づいたね」


 そう言われて、気づいた。あれ、なんで気づいたんだろう。

 私はビックリしつつ、まあいいかと流した。


「あの、先輩。またキャンプ行く予定あるんですか?」


「先週は大雨で潰れちゃってさ。でも来週は晴れるから、行くよ。今度こそ〜」


 私は思った。

 この人、大雨のお陰で生き残ったんだなぁと。

 その時漸く、何か違和感に気がついたけど、ハッキリしない。

 考える前にお客さんに声をかけられて終わった。



 Aさんとは、これが最後の言葉だった。



 ニュースにもなったが、キャンプに行ったAさんは川に流されて……



 私は、彼が亡くなってから気がついた。

 あれは、あの顔色の悪さは、彼の病気とかそんなの関係ない。気づいていたじゃないか。Aさんの上に何かいるって。

 いるなら、祓いに行かせれば良かったんだ。

 何がとりついていたのか分からないけど、Aさんは死神か何かよくないものが取り憑いていたのだ。

 前兆もあった。

 大雨でキャンプに行けなかった時だって、Aさんの事をこれで最後かなぁとか生き残ったなとか思ったじゃん!なんであんな尋常ではない感想を当たり前みたいに流してしまったんだろう。



 私は、見えないものが、みえていたのに。



 


 





読み返したらAさん、A先輩、先輩と呼び名が安定してないけど、まあ自分が後から読んで「こんな事あったなぁ」と思い出す為の書き起こしなので無問題()

この件をキッカケに、私はある事を思い出す。

思い出した件書いてたら長くなったので、一旦ここで区切りました。

※※※※※※

ちなみになんですが、同じ現象起こった方っていらっしゃいますか?

私のこれ、なんなんですかね……

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