10 ダンジョン3
ラスボス。
それはゲーム内の最後に出てくるボスだ。
まさか、自分がそれと戦うことになろうとは。
これは現実なのだろうか?
ヒュドラ。
9本の首を持つと言われている、怪物の中の怪物。
ドラゴンの一種とも言えるのか。
首の部分は蛇のようでもある。
レベッカが、呪文を唱え、
黒い球体を作り出した。
敵の頭上でそれは膨張し始め、空間を削り取った後消滅した。
エド王子とルークさんが火魔法で攻撃。
私も遅ればせながら火の魔法の強力なものをイメージして繰り出す。
全体が火で覆われた後、首が4〜5本ほど残る。
幸い新しい首が生えてくる気配はなかった。
そして、それぞれ近いところの残った首を攻撃した。
奥の方に残っていた首も、回り込んでいたレベッカが切り離していた。
みんな素早い。
私も攻撃しなければと思いつつ、
レベルがあっても、経験の差は埋められないようで。
完全に出遅れた。
もう一度、火魔法を繰り出して、新たな断面を焼く。
そして、ここからどう変化するのだろうか。
魔物は胴体と足の部分を残した状態だったのだが。
この形状、向こう側には尻尾があるのだろうか。
《グンッ》
胴体の中央から、太い首が一本出現した。
まるで、一体のドラゴンに変身したようだった。
それが完全にこちらを向いていた。
正直、今までは首が複数あったためか、
攻撃する対象が定まっていなかった。
動きがそこまで機敏ではなかったように思う。
でも、首が一本となり、それはとてつもなく太く、
頭も大きく変化した。
攻撃対象は明らかに定まっている。
私だ。
急な出来事で、足がすくんで動かない。
それは近くにいたクロウもエド王子も似たようなものだった。
ルークさんが少し離れたところから駆け寄ってくるのが見えた。
『これは死ぬ』
そう思った。
走馬灯のように、今までの出来事が思い出される感覚。
太い首がこちらに振り下ろされてくる。
その先には怪物の頭。
口が大きく開いている。
口の中には鋭い牙がたくさん生えている。
逃げないといけないとわかっているのに恐ろしさで身動きができなかった。
《ザシュッ》
聞いた事がない音がした。
黒い人影が見え、
目の前で太い長い首はうねった。
私の横に、その切り落とされた首がゆっくりと倒れてくる。
スローモーションのようだった。
この怪物の血飛沫が飛んでいるのも見た。
気がつくと、目の前に大剣を持ったレベッカが立っていた。
ヒナタだった。
ああ、彼が倒したんだと思った。
こんな時に不謹慎だけれど、カッコいいと思った。
彼は慎重に周囲を見回した。
首を切り落としてもすぐ再生するぐらいなのだ。
再生する可能性がないとも限らない。
私を、切り離した首から遠ざけながら、
本体の切り落とした部分の断面も火の魔法で焼き尽くしていた。
エド王子も、切り落とされた首の断面を火魔法で焼いていた。
幸い、そこまでで魔物は倒せたようだった。
閉鎖された空間での火魔法、魔物を燃やす臭い。
気分が悪くなったが、何の役にも立てなかった自分には何も言えなかった。
魔物から魔石を取り出したり、
毒がないか鑑定で確認しつつ、取れる素材は取った。
いらない部分はレベッカとルークさんが闇の魔法で消去させていった。
魔物がいた奥の方に魔法陣があり、
それに乗ると外にワープできた。
RPGだなとぼんやり思ったが、
精神的に疲れてあまりそれ以上のことは考えられなかった。
ーーーーーーーー
ダンジョンから外に出ると、レベッカが疲れた様子で立ち尽くしていた。
クロウとルークさんが近づいていって、何か話している。
その後、エド王子もクロウに近づいて言って、一言二言話していた。
エド王子が戻ってきて言った。
「レベルが450超えたらしい」
エド王子も青ざめているように見えた。
何?そんなに大変なことなの?
私を助けてくれたことにより、レベッカがヒュドラを倒してしまった。
恐らく、得られた経験値がべらぼうに高かった。
結果的にレベッカを強化してしまった…ということなのだろう。
責任を感じる。
でも、どう声をかけていいかわからない。
すると、クロウがレベッカの肩を抱いて歩き出した。
んん?
こんな時とはいえ、あれは見逃せない。
レベッカに片思いしていたクロウ。
気持ちは知ってる。
でも、レベッカは私の物なんじゃないの?
そりゃあ、たまにギクシャクしてたのは認める。
(でもあれはクロウが関わっていたよね…)
何でヒナタも素直に従ってるの?
これは…何とかしなければ。
私は焦りを感じたのだった。




