クロウの憂鬱3
この国の第2王子のエドモント殿下がレベッカと婚約すると騒いでいるらしい。
学友だということはヒナタから聞いていた。
坊ちゃんとは男性同士ではあるが、前から仲が良かったそうだ。
ステータスに日本人の名前があり、転生者だとも言っていた。
坊ちゃんがレベッカになったから急接近したのか。
エド王子を誑かした風子。
話をややこしくしてくれるものだ。
今更焦っても遅い。
私の前では隙のないヒナタが風子の前では隙だらけだというのも面白くない。
こんなポンコツ娘のくせに、ヒナタに続いて王子まで誑かしたのか。
私の手のひらの上で転がっていればいいものを。
ヒナタもイライラしている。
身体を入れ替えると言い出した。
私の前で…まぁいいだろう。
いない所でおかしな展開になるよりは。
でも結局見せつけられてしまった。
長いキスをした上に入れ替わらなかったのだ。
おちょくってくれる。
昨日は私が彼女と…
あとちょっとだったと思えば、余計に悔しく感じ、嫉妬してしまう。
いつか絶対レベッカを私のものにしてみせる。
そう決意した。
2人が学園に戻ってから、次の週末。
一度だけ、風子がコリン様となって戻ってきた。
女性になった時や、以前男性だった時よりも、何故か生き生きとしていた。
私の気持ちも知らないで、呑気だなと思った。
彼女を見ていたら、いっそ男のままでもいいから迫ってやろうかなと思えるぐらいだ。
身体はレベッカではないのに。
迫って困らせてやりたい。
あの夜みたいに…。
まぁ、当然思い留まったのだが。
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風子が学園に戻ると、
また、次の週から帰ってこなくなってしまった。
コリン様とレベッカの婚約が正式に決まったと聞いた。
…どんどん手を出せないところに行ってしまう。
私のレベッカが。
私は週末屋敷にいる間だけ、アラン様との剣の稽古や雑事をこなし、
平日には修行に出ることにした。
魔物が出やすいポイントは、レベッカとの交流から、いくつも把握している。
コンパクトだが大容量の荷物が入るカバンに、
HP回復のポーションや毒消しなど、アイテムをたくさん詰めて出かけるのだが、
それでも危険はいつでもあるものだ。
私は瀕死状態で魔物に囲まれてしまったことがあった。
流石にヤバいなと思ったが、
通りすがりの若い男性が一緒に戦ってくれて、事なきを得た。
オリバーと名乗った彼は、私に治癒魔法をかけてくれ、
安全な所まで送ってくれた。
私の命の恩人だ。
道すがら話を聞いていると、
彼は現在150ほどあるレベルを倍以上に上げたいのだという。
私も同じだ。
最低限、倍ぐらいのレベルは必要になるだろう。
意気投合した私たちは、一緒に行動を共にすることになった。
私は魔法が使えない。
生まれつき、魔力が全くない。
坊ちゃんが持っているという念話装置なども使えない。
あれは魔力が必要なのだ。
魔力さえあれば。
地位さえあれば。
どれだけ思ったことだろう。
そうすればレベッカの隣に立てたのだろうか。
いや、レベッカの心は男性だったのだ。
どのみち難しかったのだろう。
そう思うよりなかった。
風子をなんとかすればまだ可能性はあるだろう。
だが、女性の姿では伯爵邸には戻ってこられない。
戻ってくるとすれば男性の姿だ。
それすら最近ではなくなってしまった。
寂しさを感じていた。
オリバーは、快活な若者だった。
一言で言えば、とてもいい奴だ。
私のような捻くれたところもなく、
コンプレックスを持つこともなく育ったんだろう。
私はある日、伯爵邸別邸に彼を招いた。
他人と交流することは少ない私だが、彼には興味が湧いたのだ。
伯爵邸に居合わせたヒナタは
「エド王子、ここで何をされているんですか?」
という言葉を投げかけてきた。
エド王子?
この若者が?
風子が誑かしたあの王子なのか…?
私は呆然とした。
ああ、でもわかる気がした。
この王子の隣は居心地がいいのだろう。
その後、ヒナタが提案してきたレベル上げのプランに乗ることにした。
レベッカの時のようにレベル上げの効率も良いだろうし、
エド王子にも人として興味が湧いた。
別邸にいてもレベッカに会えるわけではない。
むしろ、彼らと一緒の方がレベッカに関われるのではないだろうか。
そうして、チャンスはやってきたのだ。




