34 エド王子とヒナタと私(キャロル視点)
私はヒナタに協力する前は、エド王子に協力していた。
実は、エド王子には前から憧れていたんだ。
でも、公爵令嬢のイザベラ様という婚約者がいたことで、
遠くから見るだけの存在だった。
でもある日突然、あちらから話しかけてきた。
エド王子とお近づきになれると思うと嬉しくてしょうがなかった。
時々話をするようになり、会えばいつもニコニコと話を聞いてくれた。
婚約者がいるということで、
あまり多くは期待していなかったけれど。
ある時、頼みごとをされた。
隣のクラスの時間割を教えて欲しいんだって。
隣のクラスにも友人がいるので、聞いてきて教えた。
授業が変更になったりだとか、そういうのも教えた。
めちゃくちゃ感謝されたけど。
私は気づいた。
これって、レベッカの事を探ってるのじゃないかしら?って。
たまにあったのよね。
エド王子がレベッカの事を追いかけ回している時が。
あれは目立っていたから。
婚約者以外を追いかけるなんて、ちょっとどうなのかしらと思ったけれど。
それが馴染んでしまうキャラクターなのよね。
今はそこまであからさまに追いかけたりはしていないみたい。
節度を持ってやってるようね。
それから1ヶ月ぐらい、エド王子が学園に現れない時があって。
戻ってきてからまた、頼みごとをされた。
「女子寮に引きこもってるレベッカを外に誘い出して欲しい」
レベッカとはそれまで喋ったことがなかったのよね。
あまり人と関わらず地味な子だけど、黒い瞳でなんとなく怖くて。
最近の雰囲気をよく見てると、そう怖い人でもないのかしら…とも思えるんだけど。
メガネをかけるようになった頃から雰囲気が違ってる気がしてた。
思い切って声をかける。
ちょうどイケメン剣士様がいるから、それをきっかけにしちゃいましょう!
って思って、勢いで声をかけた。
意外にもあっさり付いてきたのにはびっくりだったわ。
もっと近づいて、エド王子に情報提供しようと思って。
一緒に料理をするようにもなった。
話してみれば、本当に普通の子だってことがわかった。
黒い瞳だとかいうのも、偏見だったと思った。
彼女といると、時々懐かしい感じがする。
そんな時、エド王子から、材料をたくさん差し入れてもらって
レベッカと一緒にお菓子を作ることになった。
できたものはレベッカに持ち帰らせるようにと言われた。
エド様、案外、手作りの品が好きなのかしら?
意外な一面を知ったわ。
クッキーとマフィンだって、自分も一緒に作った物を食べて貰えると思えば嬉しかった。
そういえば、エド王子は最近婚約を正式に解消してしまったらしい。
イザベラ様とはお似合いだと思っていたのに。
レベッカを追いかけていたからなのかしら?
「なんで婚約解消なさったんですか?」
「ああ、お互い別の想い人が見つかったから」
私は失恋した。
聞かなくてもわかる。
エド王子はレベッカしか見ていない。
私の想いに気づくこともない。
今までのように、婚約者がいるのなら
憧れを持ちつつ平穏に過ごしていただろう。
でも、それを解消してまでの強い気持ちを持つ相手がいる。
そう思われる相手…レベッカが羨ましいと思った。
そして、お菓子を配った一件で何かあったようで、
レベッカの婚約者のコリン様が私に近づいてきた。
あまり余計なことをしないようにと警告されたのと同時に、
彼女と仲良くしてあげて、と言われた。
そうよね。
エド王子に協力するという事は、レベッカにとって良くないことよね。
婚約者はコリン様なんだもの。
私はこの頃になると、前世の風子を思い出していた。
前世の友人、風子。
彼女は一途な想いを持った子だったはず。
二股とか、浮気とか、とんでもない。
風子が心配になった。
エド王子と風子をくっつけたくないと思うようになった。
エド王子に協力するっていうのは、逆だった。
そして、エド王子に対しての恋心もだんだんと冷めていった。
冷静になって考えると、
婚約者がいる人にアプローチするのってどうなのかしら?って思ったのよね。
相手を困らせるだけじゃないの。
夏期休暇を過ぎ、10月が過ぎる頃まで、
エド王子もコリン様も見かけなかった。
学園に戻ってきたコリン様から、頼みごとをされた。
企みというか。
一時的にダンスパーティーのパートナーになって、
風子を遠ざけたいと。
もちろん断ったんだけど、詳細を聞かされた。
エド王子とイケメン剣士様と一緒にレベルを上げていることや、
それで学園を留守にしてて留年してしまったこと。
風子に気があるエド王子だけが、風子と同じ学年になってしまって、
気が気ではないこと。
コリン様…ヒナタが実はもともとレベッカで、
風子がコリン様だったと聞いた時には驚いたわ。
前世で夫婦だったとか。
これって運命なんじゃないかしらと、そう思ったのよ。
それで、ヒナタの案に乗ろうと思ったのよね。
ダンスパーティーのパートナー、ヒナタの誘いを受けたことに見せかける。
もちろん私はヒナタに対しては気持ちはない。
風子をエド王子と近づける。
当日になって風子とヒナタが入れ替わり、エド王子をがっかりさせる。
最初はヒナタの思った通りに事が進んでいるように見えた。
でも、見ているうちに不安になってきた。
風子がエド王子にドレスを贈られたのを知って、
私は良かれと思ってエド王子には気をつけるように言いに行った。
でもあの子は、ヒナタと私の関係に怒っているようで、
あまり話を聞いてもらえなかった。
その後風子の後をつけたら、エド王子に何かを渡してるのを見てしまった。
手を握って話をしていて、親密そうだった。
とてもヒナタに報告はできなかった。
風子って案外行動力あるのよね。
私もヒナタも、ちょっと甘かった。
ダンスパーティー当日、意外なことが起きてしまった。
風子は、ヒナタにレベッカの身体を取られたのにも関わらず、
風子としてエド王子の前に現れるんだもの。
あれは、ヒナタに対して相当怒ってたんじゃないかしら。
怒りのパワーであそこまでやっちゃったのね、きっと。
でも、先のことを深く考えていないところもあるのよね。
エド王子から逃げる事まではうまくいかなかった様子。
そこを見つけて、
ヒナタが用意していた控え室に連れていこうと思ったんだけど。
あと少しのところで、結局エド王子に追いつかれてしまった。
助けたかったんだけどな。
風子は途中で、
エド王子とレベッカを踊らせたくないから変身したと言っていた。
ダンスパーティーで、コリンが私と踊って、
レベッカまでエド王子と踊るという事態を避けたかったみたい。
そうさせないように、元々変身する用意があったのね。
婚約者としていろいろ考えていたんだろうな。
それを思うと、私達のやったことって酷いわよね。
結局は、がっかりしたエド王子の前に風子は前世の姿で現れて、
エド王子と引き離すどころか逆効果になった。
彼の気持ちを盛り上げてしまう結果となった。
風子はエド王子に捕まった後はどうなってしまったのかしら。
何もされていなければいいけど…心配だわ。
私は眠らされて、後で控え室で目が覚めた。
パーティーの次の日からはヒナタに会っていない。
使用人を通して探りを入れてみたんだけど、
人に会える状態じゃないと聞いた。
風子はレベッカとして戻ってきている。
あまり外出はしていないみたい。
私に何かできることがあればいいのだけれど。
落ち着いたら前世からの友人として仲良くしたい。
これからは、エド王子の魔の手から助けなければと、強く誓った。




