28 プチ(ヒナタ視点)
俺は、ジョン先生とドラゴンが飛び去った後を追っていった。
ドラゴンを隷属させることは、レベッカの時ならできただろう。
魔物や動物を操る術。
魔法とは少し違う。
コリンの時は同じようにはいかなかった。
でも、やってみるしかない。
無理であれば、ルークのペットとはいえ、倒すしかない。
王都の郊外の山間部。
魔物もよく現れる地域まで飛んで、
先生のドラゴンとルークのペットのドラゴン(名前はプチ)に追いついた。
いや…全然プチじゃないけどな!
最初は小さかったからそう名付けたんだろうな!
………名前のことはいい。
プチと先生は、山の中腹の平らな空き地になっている場所に降りていた。
魔物狩りで、普段はある程度人もやってくる。
先生はドラゴンの変化を解いておらず、プチと睨み合っていた。
俺はその近くに降り立つと、
コリンの身体でできるだけの術を駆使して、プチを懐柔し始めた。
でも、俺で出来る範囲は限られていた。
殺気を消し、仲間レベルまで持っていく事はできても、
思ったように動いてはくれなかった。
そこに、クロウが現れたのだ。
クロウは騎士団の仕事で、郊外で増えていた魔物狩りに来ていたようだ。
そして、クロウのひと睨みでプチが萎縮したのがわかった。
クロウも、動物を隷属させる術は過去に試したことがあったようで、
ドラゴンにも応用できた。
クロウは数年前、ドラゴンとの戦いで瀕死の重傷を負ったのだが。
あの時のレベルとは桁違いの強さを手に入れて彼も変わったのだ。
俺とクロウがドラゴン…プチの対処をしている間に、
ジョン先生は人間の…いつもの先生の姿に戻っていた。
念話で、学園の外にいる旦那さんと連絡を取ったそうだ。
もう一体の別のドラゴンとレベッカが戦っていると報告を受けた。
そんな!
もう一体いたなんて、気がつかなかった……。
風子は大丈夫だろうか?
それを聞いた俺とクロウは急遽プチに乗って学園に戻ることになったのだ。
結局、クロウがプチを操り、
クロウの代わりにジョン先生がこの場に残ることになった。
ドラゴンに乗って向かえば、学園まではすぐだった。
上空から見下ろすと、学園の庭園の木々が何十本も倒れ、
地面はボコボコと、無残に掘り起こされたようになっていた。
風子はレベッカの力を使って戦っていたのだ。
大きいドラゴン…地竜の側にいる風子を見つけた。
良かった、無事みたいだ。
そして風子と念話で話し、地上で暴れている地竜を倒すべく準備にかかっていた時だった。
「ヒナタ。私も竜を倒してみたいです」
突然クロウが言ってきた。
聞いてみると、
俺がいいところを持っていこうとしているのが気に入らないらしかった。
「でも、考えたらわかるでしょ?
この状況で俺がプチを操縦したらどうなるか。
危険だと思うよ?やってみる?」
頑固そうな顔を見て、一度は試してみるかと思った。
大剣を彼に持たせ、プチの操縦を交代した。
プチのやつ。
途端に自由に飛び回り始めた。
風子の所にも近づいていって、スレスレに飛んでみたり。
完全に遊んでいた。
そうだよな。
俺、ちょっと…かなり舐められてるよな……。飼い主としてさ。
「ヒナタ…変わりましょう」
具合の悪そうなクロウが声をかけてきた。
前世では乗り物酔いするタイプだったようだ。
そういえば馬車で移動する時など、道が悪いと具合が悪そうになっていたっけ。
今のプチの動きは、ジェットコースターのようなものだったろう。
「じゃ、俺がやるから。いいね?」
「ええ。どうぞ」
俺もクロウも、お互い納得したのだった。
良かった。
俺は密かにホッとしていた。
風子は俺が以前贈った指輪をしているのを見た。
左手の薬指にはまっていた。
それを見てしまったら、ここでいいところを見せたいなと思った。
いやいや!
それよりも、今はとにかく彼女を守らないと。
危険な地竜を排除する。そこに意識を集中させないと。
「クロウは俺が降りたら、プチと北の別荘に行ってて」
「了解です」
地上にいる風子は心配そうにこちらを見ている。
危険な目に遭わせるつもりなんてなかったのに。
ここは俺が決めなければ。
俺は再び魔法を発動させ、風子に合図を送ると、
地竜の上に飛び降りたのだった。




