浦沢直樹 漫画『PLUTO』
小学館 全八巻 ジャンル:SF:ドラマ 初版発行: 2004年9月30日 原作:手塚治虫 作者:浦沢直樹
皆様は手塚治虫の鉄腕アトム『地上最大のロボットの回』という話を知っているでしょうか? 私はこの作品と出会うまで、知らなかったです。
日本人なら誰しも知っているであろう、手塚治虫。漫画の神様と呼ばれ、様々な革新を漫画界に巻き起こしました。漫画を教養の域にまで押し上げたのが、手塚治虫なのです。
手塚治虫先生はそれだけではなく、虫プロというアニメ会社を造り、日本初のアニメ『鉄腕アトム』を生み出しました。
言うなれば、手塚治虫先生がいなければ、日本が世界に誇る文化『アニメ』が生まれなかったといっても過言ではありません。それを思えば、アニメ好きの私にとって、神様のような存在だと言えるのです。
それほどまでにすごい手塚治虫先生ですが、彼だって人間です。彼だって聖人君主ではありません。人間らしい感情を持っているのだから、嫉妬だってします。
手塚治虫先生は『サイボーグ009』や『仮面ライダー』、最も多くの作品を一人で書いた漫画化としてギネス認定されていることで知られる、石ノ森章太郎さんが当時連載されていた『ジュン』という漫画に、「あんなもの漫画じゃない」とファンとの手紙のやり取りの中で書いたと言われています。
その話が石ノ森章太郎さんの耳に入り、強いショックを受けたようで編集部に、「今すぐ打ち切りにしてくれ」といったのだとか。
しかし、その話を聞きつけた、手塚治虫先生は石ノ森章太郎さんの自宅に赴き、「自分でもなんであんなことをしたのかわかりません。本当に自分で自分が嫌になります。本当に申し訳ありませんでした」と謝罪されたそうですがね。
手塚治虫先生は負けず嫌いで嫉妬深いことでも有名だったのだとか。
諸星大二郎や水木しげるといったマンガ家たちの才能にも嫉妬し、大友克洋の絵を見たときには「これくらい僕にも描ける」と発言したという逸話があるくらいです。
『ジュン』に対しても、手塚治虫先生の中でそうした気持ちがあったのかもしれません。
そして、『鉄腕アトム』の人気が横山光輝さんの『鉄人28号』に負けてしまい、対抗して描かれたロボット同士のバトル物が『地上最大のロボットの回』だったのです。
けれど、教養書としても名高い手塚治虫先生ですから、ただのバトル物を描くはずがありません、メッセージ性の高い作品に仕上がっています(私は手塚治虫先生の地上最大のロボットの回は読んでいません)。
何が言いたいかって、手塚治虫先生の『地上最大のロボットの回』を読んでいなくても、十分楽しめる作品になっているってこと。アトムというキャラクターを知っているのであれば、十分に楽しめます。
前置きはこのくらいにして、浦沢直樹さんの『PLUTO』を紹介しましょうか。何と言っても、浦沢直樹さんと言えば、サスペンスですよ。「浦沢サスペンス」という言葉があるくらいですから。
ある日、モンブランという世界最高水準のロボットが、殺されたところから、物語がはじまります。どうして、モンブランは殺されてしまったのか。
普通に考えて、モンブランとは世界に七体ある、究極のロボットの一体なので、殺されるとは考えずらいのです。つまり、犯人はモンブランよりも強い、ロボットであることになります。
モンブランの事件と類似するように、頭に角のような物を突き立てられ、殺された死体が世界各地で上がるようになります。
どうして、犯人は頭に角を突きつける必要があるのか? その捜査に当たることになるのは、本作の主人公(アトムではないんですよ!)ゲジヒトという世界に七体造られた最高水準の刑事ロボットの一体なのです。
世界に七体造られた、究極のロボットというワードだけで面白そうじゃないですか! どうです、物語にはそういう凄いキャラクターの存在が必要不可欠ですよね。
鬼滅の刃の柱しかり、ワンピースの王下七武海や四皇しかり、BLEACHの護廷十三隊しかり、HUNTER×HUNTERの幻影旅団しかり、挙げれば切りがありませんが、面白い物語にはスゲーキャラクターが必要不可欠なのです。
私は色々な物語の強さランキング的な物を見るのが好きなんですよね(笑)。はい、関係ない話です。
で、このPLUTOにもすごいロボットが7体登場します。その一体がはじめに殺されてしまう、モンブランなのです。その他にも、
・ スイスのモンブラン
・ スコットランドのノーチラス2号
・ トルコのブランド
・ ギリシャのヘラクレス
・ オーストラリアのイプシロン
・ ドイツのゲジヒト
・ 日本のアトム
この計7体が、人類が英知を集結させて作り出した究極のロボットたちです。この中で、誰が一番強いのか? っていうお話です。
「ちょっと待って、強さを競わすだけの話じゃないッ!」
その通り、強さを競わすだけの話ではないのが、手塚治虫作品であり、浦沢直樹作品なのです。ストーリーとしても感動でき、浦沢さんお得意の伏線を潜ませ、極上のヒューマンドラマ? に仕上がっています。
人間とロボットは共存できるのか? 究極の人工知能とはなんなのか? 論じたいことはまだまだあるのですが、長くなるのでこの辺で終わりにしましょう。ありがとうございました。




