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物部の書評広場  作者: 物部がたり
ま行————
63/100

湊かなえ 『Nのために』 

 双葉社(双葉文庫) 【ミステリー・ヒューマンドラマ】 初版発行: 2010年1月29日 著者:湊かなえ ドラマ化有り

 今回はNのためにを紹介します。湊かなえ先生ですねー、はい。このNのためにはTBS系でドラマ化もされていますよ。小説を読むのが億劫という方はドラマを見るのもありですよ。


 タイトルのNのためにとは、登場人物たちの頭文字がみんなNなのです。だから、誰がNのためになることをしたのか、分らないようになっている。登場人物は六人でその人たちを中心に、語られる物語です。


 湊かなえさんは人間心理を書かせたら天下一品ですよねー。そう思いませんか? とにかく一人称が上手いんですよ。さすが、役になり切っているだけのことはあります。


 この作品はイヤミス(嫌なミステリー)と言うより、カナミス(悲しいミステリー)です。物語を簡単に説明すると、東京にある高級マンション「スカイローズガーデン」である日、二人のN野口貴弘と妻の奈央子が殺されます。


 その夫婦二人を殺したのは誰だ! という謎解きのようなお話。


 そしてそのマンションに居合わせた、主要登場人物たち、杉下(すぎした)希美(のぞみ)西崎(にしざき)真人(まさと)安藤(あんどう)(のぞみ)成瀬(なるせ)慎司(しんじ)。この四人の悲しいすれ違いの物語でもあります。


 杉下美希は幼い頃、の辛い思い出で出世欲が強くて、ご飯が冷蔵庫に入ってないと不安を感じてしまう性格です、この説明では意味わかりませんよねー、意味を知りたかったら読んでください。


 だけど、女性としては最高に良い女の子です。料理も得意で大家のおじいさん(美希たちが住む野ばら荘の大家)にも優しいし、面倒見もいい。理想の女の子といっても、過言はありません。


 趣味が将棋で、将棋をきっかけに野口夫婦と親しくなります。しかし、美希にはある思惑があったのです。 あー、美希ちゃんには幸せになって欲しかったと本当に思います。


 この作品の大きなテーマは「罪の共有」です。イエスは言いました「隣人を愛せよ」と、つまりこの四人は自分以外の隣人を愛したあまり、すれ違い救われなかったのです。


 私は「隣人を愛せよ」が悪いと言っているのではないです、ただ、隣人を愛しすぎたからこそ、悲しい結末になったのだと思います。


 あー、なんて悲しんでしょう、泣きまではしませんでしたけど、ジーンとするものを感じました。


 第一章の終わりに、一人のNが回想するシーンがあって、その人物は自寿命があとすこししかなくて、誰かに自分の思いを伝えておきたかったと意味深なことをいって二章に入るのです。そのNは伝えて置かなかったことを後悔しているんですよね(涙)。


 物語の終わりに、その意味が明かされます。読み終えたら、そのシーンに戻って読み直しください、誰か意味深ことをいったか分かりますから。


 そして西崎真人が書いた、小説もこの物語には大きく関わってきます。西崎にも辛い過去があり、西崎は自分と小説の中の動物を重ねて純文学を書いています。


 それがまた、悲しい愛の物語で、ページをめくる手が止まりませんでした。西崎は純文学に異常なまでのこだわりを持った、イケメンです、なぜ純文学にこだわるのでしょうか?。


 さすがは湊かなえ先生というところでしょう、湊かなえ先生は一人称を書くのが本当に上手です。一人称ほど人間の心理を書くのに向いている、書き方はありませんからねー。


 少し歪んだ四人の思いやりをどうぞ、ご自身でお確かめください。私は湊かなえ作品の中で一、二を争うぐらい好きな作品です。

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