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"せいすい"って、なあに?  作者: 鯣 肴


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第3話 トモくん、せいすいって知ってる?

 時間は16時15分。夏だしなかなか暗くならないけど、お風呂とかあるしあんまり時間はなさそうだなあ。いけても一人か、二人ってところかな。急がないと! まずは、トモくんとこだな。アンケートだぁ! ついでに昨日のこと謝っとこっと。トモくんちは、僕の家から50m。だから、8秒で着くんだよ~。


 少年は八秒後、洋風の少し大きな家の前に立っていた。青い屋根に白い壁の大きな家。そこにあるインターフォンを少年は勢いよく押す。しばらくすると、トモくんのお母さんが出てきて少年を手招きした。

「チヒロくん、いらっしゃい。さっさ、入って!」

その手招きにほいほいと少年はついて行った。その家の二階の一室がトモくんの部屋である。トモくんの母親がその扉をノックして用件を言う。

「トモ~、チヒロくん来たわよ。」

部屋から物音がする。大急ぎで部屋を片付けている音である。トモくんの母親はその音を聞いて安心し、その顔色は先ほどの心配から安心へと変わっていた。

「トモねえ、昨日からずっと部屋に閉じこもっちゃってね、部屋から出てきてくれなかったのよ。理由聞いても話してくれないし。どうしようかなって思ってたらチヒロくんが来てくれたから助かったわ。」

トモくんの母親は知りはしないが、原因は他ならぬ少年にあるのだ。少年が約束をぶっちしてトモくんを神社に数時間放置したのだから。

 そんなことは知らないトモくんの母親は、お菓子と飲み物を用意しに下へと降りて行った。


「トモく~ん、入るよ!」

物音が止んだのを確認して少年はその部屋の扉を開いた。トモくんは部屋の中央のテーブルに座っていた。少し泣きべそをかいて。

「チヒロくん、なんで、なんで、昨日来なかったの……。怖かったんだよ、夜の神社って怖いんだよ……。」

しくしく泣き始めたトモくん。

「ごめん、ごめんって。ちょっと自由研究まだ終わらせてなかったの気づいてやってたんだ。それで夢中になっちゃってトモくんのこと忘れてたんだ。」

ちゃかしながら少年はトモくんを宥める。それを聞いて泣き止んだトモくん。突然目を輝かせて少年に尋ねる。

「チヒロくん、どんなおもしろそうなこと今年はやるの?」

もうトモくんはすっかり泣き止んでいた。


 よし、トモくんは泣き止んだな。トモくんって、なんかちょっと話したらすぐ泣き止むし、ほんとへんなやつだよな。それに、神社で夜なるまで待ってたって……。暗くなる前に帰ればよかったのに。うん、まあいっか。とりあえず今はトモくんにインタビューだ。


 少年はトモくんに今やっていることを話した。色んな人にインタビューしていること。ある一つの質問をいろんな人に聞く。そして、その答えをメモする。そして、それがホントかウソか判定する。質問の真の答えを知るためにそうしているということも伝えた。そして、いよいよ例の質問をトモくんに投げかける。

「トモくん、せいすいってなにか分かる?」

「え、せいすい? なになに? 分からないよ、教えてよ?」

逆に質問で返された。


 うわあ、どうしよう。トモくん、せいすい、って言葉自体知らないくさい。でもって、なぜか聞いてる僕に聞き返してきてるし。うーん、どうしよっかなあ? ただ知らないって言うのもなんだしなあ……。あ、そうだ、お兄ちゃんの答えぱくろっと。


「それはね、聖なる水って書いて、聖水。なんかすんごい水なんだって。」

紙に兄に教えてもらった漢字を書き、読み仮名を打った。

「ふ~ん。わかった。でもそれってどんなのなの?」

予想外のきりかえしが少年を襲う。


 え、どんなのって? 僕が知りたいよ、そんなの。う~ん、どんなのなのかなあ? お兄ちゃんも言葉と漢字だけで実物見せてくれなかったしなあ。……あれ? 実物? そういえば、お兄ちゃんの部屋で見たアレ、色がついてたよなあ。あ、そうだ、絵にすればいいんだ~!!!


「トモくん、紙と36色色鉛筆貸して~、今から描くからね!」

少年はその紙の表と裏にそれぞれ一つずつ絵を描いた。割かし絵が巧い少年は昨日の兄の姿と奇妙な缶の姿をある程度忠実に再現してみせたのだ。


 表面に書かれたのは、一本の缶ジュース。パッケージにはお嬢様の絵が描かれていた。そしてその上に平仮名で"お○○○さませいすい"と描いてあった。

 裏面に書かれたのは、少年の兄とその缶ジュース。底に空けた穴から必死にその中身を悲壮な顔をしながら飲み干す少年の兄の絵が描かれていた。


 時間は17時間45分。トモくんはその絵を見て、首を傾げる。

「え、なにこれ? なんなの?」

困惑が止まらないトモくん。それから数十分絵を見ては首を傾げ続けていた。少年に尋ねても答えは返ってこなかったから。そして、何かに納得したように首を縦に振り出す。

「え、どうしたの。トモくん。」

「へっへ! チヒロくん、この絵もらっていい? 僕の自由研究これにするよ。」

「う、うん、いいよ、あげるよ。」

ちょっと戸惑う少年。そこに書かれてあるのが自身が実際に見た光景だとはとても言えなかった。

「じゃあ、またねっ!」

さっと駆け出してチヒロくんの家から脱出した少年であった。


「あ、絵にタイトルつけてないよ。どうしよっかなあ。あ、そうだ。これでいいや!」

トモくんはその絵の下に紙を貼り付け、タイトルをつけた。表面の絵には、"おじょうさま"、裏面の絵には"せいすい"と、貼り付けた紙に書き込むのだった。そうして後日学校の職員たちの間で大きな話題となったうちの二つの自由研究のうちの一つはここに形となったのだった。

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