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伯爵令息転生女子  作者: くるみ
第5章
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10 お茶会4

私は公爵家の温室でニコラス様といい雰囲気(?)になっていた。

そこにエド王子が現れて空気が一変した。

私としては、キスされそうになっていたけど逃げたかったから、結果的に助かった。


『ニコラス』と呼び捨てにしたエド王子。

『エド兄様』と呼んだニコラス様。

2人の関係は近しいものなのだろうか。



「ニコラス、彼女から離れろ」


「おや?何故殿下からそのようなことを言われる筋合いがあるのでしょうね?別の令嬢と婚約された…と聞いていますが、間違った情報でしたか?」



「間違ってはいない。

だが、お前には言われたくないな。

アイリスにしたことを忘れたのか?」

忌々しそうにエド王子がニコラス様を睨む。


「婚約者がいても、他の美しい花に心を奪われることはあるでしょう。

殿下ならこの気持ちをわかってくれると思っていたのですが…。

それに、今の私には婚約者はいないのです。

こちらこそ、婚約者のいる殿下に言われたくはありませんね」


「それは…まぁ…」

エド王子の勢いが急速に弱まる。

妹である王女を庇っているんだろうけど、

エド王子自身も婚約者がいる時に心変わりしたり、

あまり人のことを言える立場じゃなさそうだ。



「私達の関係に水を差してきたということは、あの噂も正しいのですか?

殿下の想い人はこのレベッカ嬢だと…そう、認めるのですか?」


エド王子は少しだけ驚いた様子を見せた。

「俺の想い人が…彼女……?」


そうだった。

エド王子の中では私が彼に片想いのはずだったよね。

そして失恋したという設定だった。

だけど、エド王子の気持ちが私にあることを、ニコラス様も知っていた様子だ。

こんな形でエド王子に知られてしまう事になるとは。



「俺の想い人だったと思ったから、意図的に彼女に近づいたのか?」


「嫌だなあ。そんなわけないじゃないですか。

彼女の前でなんて事を言うんです?」


「お前のやり方はお見通しなんだよ」


エド王子は心底腹立たしいという様子だった。



それを聞いたニコラス様は


「…正直、最初はそのつもりだった。

ついさっきまでは。

だけど彼女は初めて僕の顔以外を褒めてくれたんだ。

本当の僕を見てくれそうな人に初めて出会った。

だから、エド兄様。彼女は僕に譲ってくれないでしょうか?」


少年のような純真さを含んだ口調で、真剣に言ったのだった。



『初めて顔以外を褒められた』


えっ…そういう設定だったのか。

手を褒めただけなんだけどな。


「お前の気持ちはどうなんだ?」


エド王子は私の方を見て言った。


「えっ?…あの、その……私には婚約者がおりますし…」



直後、何の前触れもなく、エド王子は右手をニコラス様に向け魔法を放った。

並んで座っていた私に、ニコラス様の身体がもたれかかる。


び…びっくりした……。

何も急に魔法を使わなくても。


エド王子が近づいてきて、彼を私から引き離しベンチに横たえ、

座っていた私を引っ張ると強引に立たせた。



「エド様。彼に何をしたんですか?

眠らせたんですか?」


横たわったニコラス様は気持ちよさそうに眠っているように見えた。


「そうだ、眠らせた。

あと、お前に関する記憶も消しておいた」


「記憶も消したんですか?どうして…」


「…ここだけの話、いつものことなんだ。

お前が気にすることじゃない」


「いつものこと?」


「ああ。昔、アイリスと婚約していた頃に女遊びがひどくてな。

しょっちゅうコイツの記憶を消していたことがあったんだ。

コイツと、相手の女と、両方の記憶を。

相手がどれだけ入れ替わってもコイツは変わらなかった。

反省もせず同じようなことを繰り返して、

とうとうアイリスも怒って婚約解消になったってわけだ」


お姉ちゃんの機嫌がやたらと悪かったのはそういう訳だったのか…。

彼らの婚約が無かったことになって人々がそれを覚えていないことや、

ニコラス様周辺の噂が消えたりすることなども、

エド王子が関わっていたのかもしれない。


「もしかして、コイツと付き合いたかったのか?

いい雰囲気だったようだし…」


不機嫌そうな感じで問われる。


「えっ?いえいえ。…助かりました」


そう、本当にさっきはどうかしてた。

拒むつもりなのに、パニックになって思考停止気味になっていて。

エド王子が来なかったらどうなっていたのだろうか。



ふと気がつくと、彼は私のことをじっと見つめていた。

それはなんだか熱を孕んだ視線に思われて落ち着かない。


「あの、どうかしましたか?」


「今日は…いつもと違うんだな」


さっきのニコラス様と同じく、

メガネで地味ないつもとのギャップの事を言っているらしかった。


美少女の魅力ってすごい。

メガネを取って着飾ったら男の人が急に興味を持つんだもんね。

ニコラス様だけでなく、多くの男性の視線が、

なんだかいつもと違う気がしていたんだ。


私が他人事のように冷静に思うのも無理はない。

この身体はもともと私のものではない。従って、私の魅力ではない。

勘違いしたらダメだ。


だけど恐らく、エド王子はそうは思わなかったようだ。


「さっきニコラスが言っていた、俺の想い人がお前だというのは本当か?」


私に興味津々な様子で、ストレートに切り出した。



「え?…ええっと……?」


私は急に思いもよらないことを言われて戸惑っていた。

そうですと言ってしまったら、元の関係に戻ってしまうんじゃない?

彼は私の記憶を失っているのだから、それはないと思いたいけど。


「どうなんだ?」


「違いますよ。ニコラス様の勘違いです」


私は思い切ってそう言い切った。



エド王子がこちらに一歩近づいた。

もともと割と近い距離に立っていたので距離が近すぎる。

私は後ずさった。

すると彼はまた一歩近づいてきた。


「きゃっ……」


さらに後ろに下がった私は、縁石につまづいてひっくり返りそうになった。


気がつけばエド王子に抱き抱えられ、支えられていた。

至近距離で見つめられて心臓が跳ねる。


「エド様…」


彼は私を支えていない方の手で私の頭に手を伸ばした。


「どういう事情か説明してくれるよな?」


「あっ……」


彼の手には、私のはめていたカチューシャが握られていた。

私は緑の瞳の色を、彼に暴かれてしまったのだ。




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