コント『タクシー』
乗客「新宿南口まで」
運転手「わかりました。新・時空サウスゲートですね」
客「どんな聞き間違いだよ⁉︎ そして、ソレどこへ通じる入り口だよ⁉︎」
運「お客さん、ノリが良いですね〜。このボケにツッコむ人は相当なSFマニアですよ」
客「SFとかは、どうでもいいから早く出発してよ」
運「お客さん、ノリが悪いですね〜」
客「どっちなんだよ? 数秒で前回撤回するなよ‼︎」
運「わかりました。それにしてもお客さん、ついてますね〜」
客「ん、なにが?」
運「今の時間帯は国道が混んでいるんですよ。こんな時こそ裏道の達人である私の出番なんです」
客「……そうなんだ」
運「カーナビよりも賢いんですよ」
客「……そうなんだ」
運「近所に住んでいる物知り爺ちゃんよりも詳しいんですよ」
客「どぉ〜でもいいわ‼︎ っていうか、最初からそっけない相槌をしてた事に気づけよ‼︎」
運「わかりました。では発車します」
客「さっきから、全然わかってないけどな。……本当に頼むよ」
〜〜〜〜〜しばらく走行後〜〜〜〜〜〜〜
運「お客さん、着きましたよ」
客「着きましたって、まだ走り初めてそんなに経っていないじゃないか? ……というかココどこ?」
運「私ん家」
客「知らね〜よ‼︎ なんで、あんたん家行ったんだよ? そんなこと頼んでないだろ‼︎ 早く、新宿に行ってくれよ‼︎」
運「言ったじゃないですか。駅までの裏道を知っているって」
客「だからって、なんであんたん家を経由しないといけないんだよ⁉︎」
運「駅に向かう途中に私の家があるってことは、ここら辺は私の地元なんですよ。裏道に詳しい証拠じゃないですか」
客「そこは最初から疑ってなかっただろ⁉︎ 証拠なんて求めてなかっただろ⁉︎」
運「そんな言い方しなくても……急ぐ為に、裏道に来たんですから怒らないでくださいよ」
客「わ、わるかったよ」
運「……でも、問題があるんです」
客「ん?」
運「目の前の道路が工事中で通行止めなんです」
客「ダメじゃん」
運「心配ありません。こんな時こその秘密の抜け道があるんですよ」
客「抜け道も何も目の前が通行止めでどうするんだよ? 早く来た道を戻ってくれよ」
運「大丈夫です、こっちです」
客「ガーン‼︎ 秘密もなにもココ道じゃなくて、あんたん家の庭じゃないか⁉︎ いいのかよ、こんなところ通って⁉︎」
運「だから、秘密の抜け道なんですよ。他の人は使えません」
客「そりゃそうだけど……そのわりにはなんで庭に入った途端に、また止まるの?」
運「ちょっと愛妻弁当を受け取ってきますね」
客「ちょっと待てやぁ〜‼︎ なんでドライブスルー みたいなノリで弁当取りに行こうとしてんの?」
運「せっかく家まで来たもんで、ついでに」
客「家に来たのは『ついで』じゃなくて、完全な寄り道だよ‼︎ 俺はあんたの家が見たいなんて一言も言ってないから‼︎ ……頼むから早く出発してよ〜」
〜〜〜〜〜〜〜しばらく走行後、信号待ち〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
運「それはそうと、お客さんは日本語上手ですね〜。どこの国の人ですか?」
客「え? なんでそんな事を今聞くの? 散々、俺と会話していて、なんでそんな感想抱くの? 俺のどこに外人らしさがあった? なんかカタコトの日本語を喋ったっけ?」
運「え?違うんですか?……鼻が高いので、てっきりそうかと」
客「高くないわ‼︎ さっきから焦りっぱなしで、メガネずり落ちっぱなしだよ‼︎」
運「では、外人に見えるように鼻を高く加工しますね」
客「なんで俺の顔をスマホで撮って加工アプリに読み込んでいるんだよ⁉︎ しなくていいよ‼︎」
運「お客さん、ちょっといいですか?」
客「まだ、なんかあるの?もう外人でもなんでもいいから、早く向かってよ」
運「通行止めが多くて道が分からなくなってしまったんで、今から近所に住んでいる物知り爺ちゃん家に向かいますね」
客「もういいわ‼︎」