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伯爵令息転生女子  作者: くるみ
第1章
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5 逃亡

前世の自分の特技は、ほとんどなかった。

まず運動ができない。体力ない。やる気ない。


頭が悪いかと言えばそうでもない。中の中ぐらいの成績を何となく親に怒られないために保つ。

ただそれだけ。


好きなことはネットを見ることで、キーボード入力は結構得意だった。

でもここにはパソコンもネット環境もない。

この世界ではそういう特技は活かせない。


そして、前世の知識量も大したことがない。

例えば前世での食べ物を再現しようにも、料理をあまりしたことがないため作れない。

化学の知識があれば解決できる場面も、理系が得意でないから無理だったり。


この世界の知識でも持っていれば何か役に立つだろうけど、

この世界がどういう場所か見当もつかない。

ババ抜きとジジ抜きだったら、完全にジジ抜きの方だなと思う。

破滅フラグを事前に知ってたら避けることができる。

その場合はババ抜き。ババを避ければ良い。

でも今は何がフラグか知らないので避けようもない。

何かがあると決まっている訳でもないのだけれど。

とにかく不安だ。


この世界の特技を伸ばし、活かしつつ、生き延びる。

結婚は諦めよう。

記憶が消えた場合にも大丈夫なように今できることをがんばろう。



そんなことを考えながら、また森に入っていった何日か目の出来事だった。

ちょっと森の奥に来すぎたなと思った時。

少し離れた場所で物音が聞こえた。


誰かが戦っている。

少しづつ近づいていくと、真っ黒なウェーブがかった髪と黒い瞳の美少女が数匹の魔物と対峙していた。

髪と瞳だけでなく服も靴も、全身真っ黒な服装だ。

肌だけは透き通るように白い。


これは助けるべきだと思った次の瞬間、

どういう技なのか見当もつかない方法で魔物達が瞬殺されたではないか。

複数の魔物から血が飛び散った。


魔物が倒された後に、少女は笛を出して吹いた。

また魔物が数匹現れた。

ーーーあれ、こういう小説は読んだことがあるなと思った。

こういうシーンがあったんだ。確か黒髪の少女が魔王か何かだったようなーーーーー


ーーーー

私は少女に気づかれないうちに、物音を立てないように来た道を引き返し始めた。

スタコラサッサと。

途中で数匹、少女が吹いた笛に呼び寄せられた魔物が私の前にも現れた。

無詠唱の氷の魔法で凍らせてやり過ごした。

すごい、火事場の馬鹿力って本当にあるんだ。

かなり強力なやつが使えた。


この世界で、魔物からは魔物を動かす原動力である魔石が取れたり、

魔物の種類によって毛皮だったり牙だったり、なんらかの素材が取れたりもする。

食材になることもある。

でも今はそんなの取ってる場合じゃない。

とにかく命が惜しい。

君子危うきに近寄らず、という言葉が何回も心の中に浮かんでは消えた。

私が君子かどうかは別として。

関わったら死ぬやつだ。たぶん。きっと。絶対。


命がいくつあっても足りない。

っていうのは、ああいう人に関わったときの言葉なんだ。きっと。



小説や漫画だったら、あの美少女はこちらの存在を察知していたりするんだろうけど。

そんな心配もあったが何事も起こらず、先ほどの場所からだいぶ距離も取れた。

助かったかもしれない!…でも油断は禁物だ。

焦らず、速やかに移動するのみだ。音はなるべく立てるな。

自分に言い聞かせた。



そうして歩き続けて行くと、男性の後ろ姿が見えた。

こんな森の中で1人で?あの後ろ姿は見覚えがある。

近づいて声をかける。


「クロウ?」


「見つかってしまいましたね …」


聞いてみれば、毎日私の後を尾けてきていたそうだ。

そりゃそうか。私も一応貴族のお坊ちゃんだもんね。

何かあってはまずいということで、気づかれないように護衛してくれていたらしい。



私の都合で避けていたのに、逆に迷惑をかけていたみたいだ。

避けてる人間に護衛されるとか。

恥ずかしいというか、情け無いというか。

まだ子供なんだと自覚させられた。悔しいなー。

早く大人になりたい。

男であるからには強くなりたいなと思った。

さっきみたいに逃げなくても済むように。

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