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伯爵令息転生女子  作者: くるみ
第1章
20/229

19 黒い姫

レベッカ嬢とは、お見合い、というよりかは、

兄様も交えて、地味にお茶をする感じで会うことになった。

王都のちょっといいレストランの個室を用意したという。


店の前までくると、怖くなってきた。

逃げたい。


ーーーゾクッーーーーー

寒気がした。悪寒が。


「兄様、帰りたいです。

良くない予感がします」

「何言ってるんだ、ここまで来ておいて」


「今、ゾクッとしませんでしたか?」

「私は、何も変わりはない。大丈夫か?」

兄は続ける。

「私が変わってやりたいぐらいだがな。

先方はお前をご指名なのだ。

レベッカ嬢はあの瞳の事がなければ、引く手あまただろうな。

私も名乗りを上げているだろう。あれほどの美少女はなかなかいないからな」


「兄様もそういうことを考えるんですね。初めて聞きました」

「私だけではない。そう思ってるやつは多いんだぞ」


私が落ち着いたので、店に入ることになった。


「やあ、レベッカ嬢。こちらでしたか。

お待たせして申し訳ありません」

兄が声をかけた。

レベッカはもう店に着いていたようだ。


たしかにレベッカ嬢は美少女だった。

薄茶色いストレートの髪を今日はハーフアップにしている。

黒い瞳。緑色のワンピース。

左手の中指に緑色、小指に黄緑の石がついた指輪。

あの指輪、学校にいるときも常にはめてるやつだ。

本人もかわいいし、小物も服も似合ってる。



しかしこの話、とにかく引き合わせろ、って感じなんだろうね。

強引な話だよね。

レベッカ嬢は納得してる話なのかな。


「こんにちは。コリン・フォレストです」

とりあえずあいさつだ。

「こんにちは。来てくださりありがとうございます。

レベッカ・エヴァンスと申します。学校では話したことがないですが…」


はじめて声を聞いた。

かわいい。

美少女。とにかく美少女だ。

黒い姫?どこが?って感じで、見とれてしまった。


でもさ、相手の方がなんとなく緊張してるように見えるんだけど。

顔も赤い。

美少女に緊張される覚えが全くない。




「あの、唐突ですが、今日の話の発案者って誰なのでしょう?

本当に自分なんかで間違ってませんか?

あなたみたいなかわいい方が」


にっこり笑ったレベッカ嬢は言う

「間違えていませんわ。

黒い瞳の話は知ってらっしゃいますよね?そういう噂もありますでしょう?

だから実際、私自身はあまり社交界には出ておりません。

ですが、私には別の兄弟もおり、社交はそちらの兄弟がこなしております。

領地の方も上手く治めています。何も問題はございませんわ」


兄が口を挟んだ。

「コリンの兄としては、突然の話に驚いているところです。

まだ年も、お互い、それほど急がなければいけない年齢ではないと思います。

この無口な弟を是非にと望む理由があるならばお聞かせくださいませんか?」


レベッカ嬢はほんの少し間を置いてから切り出した。

「さきほどコリン様もおっしゃった、今回の話を言い出したのは私です。

淑女としては恥ずかしい話なのですが…彼に興味があります。

アラン様も気づいていると思いますが、コリン様には最近悩みがあるのではないでしょうか。

それを解消する手立てがあるのです。

今すぐ婚約して欲しいなどとは申しません。

十分お考えの上で断っていただいてもかまいません。

私に任せてはいただけませんでしょうか?」


兄は目を見開いて、少し驚いた様子を見せた。

確かに、コリンは数ヶ月前から変わってしまったところがあったからだ。

兄はしばらく考えてから口を開いた。


「あなたがそこまでおっしゃるなら。よろしくお願いいたします。

でも万が一問題があるようであれば、関係を解消していただきます。

それでよろしいですね?」


「わかりました」


それだけ言うと、兄は

「では、後は若い2人で」

と言って帰っていった。

このセリフ、言ってみたかったんだそうだ。

……兄様…。



ここから2人か。何を話したらいいんだろうか。

「あのーー」

「あー。良かったー。緊張したー」

美少女は突然口調が変わった。

私はポカンとしてしまった。


「コリン様。単刀直入に言います。

櫻井 ヒナタという名前に聞き覚えはありませんか?」

「えっ…」


聞きおぼえ、ない。

転生者ということなのだろうか。

ヒナタ、男か女かどっちだろう。



「すみません、聞き覚えはありません」

「敬語はやめよう。風子?」

えっ、なんで名前を。


「風子ではありませんよ」

とりあえず誤魔化した。



「忘れちゃってるみたいだね、やっぱり。俺のこと。

わからなくても無理はないか。見た目もかなり違うもんな…。

そのうち思い出すかもしれないし、友達から初めてみよう?」

なに、この展開…。

そして、誰?


俺って言ったよ。美少女が俺って言った……。


「あのー、人違いの可能性はないのですか?」


「…………」


「…………」


「あー…それもあるのか。同姓同名。

うっかりしてたわ。

でもさ、たぶん俺の勘では絶対にそうだと思うんだよね」


人違いかもしれないのかよ。

人騒がせな人だ。


でもそれ言ったら、エド王子とかどうなんだろう。

あの人も馴れ馴れしく寄ってきたけど、誰かと勘違いしてる可能性もなくはない。

そのうち確認してみよう。

私にはどっちも知らない人だから。


「あなたの知り合いだとして、どういう関係だったのですか?」


「それは…今は秘密にさせてほしいな。ごめんね。

あと、磯野 風子だということはもうバレてるから、誤魔化さなくていいよ」



店を出ることにした。

デートっぽいことをしてみようということになったのだ。

名前などからすると、彼女は前世男だったということだ。

おー、男の格好の中身女性の私が、中身が男性の美少女とデート。

この世界での初デートってやつかな。


でも、クロウとはしょっちゅう出かけてる。

あれはデートにはカウントされないか。

けっこうドキドキするんだけど。

なんでこんな時に思い出しちゃうんだ。はぁ。



この世界でのデートって何をしたらいいんだろう。

前世でも話題に困っていたのに、この人と何を喋ればいいのだろうか。

映画はないし、ドライブもできないし、ショッピング?

うーん。


「本屋さんにでも行きましょうか」

レベッカ嬢が言った。


「あっ、いいですね」

レベッカも本が好きなのだそうだ。

物語系なのかと思ったけど、禍々しい感じの魔法書とか読んでた。

そうか、中身は男か。

このギャップに慣れないな。


この子といると、不思議と疲れを感じない。

黙っていても良い空気感と、私を理解してくれてるなって安心感がある。

何者なんだろう。この人は。

居心地がいい人だ。

ドキドキするというより安心する。


「これからは、学校でも話しましょう」

私は言った。


「ありがとう」

ニコニコとレベッカ嬢も返してくれた。


「コリンって呼ばせてくれるかな?

私のことはレベッカと呼んで欲しい」


こうして今世の男の自分は、美少女と友達になったのだった。

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