52女子寮の裏手で
私は女子寮に戻ってきた。
念話装置と男子寮の鍵を黒いローブのポケットに入れて羽織った。
ヒナタと入れ替わったパーティーの夜、部屋から出てきた時の服装だ。
また、元に戻るんだな。
でも今思うと、私にとっては、男子の生活の方が向いていたのかもしれない。
ヒナタは私の身体で修行に出て。
エド王子は私が女になった途端に豹変。
クロウも、もともとレベッカを手に入れたくて動いていたようだし。
「レベッカが美少女過ぎるんだよね」
女の私も翻弄されるぐらいだったもんね。
寮を出て歩いて行くと、エド王子が立っていた。
またか。
条件反射で結界を張る。
でも、エド王子はいつもと違っていた。
近づいてくる様子はない。
「お前、本当に結界に入ってばっかりだよな」
そりゃあ、身の危険がありますから。
「出てきて戦えば、普通に勝てるんだってな。
何故そうしない?」
「私は力の加減に慣れていないから、危ないからですかね。
でも、いつもそこまで考えてませんよ。
単純に怖かったからです」
「怖がらせて悪かったな」
おや、どういう風の吹きまわしだろう。
「前世の俺のことはまだ思い出さないんだな」
「…はい」
「前世の俺はお前の気持ちなんて無視して好き勝手して、結局お前に振られた。
今は王子だし、お前に愛想をつかされた前の俺とは違う。
でも、お前を追い詰めたことは同じだったみたいだ」
そうなんだ…前世、私が振ったの?
モテない女なのに。想像つかない。
「一回婚約って話は忘れてくれ。
でも諦めるわけじゃない。
ヒナタから、まだお前を自由にできるレベルに達していないと聞いた。
数年はかかりそうだとも。
俺もレベルを上げるから、まだお前の選択肢の1人でいさせろ。
というか、選択肢の1人だ、わかったな?」
「わかりましたよ」
上からだなぁ。
私は、何もなさそうな雰囲気から、結界を解除した。
エド王子がゆっくり近づいてきた。
そして、ポンポンと頭を撫でられた。
「離れてる間も、こうしてずっとお前に触れたかった」
優しく微笑んだ。
イケメン王子のスマイルにやられていると、
髪の毛をわしゃわしゃかき混ぜられた。
その隙に顔が近づいてきて、おでこにキスされてしまった。
「これ、ヒナタには内緒な?」
そうして爽やかに去っていったのだった。
何?今の……
はぁ、顔が熱い。
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私は女子寮の近くでボーッとしていた。
エド王子にときめいちゃいけないのに、私のアホって思って、
塀の壁に頭を打ち付けていたら、痛くて、血が止まらなくなってしまった。
塀も壊れるし、本当にアホだ。
それにしても頑丈な身体だよね、レベッカは。
コリンの姿のヒナタがやってきた。
「こんなところにいたんだ。
男子寮の方に行ってるかと思ったよ。
…っ、どうしたの?その頭?」
ヒナタが治癒魔法で怪我を治してくれた。
光属性の魔法だった。
「凄い、もう使いこなしてるんだね」
「まあね」
光属性だけあって、爽やかで気持ちよかった。
闇属性も治癒魔法があるけど、使うとゾッとしてしまうから。
助かった。
さらに、血で汚れたローブも、生活魔法でキレイにしてくれた。
天使だ。
前に洗濯せずにキレイにできないかと思ってたあの魔法が使えるなんて、
ヒナタは凄いと思った。
そう伝えると、
「何事にも、ちょっとしたコツがあるんだよ」って言ってた。
入れ替わったら、私も使えるようになるらしい。
なんて素敵。
拝んでしまう。
「ここで何してたの?
もしかして、エド王子に会ったの?」
「え?……ううん」
私は嘘をついた。
ヒナタがちょっとイライラしてる。
うまく誤魔化せてたらいいんだけど。
すると、ヒナタは何もなかったかのように切り出した。
「そろそろ身体を入れ替えないとね」
「う、うん」
壊れていない部分の壁に私を持たれさせると、
ヒナタは私に強引にキスをしてきた。
前のように、入れ替わるように最初は集中していたのだけど、
クロウの前での時みたいに、また入れ替わらなかった。
そうなるんじゃないかなと思ってはいたけど。
エド王子に会ってたの、やっぱバレてたんじゃないかな。
でも、あれはエド様が会いにきたのであって、
私が好きで会ってたわけじゃないのにな。
こんなかたちで八つ当たりするのは酷いと思う。
どんどん深くなるキスを受け入れながら、
このまま時間が止まってしまえばいいのにと思った。




