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伯爵令息転生女子  作者: くるみ
第2章
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31 元彼

私は、男子寮の自室で目覚めた。

うーん、気持ちがいい朝…だと思った。

ちょっと薄暗いので早朝かな?


目覚めは気持ちが良かった。

でも、昨夜のことを思い出した。


「嘘、記憶…消えてない…」


私は青ざめた。

目覚めは良かったけど、気分は最悪だ。


あれ?…最悪…なのかな。

エド王子とのキスの記憶はそのままだった。

思い出していると、顔が熱くなった。


それに加えて…


(たか)くん…」


思い出した。

私の『元彼』のことを。




その時、部屋の中で人の気配がした。


「風子、おはよう」


レベッカの格好をしたヒナタだった。

セーターにキュロットという、普段着のスタイルだった。

そっか、一晩経っているもんね。


…あれ、ここ男子寮…。

忍び込んだのかな?


いろんな事が気になる。



「寝室は使っていないみたいだね?」

ヒナタが怒った雰囲気で言う。

嫌味っぽいというか。


「………」


んん?

エド王子との事を言っているのかな?

うわっ、そういう意味で?…

えーっ……



思わず自分の服装を確認する。

昨日の服のままだ。

変化(へんげ)の指輪もそのまま指にはまっている。


変化したまま、女子の服装で、ソファで眠っていたらしい。

目覚めスッキリってことは眠らされたんだろうな。

…記憶も消して欲しかったな。



「着替えてくる」


私は寝室に行き、コリンの服に着替えた。

キスの記憶しかなく、身体に違和感もない。

ヒナタの心配するようなことはなかったと思う。


青い石の変化の指輪を外した。


《ポンっ》


コリンに戻った。

力が漲ってくる感じ。

ああ、とんでもない目に遭ってしまった。


…でも昨日の出来事は…。

嫌じゃなかった。はぁ。



何で記憶を消してくれなかったんだろう?


逆に、記憶を消されていたとしたら、

その間何をされていたのか気になるかもしれない。

疑ったり、疑われたり。

お互いに嫌だよね。

ってことは、かえって良かったとも考えられる。

彼がそこまで考えていたのかは不明だけど。

良い方に解釈しておこう。




脱いだ服と変化の指輪は自分のカバンに入れた。

指輪をここに置いておいたらヒナタに悪用されるかもしれない。

そんなことを思ってしまった。

それもまた悲しい。


でも、変化魔法の先生には、

小物の扱いには気をつけるよう、何回も何回も言われている。

慎重すぎて悪いことなどない。



私は寝室から出た。

ヒナタはソファに座ってる。

気まずい。

どうしよう。



「風子、こっちに来て」


私は促されるまま、ヒナタの横に座る。


ヒナタはキスしようとしてきた。

私はそれを咄嗟に避けてしまった。


「……」

「……」


「…風子、入れ替わるよ」


私は仕方なく受け入れた。



《ボンッ》


いつもみたいに入れ替わる。


ヒナタはその後、キスしてきた。

私は抵抗する。


その様子を見たヒナタは、

「…風子、昨日はエド王子と何があったの?」

と、聞いてきた。


言えるわけない。


「何も……ないよ」

「何もないって感じじゃないよね?

何もなかったら、何で俺のこと嫌がるの?」



「……ヒナタは勝手だよね。

だったら何でダンスのパートナーに誘ってくれなかったの?」


「…それは…」


「言えないの?

私は、ヒナタが私の事をもう好きじゃないから誘ってくれないんだと解釈したんだけど?」


「それは違うよ」


「じゃあ何で?」


「逆だよ。

好きだから、我慢できなくなってしまうから」


ヒナタは私を抱きしめてきた。


「風子がほしくてたまらなくなる」


私は赤くなってしまった。

そういう考えであんなことを…?



「昨日の風子はレベッカじゃなかったのにエド王子に連れて行かれるし。

昨日の風子を見て、俺も男だったらなって思った。

取られて悔しかった」


ヒナタは、私をソファに押し倒して首筋に唇を這わせてきた。

私は必死で身を捩った。


「風子…」

「嫌っ……ごめん、まだ無理っ…」


前までは何ともなかったのに。

むしろこうなりたいと思ってしまっていたかもしれない。

でも、今はそういう気持ちが起こらない。

気持ちが通じ合っていない。

今流されちゃいけない気がする。


私は縋り付いてくるヒナタを全力で自分から引き剥がした。


「時間をください」


そう言うと、傷ついた顔をされた。


「ごめん、私も今いろいろ混乱してて。

ごめんなさい」


やっとのことでそれだけ言うと、

私は自分の持ってきたカバンを持って逃げるように部屋を出た。

ヒナタは何か言いたそうにしてたけど。

知らない。

余裕がない。



以前初めて入れ替わった時のように、廊下の、二階の窓から飛び降りた。

そして女子寮に戻っていった。



ーーーーーーーーーーーーー



女子寮に戻る途中、いろいろ考えた。

本当は、ヒナタが来なかったらもうちょっと考えたかったんだ。

エド王子…元彼のことを。



私は元彼がすごく好きだった。

鈴木 貴博。それが彼の名前。

でも、前世の私たちは上手くいかなかった。


好きなだけでは上手くいかないこともある。


どれだけ泣いたかわからない。前世のあの頃。

苦しくて、辛くて。

でも好きで。

でも辛くて。

抜け出すのに時間がかかってしまった。


この世界で出会った貴くんは、前世の貴くんとは違う。

王子で育ちも良い。

超イケメンだし、一緒にいてただただ楽しい。

女子になってからは追いかけられちゃったけど。


昨日は良かった。

今思えば、楽しい一日だったんじゃない?

ダンスをしたり、エスコートされたり。

それから……


「ーーーっ!」


涙がぼろぼろ溢れて止まらなくなってしまった。

どうしよう。私、エド王子が好きだ。


でも、この気持ちは持っていてはいけないものだ。

そんな気がする。


私にはヒナタがいる。

婚約は簡単に取り消せないだろう。

私の気持ちは浮気ということになってしまうわけで…。

抑えないといけない。


ただ、苦しくてしょうがなかった。

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