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物部の書評広場  作者: 物部がたり
あ行————
9/100

伊坂幸太郎 『死神の精度』

 文芸春秋(文春文庫) ジャンル:フィクション 初版発行: 2005年6月30日 著者: 伊坂幸太郎 映画化有り

 はい、今回は物語界のエンターテイナー伊坂幸太郎さんの、「死神の精度」を紹介します。タイトルだけ、見てストーリーの内容分かりますか?。

 分かるのは死神の物語、だとうというぐらいです。だけど、本当に読む前は死神の物語だとは思っていませんでした。私は最初、死神という殺し屋の小説かな、と思っていたのです。


 だけど、読んでみたら、本当に死神のお話でした。だって、このあらすじで死神の話だと思いますか?


【①CDショップに入りびたり②苗字が町や市の名前であり③受け答えが微妙にずれていて④素手で他人に触ろうとしない――そんな人物が身近に現れたら、死神かも知れません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。解説・沼野充義】


 文庫本のあらすじを引用させてもらいました。

 どうですか? このあらすじを読んで殺し屋の、お話だと思ったのは私だけでしょうか?。伊坂幸太郎さんと言えば、殺し屋シリーズで知られていますからね。「グラスホッパー」のイメージが強すぎて、この「死神の精度」も殺し屋の物語だと勝手に思っていました。


 多分、この作品のあらすじだけを読んで、殺し屋の物語をイメージしたのは私だけではない、と思うのですが?

 

 はい、それでは作品の紹介をしていきましょう。

 この、作品は六編からなっている、短編集です。物語の主人公は千葉、という名前の死神です。殺し屋じゃありませんよ。本当の人の魂を迎えに来る死神です。

 この物語では人の魂を迎えに来ると、言うよりかは人が生きるか、死ぬかを決めるのが、死神の仕事になっています。


 八日後に亡くなる人の元に死神が派遣されるのです。そうです! 死神は会社員みたいなものなんですよ。八日後に亡くなるのですから、実質的に調査をするのは七日間だけ。

 その、七日間で「可」(死ぬという事)か、見送り(延命するという事)かを決めるのです。

 生きるか死ぬかは死神のさじ加減で決められているんですね~。


 人間の生死を千葉はコイントスで決める、事もありました。


 ちゃんと、調査してくれた、上で「可」の判断をしてくれるなら、納得できるのですが、大抵の死神はまともな調査もせずに、「可」の判定をして、いるそうです。

 対象者の調査を怠けて、CDショップに死神たちは入りびたっているそうなのです。死神に会いたかったら、CDショップに行ってください。死神はCDショップ、天使は図書館に入りびたると、作中で語られています。

 

 この物語の主人公である、千葉はそんな怠け死神とは違って、ちゃんと調査した末に、判断をくだしてくれるので、ましな死神だと思います。

 死神、千葉の一人称で、物語は進められていきます。死神の人間に対する揶揄が、たま面白いんですよ。一人称なのに、物事を三人称のように客観的にとらえていて、伊坂幸太郎さんのセンスが存分に発揮されています。


 千葉は真剣に言っているつもりでも、人間からしたら少しずれているように見えて、面白いんです。


【死神の精度】【死神と藤田】【吹雪と死神】

【恋愛で死神】【旅路を死神】【死神対老女】


 の六編で構成されています。

 それでは短編の一話一話の紹介をできる、限りしていきます。多分すべてはできないので、四編か五編で勘弁してください。それでは始めます。


 短編集ですので、好きな話から読めばいいのですが、短編一話、一話に伏線が張られていて、最後の死神対老女で、一気に回収されます。

 だから、長編小説として、とらえてもあながち、間違いではありません。どこから語っても良いのですが、一編目から語っていきます。一編目は死神の精度ですね。死神の精度の登場人物は千葉と藤木一恵ふじきかずえ、そして、クレーマーです。


 千葉と藤木一恵という登場人物はまぁ、分かりますよね。しかし、クレーマーにツッコミを入れた、方がもしかしたらいるのではないでしょうか?


 しかし、死神の精度ではこのクレーマーが大きな、鍵を握っているのです。千葉が一恵に出会ったのは、雨の降る夕暮れでした。千葉が仕事をする時はいつも、雨か降っています。

 天気がいい日を見た事がないと、千葉は嘆いています……嘆いているのかな?。淡々とした、心理描写で描かれるので、本当のところは分かりません。


 一人称なのに、三人称みたいな描写があるんですもの。


 千葉が傘をたたむのに、傘についた水滴を払っていると、そこに一恵が通りかかって、水滴が一恵のスーツを汚してしまうんです。しかし、これは千葉が組んだ作戦でした。この事で千葉は一恵に接近する事ができたのです。

 それから、千葉は一恵から色々な話を聞きだします。一恵は大手電気メーカーの電話クレームの受付を担当として働いています。


 そう、クレーマーの意味が分かりましたね。そうです、一恵をいちいち指名して、このクレーマーがクレームの電話をかけてくるんですよ。テレビが壊れたから、直せだの、ラジカセが壊れたから、歌って見せろだの、意味の分からない、クレームをつけてくるのです。


 その事で一恵は精神的に参ってしまって、千葉の前で死にたい、とまで言うほどに参っています。

 死神の前で、死にたい、と言っているのが何とも滑稽なんですよ。


 そのクレーマーが今回のキーパーソンですから、最後にアッと言う落ちがあります。本当にこの『死神の精度』という、作品集は起承転結が良くできている、作品ばかりです。


 続いて、『死神と藤田』です。今回、千葉が担当することになったのは、裏社会の人物です。裏社会の人物は死神が担当することが多いいみたいです。詳しくは書きませんが、意味わかりますよね……?

 この作品では「弱気を助け強きをくじく」のが、裏社会の人間のやる事だと語られています。

 政府や、色々な物事で虐げられた、人々を救うのが裏社会の人間のやる事だと。


 だから昔は社会のはみ出し者や、悪がきを裏社会に預けて、性根を叩きなおしてもらう、という文化があったそうです。昔は案外、裏社会と民間の人々は繋がりが、あったんですね。

 店を出せば、その場所を治めている、裏社会の人間に場所代というものを払わなければ、ならなかったと聞きます。だから飲み屋とか、そう言う夜の仕事系のところはあれですよね……(これ以上は察してください)。


 今では場所代も早々取れなく、なっているから、下位の裏社会の人間はあの手、この手で上納金を集めなければなりません。最近の裏社会の人間はスーツを着て、ピシッと決めていると聞きますから、若い女性が引っかかって、風俗店で無理やり、働かされたりしていると聞きます。

 意外と真面目そうに見える人ほど、危険なんですよ。人は見た目で判断してはいけません。


 皆様も気を付けてください。


 話が反れました。その、「弱気を助け、強きをくじく」信念を持っているのが、藤田という、裏社会の人間です。それが、藤田の考えは古いという事で、仲間内では藤田の事をよく思っている人物は少ないのです。昔は「義理と人情」が裏社会の人間の鉄則、見たいな考え方でしたが、今はお金です。

 下の人間は上納金が毎月、三十万とか八十万とか治めないといけない、と調べたらそのような事を書いている記事がありました。


 あの神戸山口組が分裂したのも、上納金が引き金だったとか。上納金を払えなければ、指を詰めてけじめをつけるとか……。考えただけで恐ろしいですね(ブルブル)。


 また、話が脱線します。昔は任侠映画が流行っていたから、若い人たちは任侠映画に憧れて、裏社会に入る人がいたとか、いないとか……。


 で、藤田の考えは古いという事で、藤田は命を狙われているのです。阿久田という、藤田を慕う、部下が藤田を助けようと、その藤田の命を狙っている、裏社会アジトへ千葉と一緒に乗り込んで、さぁ、どうなる、阿久田と千葉の運命は(千葉は死神だから、死にはしない)、そして、藤田はどのような死を迎えるのか!

 義理と人情に生きた、昔の男と、新しい、時代を生きる、裏社会との紛争の結末はどちらが滅び、どちらが生き残るのか!


 ご自身でお確かめください。ごめんなさい、四編ぐらい紹介するつもりでしたが、死神と藤田で文字数を取られてしまいました。後の四編はご自身で、お確かめください。

 最後は今までに張っていた、伏線が綺麗に回収されて、完璧な終わり方でした。

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