16 第2王子と友達になりました。
アイリスお姉ちゃんからは、黒い瞳の美少女に気をつけろと言われた。
でも結局クロウのことは言い出せなかった。
黒い髪と黒い瞳を持つ、私の幼い頃からの専属使用人。
剣の達人。
でも、魔法は使ってるの見たことないな。
魔法を使えない人はけっこうな割合でいるし、
貴族だから魔法が使えるわけではない。
貴族で魔法が使えない場合は、別の学園に行けばいいだけだ。
剣の達人なら騎士を目指してもいいし、やれることはいろいろあると思う。
でも、クロウはうちに来る前、大変だったのだろうか。
別邸に帰るとクロウが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、アラン様、コリン様」
いつも通りだ。
あー、目の保養だわ。
でもなんか最近色気がすごい気がするけど、気のせいかな?あれー?
とにかくすごいの。
男でも惚れちゃうんじゃないかという色気がダダ漏れてる感じというか。
休日に、気分転換がてら、クロウをコッソリ監視しようと思いつく。
でも、基本的に、一緒に剣の稽古したり、一緒に本屋に行ったり、
その他は私のお世話してくれるので、監視するよりされてる感じになってしまった。
コソッと見ようとしてもすぐバレちゃうんだもん。
あの人、背中にも目がついてるんじゃない?
前世でもいたわ、そういう人。
そうそう、制服っぽい服も買いに行った。
この世界は日本ほど便利じゃないと思ってたけど、
王都にはいろいろ揃ってる事がわかった。
満足いく買い物ができたのだった。
どうしてもどうしても、クロウの色気ダダ漏れが気になった私。
「クロウって恋人とかいないの?」
結局、直接聞いてみた。直球勝負だ。
「知りたいですか?」
笑顔で返されたけど、目の奥に仄暗い何かを見たような気がした。
うわ、なんか怒ってない?彼女作る暇もないとか?
「あのさ、最近色気がすごいなと思って。ただそれだけ。
私も男として、どうやったらその大人の色気を出せるのかなー、と思って聞いただけなんだ」
「そうですか。そのうちわかりますよ」
またニコニコと貼り付けた笑顔で返された。
大人になったらわかるのかな?
怖いからもうこれ以上聞くのはやめておこう。
それにしても、学校へ通うのってけっこう時間かかるものだよね。
遠くはないし、馬車に乗ればすぐだけど。
前みたいにもっと自由に魔法を特訓したいのになー。
学校に通い始めて時間が足りない感じがする。
ーーーーー数日後、学園にて。
また私の前に第2王子が現れた。
「風子。また会ったな」
「風子ではありません」
本当に誰なんだ、一体。
前世の自分と知っていて、これだけ気安く話しかけてくる人間。
苗字は鈴木だったよね。
「またお会いしましたね、鈴木さん」
ヤケになって言った。
「ーーー?思い出したのか?」
おお、ちょっと怯ませることに成功したみたいだ。
「何を思い出したと思いますか?」
「何を…うーん…」
王子はじっと真顔で私の顔を覗き込んできた。
「カマかけてない?」
「……バレましたか」
無表情で基本的にわかりにくい人間だよ、こっちは。
よく読み取れたな。
お主やるな、って感じだわ。
「そりゃあわかるよ、風子のことだもん」
これって、けっこう親しかったのかな?
「風子って呼ばずにコリンと呼んでください」
「じゃあコリンも俺のことはエドと呼んでくれていいぞ」
「わかりました、エド様」
相手は王族だから敬語でやり取りはしているけど、
気持ちで遠慮するのはやめようと思った。
たぶんこの人は、前世の親友だった子だと思う。
あの子も鈴木って苗字だったし。
無口で消極的だと、よくこういうグイグイくる系のお友達ができることがある。
最初はちょっとやだなーと思ってるんだけど、
だんだん居心地が良くなることも多いんだよね。
よし、遠慮はやめてみよう。この人に関しては。
本音を言っても傷つける事が少なそうな人だ。
気を使わなくていいから、きっと楽だと思う。
そして、誰なのかを明かすつもりはないようだけど、悪い人ではないんだろう。
そう思うことにした。
「魔法か剣の練習しません?」
「おお。いいねー」
「何魔法が得意なんですか?」
こうして、今世で男友達ができたのだった。




