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伯爵令息転生女子  作者: くるみ
番外編
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クロウの憂鬱1

クロウからの視点の話です。


私の仕える坊ちゃんが女子になってしまってから1年ほど経つ。


最初は様子がおかしいなと思うだけだったのだが、

心が女になったと告白された時は驚いた。



ちょうど、私のレベッカも、同じだったのだ。


「クロウとは結婚できない。

だって私は男だから」


数年前にそう言われたことがずっと忘れられない。



従姉妹のレベッカとは、昔から身体を入れ替えて遊んでいた。

貴族の女子の生活は窮屈だ。

ずっと家の中に閉じ込められ、マナーを叩き込まれる。


そんな時は私が入れ替わって、レベッカとして過ごすことも多かった。


私の体に入ったレベッカは、彼女の兄のルークと一緒に、魔物を退治して回っていた。

レベッカの年齢は5歳ぐらいだっただろうか。

私とは8歳差という年齢差と、男子ということで、相当楽しかったようだ。

頻繁に入れ替わっていた。

それがその後、数年続いた。



私は戦わずして、レベルが上がっていった。

ただ、私は魔力を持っていない。

魔法は使えなかった。


レベッカになったときは魔法は使えるが。

どうも私には魔法のセンスが無いようだった。

レベッカほど巧みに使いこなせなかった。



レベッカも、私本体が魔法を使えるようにといろいろ調べてくれたようだが、

0にいくつ数を掛けても増えないように、

無い魔力をどれだけ伸ばそうと足掻いても、魔法は使えるようにはならなかった。

私は必然的に剣が得意になっていた。



レベッカ。私の初恋の少女。

小さい頃から可愛らしく、特別な気持ちで見てきたが、

最近では美しさが一段と増してきた。

やはり忘れられない。


告白して断られて以来、ここ数年は入れ替わることはしていない。

入れ替わるよりも、男女として付き合って結婚したい。

でも、それは叶わない。



坊ちゃんが、王都の森に出かけた日。

本当は私とレベッカは森で落ち合うはずだった。

レベル上げが趣味のレベッカは、たまに私や他の人間と連れ立って、

強い魔物を倒しに行く事があるのだ。


あの日、坊ちゃんには、内緒で護衛をしていたと誤魔化したのだが。

本当は私とレベッカの待ち合わせた先に、坊ちゃんは偶然居合わせただけだった。


彼も、思いもよらない行動をするものだ。

それによって運命の人とも言えるレベッカとニアミスしたのだから。



とうとう坊ちゃんは私に、女性の心を持っていると告白してきた。

行動がおかしくなってから1ヶ月以上経ってからのことだった。

きっと坊ちゃん本人はその間、相当悩んだ末のことだろうと思った。


私はレベッカに、坊ちゃんのことを教えた。

男子でありながら、女性の心を持っている人間がいるということを伝えたのだ。


レベッカは、私の想像以上に坊ちゃんに興味を持ったようだった。

レベッカも、男性の心を持ちながら、女性として生きてきた。

そして都合のいいことに、彼女には身体を入れ替える術がある。



レベッカの髪の毛と瞳の色は真っ黒。

侯爵令嬢でありながら、

社交界に出ることよりも、あらゆることのレベルを上げることを優先させていた。

最高に強く、最高に美しい少女。

手に入れたいと思った。

私はそのために坊ちゃんを売ったのだ。


もちろん、坊ちゃんにとっても悪い話ではないだろう。

私は、坊ちゃんの私に向ける好意に薄々気づいていた。

心が女性と聞いて確信した。


だが、身体が男性であったために苦しんだのだろうなと思った。

だから坊ちゃんにとっても都合がいい話なのではないかと思えた。



レベッカは、私のもたらした情報を元に

自分の持てる権力を最大限に使い、魔法学園に急遽入学した。


坊ちゃんの前世の名前も伝えてきた。

『磯野 風子』

聞き覚えがある名前だった。


最初はぼんやりした記憶だったのだが、

そのうちにはっきりと思い出した。

前世の元恋人だということを。

他に何人もいた、歴代彼女の中の1人ではあるのだが。



レベッカの能力を備えた身体に、

風子が入ったらどうなるんだろうか。


もちろん、1人の人間としてレベッカが好きだったのだが、それは叶わない。

レベッカの身体に元彼女の魂が入るのだ。

…それはそれでありだと思った。

いや、むしろそっちの方が好都合かもしれないと思えた。


そのままのレベッカは隙がない。

凛として、つけ込む部分が少ない。


風子だったら、思い通りに事が運ぶだろう。

いじめ甲斐がありそうだ。

追い込んだらどうなるかを見てみたい。

そんな酷い想像をしてしまった。



レベッカは魔法学園に入学したものの、なかなか行動を起こさなかった。

早く入れ替わってしまえばいいものを。


レベッカの身体は強いから自分のレベル上げもしておいた方がいいと思い、

私は、時間を見つけては、森へ行って魔物を倒した。




そうしているうちに、レベッカは坊ちゃんと見合いの話を進めた。

正直、そこまでする必要があるのか疑問だった。

風子は最初は嫌がっていたようだが、いざ会ってみるとレベッカを気に入ったようで、

2人の距離はどんどん縮まったようだった。


これで2人は入れ替わるのだと思っていた。

でも、レベッカはいつまで経っても実行に移さない。



焦った私は、夏期休暇に入ったレベッカの所を訪ねて、問い詰めた。

いつになったら入れ替わるのかと。


「風子を怖がらせたくないんだよ。

彼女が安心できるまで時間をかけたいと思ってる」

そう言った。

どこまで甘いのか。


脅して、無理矢理にでも入れ替わることもできるだろうに。

それをしないのは彼女の優しさなのだろう。


それでも、彼女のレベル上げに付き合いながら、数日かけて説得したのだが、

結局、まだ入れ替わる時期ではないと取り合わなかった。



伯爵領の本邸に行くと、坊ちゃんがローブを着て過ごしていることが多かった。

聞けば、レベッカからのプレゼントだという。

イラついた。

2人が婚約するかもしれないという話にもイラついていたが、

レベッカからプレゼントを貰って嬉しそうにしているのを見るのも耐えられなかった。

ローブに効果を付与させたのはレベッカ自身だろう。


私は激しく嫉妬した。

レベッカといつも一緒にいられる坊ちゃんに。

レベッカが自身で効果を付与した品を身につけていることに。


坊ちゃんはローブを1枚くれると言った。

ありがたく頂戴することにした。


今までの出来事からすれば、このぐらい貰ってもまだ足りないぐらいだ。



早く私のものにしたい。

レベッカ。



その後も2人は交流を深めていった。

デートと称して出かけて、メガネをプレゼントし合ったのも知っている。


風子は私に気を使ってか、私にもメガネをプレゼントしてくれた。

一緒に買いに行き、好きなものを選ばせてくれた。


前世では振ってしまったが、こういう気遣いのできるところもあるのかと

ほんの少しだけ見直した。

レベッカと入れ替わった時は長く付き合って大事にしたいなと思った。




レベッカがドラゴンの討伐に出た。

本来は私も行きたいところなのだが、

以前、私のレベル不足でレベッカ達の足を引っ張ってしまったことがあった。

一緒に行きたいとは言えなかった。


その時の私は大きな怪我をして、

ドラゴンを倒した後、レベッカに治癒魔法をかけられ、助けられたのだ。

あの時のレベッカの必死な顔が忘れられない。



レベッカがドラゴン討伐に行った後、坊ちゃんの様子が変わっていた。

私を意識しなくなっていた。

私は焦った。

坊ちゃん…いや、風子は本気でレベッカのことを好きになってしまったのではないかと。


その直感は当たっていた。

ダンスパーティーが終わって、学園が冬期休暇に入っても、

坊ちゃんは家に帰ってこなかった。


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