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伯爵令息転生女子  作者: くるみ
第1章
55/229

54外堀

あの日、またもとの身体に入れ替わった。

長い長いキスをした後で。



私は男子の生活を満喫していた。


前よりも使える魔法が増えたのが嬉しいし。


エド王子からの訪問や念話攻撃もなくなった。

最近見かけないので、また公務などでどこかへ行っているのかもしれない。



王都の別邸にも帰った。

クロウは主にレベッカにしか興味はないことがわかり、精神的にも楽だ。

コリンの姿の私を、何か言いたげに見てくるけれど、

あまり気にしないことにした。

レベッカの時に迫られた時は焦ったけど、

男に戻っている今は手を出してくるなんてありえないだろう。



ヒナタのおかげで剣も上達したし、剣の稽古も楽しい。

あの強かったクロウと対等に打ち合えるようになったのだ。


正直、前まで、

「何で男に転生したんだ」って、不幸だと思っていたけど、

レベッカになってみて、

いかに自分が恵まれていたのかと思い知った。


強くなりすぎるのもつまらないと思ったというか。

ヒナタはどうかわからないけど、

私としてはコツコツやれることがあった方がいいな。



ヒナタは、寮に帰ってきた次の日に、

また入れ替わろうとしてきた。

(エド王子の心配がなくなったから)


よく考えたら、また女子とキスしなきゃ戻れないわけで。

拒んでしまった。


もっと食い下がられるのかと思ったけど、あっさり引き下がり、

それから何も言ってこなかった。


その時の私は、穏やかな毎日がずっと続いていくのだと思っていた。




ーーーーーーーーーーーー




次の週、大変なことになってしまった。



私は、男子寮の兄様の部屋にいた。


「アラン兄様、もう一度言って下さい」



「お前とレベッカ嬢の婚約が正式に決まったと言ったんだ」


こ、婚約が決まった?

嘘でしょ?


「前からレベッカ嬢には良くしていただいている。

エヴァンス家には、以前からうちの事業に便宜を図ってもらっていたんだ。

ドラゴン討伐の際にはお土産に素材をたくさん頂いた。

婚約の話も、うちから断る訳にはいかないだろう?

父様にも、王家の方からこの婚約を是非進めるようにと

今の段階で内密に要望があるそうだ。

つまり、うちとしては断れない」


生贄になった気分だ。


「断ったらどうなるんです?」


「王命が下るんだろうな。

国王陛下や、第1王子の筋からの話のようだからな」


怖い。

いつの間にそんな話を進めてたんだ。

ヒナタの人でなし!

お見合いの話のときと同じ流れじゃないか。

あの時は断っていいって言ってたのに…


「嫌なのか?

…お前が嫌がると思って言わずに済ませようと思っていたのだが、

女子寮の裏手でお前とレベッカ嬢がキスしていたという噂が流れている。

何人もに目撃されていたそうじゃないか。

てっきりお前も乗り気だと思っていたが…」


「兄様!」

私は頭を抱えた。


恥ずかしい。

あのキスを大勢に見られていた?

濃厚なあれを?

信じられない!

時間が長かったから見られる率も上がったのかも…ああぁ…。

しかも、あの時の私はレベッカの中にいて、キスされてた側なのに、

している側として見られるんだよな。

別に、あれはあれで良かったからいいんだけどさ…すっごく良かった…。

思い出すだけでうっとりしてしまう。


でも多数の人間に見られてたとはショックすぎるな……。



「噂は嘘なのか?」

「…本当です…」


完全に油断してた。

正式な婚約なんてもっと先のことだと思ってた。

ヒナタは、レベッカでいるうちにやれることをやったんだ。


「お前が何を気にしているのかわからんが、もう諦めるんだな。

他所様のご令嬢と、ここまで噂になってしまった責任も取らねばならない」

いつもは優しい兄様に、そう言われてしまった。




寮の自室に戻った。

王女に念話をかけた。

「お姉ちゃん?私。風子」


「あら、どうしたの?」


婚約させられた話をした。


「そうね。レベッカ…ヒナタは私のところにも来たわよ。

いつの間にか、風子と姉妹ってことに気づかれていたようね。

私も脇が甘かったわ。

妹さんをください、って、挨拶されちゃったわ」


…お姉ちゃんのところにも行ったのか。

なんなの、その行動力は。


「あの強さも凄いと思うし、人としても悪い子じゃないと思う。

風子との相性も悪くないんじゃないかしら。

そろそろ腹を括った方がいいんじゃないの?」


「そ…そうだね…」


逃げ場がどんどん潰される。


お姉ちゃんはお土産に魔石を貰ったらしい。

賄賂まで渡しているとは…。

すっかりヒナタの味方になってるじゃないか。




「そういえば、エド様はどうしてるの?

この前レベッカと婚約するって騒いでいたのに」


「エドお兄様なら修行に出てるわよ。

あなた達が婚約したとしても、

いざとなったらロイヤルパワーを使おうと思っているんじゃないかしら。

レベッカ嬢より強くならないと、って、やたら張り切っていたわね」


そっちはそっちでやる気なんだ…

私の気持ちを無視してどんどん事が運んでしまう。

なんだか怖いなと思った。

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