SKYED11 語句紹介
【ドミニフィナ大陸】
超大国ロデスティニアが全土を掌握する大陸。面積は世界第三位。国土のほとんどが砂塵の吹きすさぶ礫地であり主要都市は沿岸部に集中している。
空には玉虫色の靄がかかっており太陽を拝めるのは北のクラバ地方と北東のティグラル地方、南のノーマゲント地方の各所一部のみ。
【ロデスティニア】
かつてはいち早く石炭の重要性に気づいて産業革命を果たし世界随一の栄華を誇っていた大国。世界第一位の国土面積を有するがそのほとんどは生産性のない荒廃地である。首都は大陸中央やや北に位置するベインファノス。北のベステス大陸に飛び地を持っておりそこで産出される優良な鉱石が産業の中核を担っている。
【ベインファノス】
ロデスティニアの首都。かつてロデスティニアでは王政が敷かれており建造物などにはその名残が顕著に見られる。
【十七号遺跡】
首都ベインファノスに最も近い空の遺跡。大したものは見つかっていないが未来の研究者を育てるために学校に解放されている。年に数度の校外学習で生徒が利用する他は特に何もすることがないが、一応研究機関とそれを守る官憲が常駐している。
【デルヤーク】
首都ベインファノスの最寄りにあるロデスト地方最北の小さな町。交易街道の交差地点にあった一軒の宿場から発展し、現在では鉄道の分岐点にもなっている。
【メドネア】
ティグラル地方最大の町。国内で有数の空が見える地域にあることで天文都市を称する。一昔前は首都からの観光客が大挙していたが黙っていても来る客足にあぐらをかいて何もしていなかったため寂れてしまった。逆恨み以外のなにものでもないが救済措置を施さない中央政府に反感を持っている住民は少なくない。
【ビゼナル】
クラバ地方の僻地にある小さな町。付近には国内有数規模の遺跡があり、そこで働く公職を相手に細々と商売をして生計を立てている。シェザード・トレヴァンスの故郷。
【トコー】
港町。
【ベステス大陸】
世界第一位の面積を持つ東西に長い大陸。しかし大部分が峻険な山々と不毛な雪原で占められており人の入植はほとんど成されていない。一年のうちで僅かに三か月ほど雪解けがあるがその期間の雪原は蚊の大群が舞う底なしの湿地帯へと変貌しどちらにせよ開発は不可能。
【ファンタナーレ】
ベステスの居住可能地域。デオテネヴ連峰以南の平野部の呼称。
【ランペール】
トコー対岸の港町。
【フォーレ】
ファンタナーレにかつて存在していたグマラ族の王国。良質な鉱石が取れるため掘り進められた大窩窟が国となった。
【グマラ族】
かつて存在していた地底人の一種。広域では亜人に分類された。背が低く筋肉質で、皺だらけの暗色の肌は粘液に包まれている。男女ともに体毛がない。極端に大きい目は黒目がちで耳と鼻が小さい。手足が太く固い爪だけで地面を掘ることも出来る。世界一美しいとされるユグナ族が更に地中深くにもぐり代々過ごしたことで環境に適応した姿と一部では言われているが疑問視する声のほうが大きい。ロデスティニアの入植で滅びる。
【ユグナの里】
ファンタナーレ最東部に位置する小さな村。シュリ・ダニエラの故郷。
【ユグナ族】
世界一美しい種族として一部に熱狂的な信奉者がいる少数民族。身長が低く老若男女関係なく雪のように白い少女のような見た目をしている。地底人であるグマラ族や南方島嶼のイウダル族同様に不老の民族として知られ関連性を取り沙汰されることがあるが真実は不明。冬の間は地中で生活し、雪解けの僅かな期間のみ地上の村で狩猟を営み生活する。男は成人の儀式として十五歳になると冬に地上に出て狩りをする風習がある。華奢な体型に似合わない怪力を持つ。
【凍果ての大地】
いはてのだいち。ベステス大陸のユグナの里以東の居住不能地域をユグナ族はこう呼んでいる。文字通り一年のほとんどを雪と氷に閉ざされ、三か月ほどの僅かな夏季には底なし沼が乱立する湿地帯となる。
【リンドナル侵攻とは】
本編の六十年ほど前にロデスティニアの南、リンドナル共和国という小国で起こった内紛にロデスティニアが干渉した事件。
干渉の大義名分はリンドナルに取り残された自国民を救出に向かい、そこでリンドナル側から攻撃を受けてやむを得ず自衛したことを発端とするという強引なもの。
実際は時代錯誤の領地拡大を目論んだ当時の政権がリンドナルからの攻撃を自作自演したのではないかと言われており、兵士たちは民間の傭兵会社を偽装していた。
干渉はリンドナルの暫定政府・新政府軍双方からの訴えで発覚。
国際世論から批判を浴びる事となったロデスティニアはこれを軍部の暴走として遺憾を表明。同時に首謀者とされる陸軍大将が自宅にて拳銃自殺を遂げた。
ロデスティニア政府から切り捨てられた実行部隊の兵士たちは何も知らされない状況で孤立無援となり、密林に逃げ込んで応戦するも傷病や心神喪失により降伏。だが彼らは自分たちが国に梯子を外されたことだけは頑なに信じず連日の尋問にも決して口を割らなかったという。
内紛が収束しいよいよ兵士たちはリンドナルの法で裁かれるとなった時、リンドナルは敢えて彼らをロデスティニアに送還する決定を下した。
それはあくまでも潔白を貫くロデスティニアが根回しによって諸国を懐柔し批判の声をまとめあげてしまった事への仕返しだった。なお、この時期にロデスティニア国内では何故か物価が急上昇している。
【デリック老人たちの半生】
降伏し、過酷な捕虜期間を経て本国に返還されることになったリンドナル侵攻の特殊部隊は、ロデスティニアが受け入れに難色を示したことで長い間海上に留め置かれることになり狭い船室での生活で精神を病んでしまった者も多数いた。
その後、受け入れ体勢が整い国へ帰ることが出来たが、彼らの船が港に近づくとそこには出迎えの群衆が大声や旗、横断幕を持って溢れていた。
温かく迎えられていると思い感涙した兵士たちだったが、港に迫るにつれそれは自分たちを犯罪者と呼び罵詈雑言を飛ばず者たちだったと知る。
侵略者としての汚名を着た彼らは帰国後も様々な差別に会い、退役軍人の手当ても受けられずその殆どが天涯孤独の路上生活者となった。あるいは世を儚み自殺した。
首都の救貧院に入ったデリック元軍曹は、精神を病み引き取り手がいなくて同院に入居していたケルナー観測手への陰湿な虐めに我慢の限界を迎えケルナーを連れて退居した。
他の者も似たような境遇にあるのではと考えたデリックはケルナーと共に戦友を訪ねた。
ようやく見つけたのは山に逃げ込み半ば世捨て人となっていたファビオ投擲手だけだった。
三人は首都の貧民街に流れ着き、細々と暮らし始めた。
【スタン・バルドーの決起と現在】
本編の五十年ほど前、急激な物価上昇によりロデスティニア国内の景気が低迷し失業者が町に溢れた。
この失業者たちが各地で暴動を起こしロデスティニア史に残る大規模な騒動となった。
当時二十歳にもなっていなかったスタン・バルドーはノーマゲント地方の町に住む学生だったが、かつて南のウェードミット諸島で旗揚げし革命三剣士と呼ばれるようになったナイラ・バルドーの曾孫という事で嘆願され、これに応じて挙兵した。
英才教育の賜物と指揮官としての天賦の才を持ち合わせていたバルドーは各地の暴動を一気にまとめあげて時の人となった。
首都では彼に呼応した人々も立ち上がり、一時は首都機能が西の町に移されたほどであった。
だがいよいよ首都陥落となった時、勝利を確信した一揆軍は統制を失い私利私欲に走り悪行の限りを尽くし始めた。
するとバルドーはあっさりと降伏し自らを死刑にするよう要請した。
もともと一揆が成功しても責任を取って自刃するつもりだったと語るバルドーに世間の人々は無責任だと批判を浴びせたが、バルドーなき後の一機軍は瞬く間に鎮圧されてしまった。
その後すぐに処刑すれば良かったものの、バルドー自らが死刑を望んでいることや事後処理、罪状がまとまらないことが理由で求刑が伸びた。
するとまた人々は次第にバルドーを悲劇の英雄として扱うようになり信奉者が急増した。
バルドーを断罪することで神格化されることや弔い合戦が起こる事を懸念した政府は以後バルドーを無期限の懲役刑に処した。
バルドーは今もなお英雄として陰で囁かれているが、老体ということもあり政府も昔ほど彼を称える者を厳しく取り締まりはしなくなっている。