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ホイップクリームを絞る奴

作者: みくた

 物心ついて間もない頃、なぜか私はホイップクリームを絞ることに強い憧れがあった。

 その憧れがどこから来たのかはっきりとしたことはわからないが、おそらくテレビか何かの影響なのだろう。

 私は日々、入浴時に石鹸で作った泡をクリームに見立て、それをガーゼに包み絞ることでその憧れを満たしていた。



 そして時は経ち、幼稚園のクリスマス会でチャンスが巡って来た。

 会の内容はみんなで歌を歌い、ケーキを食べてからサンタさんからプレゼントを貰うというものであった。

 中でもケーキはパンケーキで、自分たちで簡単なデコレーションをしてから食べるらしい。そう、そのデコレーションはホイップクリームなのだ。

 とうとう夢が叶うときが来た。


 迎えたクリスマス会当日。

 スケジュール通り歌った後、園児達はお弁当を食べるときのグループごとにまとまって席についた。

 目の前には何も乗っていないパンケーキ。そして、先生の手にはホイップクリーム。

「はい。今からケーキにデコレーションをしていきまーす。まず、先生がお手本を見せますねー。」

 先生はそう言って私のパンケーキにホイップを絞る。そして、ホイップは私の手に握られることなく他の園児へと回っていった。


 て め ぇ ・ ・ ・ な ん て こ と を し て く れ や が っ た ん だ ・ ・ ・ 


 私はひどく落胆した。



 そして、さらに年月が経ち、憧れも忘れかけていた小学生の頃、ついにその時が来た。

 それは小学生四年生のクリスマスだった。

 その年、我が家で食べるクリスマスケーキは自分たちで作るというものであった。作るといってもすでに出来上がっているスポンジ、クリーム、イチゴを組み立てるという簡単なものである。もちろん、クリームは絞るタイプだ。

 忘れかけていた憧れが蘇り、私の胸は躍った。


 クリスマス当日。全てのセッティングが整い、クリームを絞るときが来た。

 私は兄妹を押しのけ、クリームを手に取った。


 そ し て 、 絞 っ た 。


 ・・・なんか予想通りだったというか、思っていたほどの衝撃はなかった。だが、心に引っかかっていたものは取れた。


 その後もホイップクリームを何度も絞ることになるのだが、そのたびに私は一連のことを思い出す。 

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― 新着の感想 ―
[一言] 私はホイップクリームそのものになぜか憧れがありました。絞る奴にも当然ありましたけどね。なんであんな形で出てくるのだろうというのが大変不思議でしたね。 今度ホットケーキでも焼いて上に乗せたいで…
2020/05/06 17:58 退会済み
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