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伯爵令息転生女子  作者: くるみ
第1章
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6 現実逃避

あれから数日後、王都から伯爵領に帰ってきた。

森で魔王のような少女を見かけた次の日には王都を出た。

もうそろそろ帰る時期だったから。


屋敷に帰ってから、兄様に相談を持ちかけた。

父様に言うべきだろうけど、父様は基本的に忙しい。

この数年、相談事は、うちではまず兄様にすることが自然となっていた。


その内容とは、

『自分の専属の使用人を、男性であるクロウから女性に替えてほしい』


そんな事を言ったら反対されるかと思ったけど、大丈夫のようだった。

クロウが何かやらかしたわけではなく、自分のせいだと強調しておいた。

何故かニヤニヤされたけど。

どういうことだろう?


次の日から、デイジーという、金髪で青い瞳の、可愛らしい女子が

専属の侍女としてついてくれることとなった。

私より2つか3つぐらい年上らしい。

前世の記憶を思い出して心が女になってから、初めて平穏な日々が訪れたのだ。


クロウがイケメンすぎるからいけないんだ。

だから意識しちゃってたんだ。

心の中で必死に言い訳をする。


だけど、剣の稽古では顔を合わせるんだ。

そこはもう、剣に集中することにした。

将来騎士団に入るためだ、そうだそうだ。

異性にうつつを抜かしてる場合ではない。

って、身体は同性なんだよな。

悲しいな、好きな相手(?)は男性。自分も男性。

まぁ、前世の自分はいつも片思いしてた気がするから、

恋愛に発展せずとも全然大丈夫な気がする。



それにしてもクロウは強い。

全然勝てない。

小さい時から稽古をつけてもらってても、勝てない。

成長して体格差がなくなってからも敵わない。

どうやったらあんな強くなれるんだろう。

聞いてみても

「秘密です」と、笑顔で返されるのが常だ。



そして、新しい侍女のデイジーちゃんはかわいい。

喋りやすい。

いつも話題を振ってくれる。とても良い子だ。

特別美人ではないんだけど、笑顔がかわいい。


前世の自分と比べてしまう。

私は大人しくしている暗い女子。

話そうにも話題がポンポン出てこなかったから。


話しやすい子と一対一でお話をするのは楽しいな。

食べ物の話だったり、ファッションや流行の話だったり。

聞いてるだけで楽しい。

お茶の時間はいつも付き合って貰ってる。


一応それでも、男女ってことで、いつでも2人きりというわけではない。

時々クロウやほかのメイド達も入れ替わり立ち代わり姿を見かける。

たぶん、若い男女が何かあってはいけないからという配慮なのだろう。

でもいいよ。クロウと2人より気楽だよ。



魔法もいろいろ試してみてる。

王都の屋敷より広いからいろいろできる。

クロウは魔法が使えないため習えなかったけど、

デイジーは光属性の治癒魔法が使えるので、習っている。

教え方もとっても丁寧で優しいんだ。

簡単な傷なら治せるようになった。

よし、これからは治癒魔法だな。

この前頭を怪我したみたいな時にもすぐ治せると便利だよね。


あの時も、魔法による治療はしてくれたようだけど、

目を覚ますまでに時間がかかったみたいだ。

記憶が戻ったことと関連してるのかな。



あとは、防音だったり、攻撃から身を守る結界魔法を独学で試したりしてる。

こちらも面白い。

さすが王都で買ってきた魔法書はすごい。


いろいろ本を読み漁っていたら、部屋が散らかってしまった。

デイジーちゃんがテキパキと片付けてくれる。

素敵。

こんな子がお嫁に来てくれたら、男としては幸せなんじゃないかなと思ってしまう。

女の子の鏡だわー。

笑顔もかわいい。気が効く。話し上手。

めちゃくちゃ羨ましい。


姉とは違うタイプだけど、

やっぱ前世の自分とは真逆だと感じてしまうな。


はぁ…女子として女子らしい、笑顔が素敵で話し上手な女の子に生まれてたら、

どんな人生だったんだろう。

そんな風に生まれてたら幸せだったろうな。

恋愛も不自由しなくて、モテてたんじゃないかな。


私、無口で面白みのない女だったもんね。

卑屈になるわー。

無口な自分が、仮にでもああいう人になるためには相当努力しないと無理だと思うんだよね。

持って生まれたものが人より劣ってる。

それをどうしても感じてしまうことが多かった。

そういう記憶を今世また思い出して苦しんで。

これって何の意味があるのかな。


婚活に燃えようとしていた前世の自分、あれからどうしたんだろう。

挫折したりしたのだろうか。


いかん、暗い事ばっかり考えるのは良くない!

暗い人間が暗く生きなきゃいけないわけないじゃん。

別にさ、地味でおとなしげで無口なやつが、

じつは楽しく生きてたっていいじゃん?


ん?

あれ、これって前も考えたことがある気がする。

これも前世の記憶の一部なのかな。

今思いついたのかな。

自分がよくわからなくなってきてしまった。

疲れたのかもしれない。もう寝るとしよう。


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