24 ヒナタ
ダンスパーティーの当日になった。
夕方から始まるので、少し遅めに起きた。
去年は男だったから、用意といってもそんなに手間がかからなかったけど。
今年はそうも言っていられない。
ドレスを着つけてもらって、化粧と髪の毛のセットと。
そういう準備の時間が必要だ。
エヴァンス家の方で、手伝ってくれる侍女を呼んでくれることになっている。
エド王子と一緒か。
目立つだろうな。それも気が重い。
朝食も兼ねて、食堂でお昼ごはんを食べる。
緊張してきた。
視線を感じて見ると、キャロルさんが遠くにいた。
やっぱり、あちらもまだ用意には取りかかっていない時間なのねと思った。
何となく、見張られているようにも思い、そそくさと部屋に戻る。
念話装置が鳴った。
ヒナタだった。嫌な予感がする。
出ずにいようと思ったけれど、やっぱり気になって出てしまった。
「風子、今から出てこられる?」
「無理だよ。忙しいから」
一旦断ることにする。
「すぐ済むから」
「どういう用事なの?」
「来ればわかるから」
なんだか怪しいなと思った。
一応、待ち合わせの約束をして念話を終わらせる。
今まで何もなかったのに、パーティー直前に接触してくる。
想定される事態は何だろう?
何か対抗するために準備をするべきかもしれない。
キャロルさんの言葉が浮かんでくる。
「いざという時にはヒナタを信じてあげて」
と、言っていたよね。
それは本当に私のためになることなのか。
それとも、ヒナタのためなのか。
…やめよう。
少なくとも、私はヒナタに誘ってもらえなくて傷ついたのだ。
土壇場で何か言われて、はいそうですかと言えるほどお人好しじゃない。
今日はダンスパーティーで、女子は準備で忙しいだろう。
誰かに協力を頼みたいところだ。
「よし、決めた」
私は行動を開始した。
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それから、待ち合わせ場所に行ってみた。
すでにヒナタは待っていた。
空いている教室だ。
「久しぶり」
ヒナタが言う。
「どういう用事なの?」
聞いてみた。
ヒナタが近づいてくる。
メガネを外された。
「入れ替わろう?」
そう言うと、いきなり口づけられた。
私は抵抗した。
でも、完全には抵抗できない。
あ、中指の指輪のせい?
ヒナタのコリンのレベルが上がった分と、
男女差もあるかもしれない。
指輪を外せばいいんだ。
そうすれば全力を出せる。
…と思ったけど、考えが読まれていて阻止されている。
「入れ替わってどうするの?」
「俺が代わりにダンスパーティーに出る。風子は出させない」
「何それ。だったら何で私を誘ってくれなかったの?」
「それは、確実にエド王子と引き離したいから…
あと、俺が風子と一緒にいると…」
ヒナタは言いにくそうにしている。
「…一緒にいると?」
「ああもうっ!」
そこからキスされて何も喋れなかった。
入れ替わらないぞって思って、しばらく頑張ったんだけど。
ヒナタの様子がおかしい。
身体を触られた。
「やだ、やめて…」
「だったら、入れ替わって」
怖いと思った。
こんなことになるなんて。
ヒナタを信じる?
無理だと思った。
私は諦めて入れ替わることにした。
でもヒナタの思い通りになんて絶対させないと思った。




