表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
物部の書評広場  作者: 物部がたり
ま行————
62/100

湊かなえ 『花の鎖』

 文藝春秋(文春文庫) 【ミステリー・ヒューマンドラマ】 初版発行: 2011年3月10日 著者:湊かなえ ドラマ化有り

 今回は湊かなえさんの『花の鎖』を紹介します。この作品はイヤミス(嫌なミステリー)ではないので、後味が悪い作品が苦手な方にもオススメできます。


 そして、この作品は湊かなえさんの処女作『告白』を超える思いで書いた作品だそうです。最初に書いた作品がいきなり、ベストセラーになったのですから、湊さんのプレシャーは相当なものだったと思います。


 自分の作品を超えたくても、超えられない。それだけ、『告白』は大きな存在なのでしょうね。作中でもある人物が自分の作品を超えられない事に悩んでいた、という描写がありました。


 湊かなえさんはその人物と自分を重ね合わせて、書いていたのではないかと、私は思うのです。


 前置きが長くなってもしょうがないので、それではあらすじを紹介しましょうか。


【両親を亡くし仕事も失った矢先に祖母がガンで入院した梨花。職場結婚したが子供ができず悩む美雪。水彩画の講師をしつつ和菓子屋でバイトする紗月。花の記憶が3人の女性を繋いだ時、見えてくる衝撃の事実。そして彼女たちの人生に影を落とす謎の男「K」の正体とは。驚きのラストが胸を打つ、感動の傑作ミステリ。】


 文庫本のあらすじを引用させてもらいました。まあ、簡単に言えば、謎の人物Kをめぐる物語ですね。え、Kとは誰かって、教えられないですけど、作中ではあしながおじさんに例えられています。

 

 なぜあしながおじさんに例えられているかというと、三人の主人公のうちの一人梨花(りか)に経済的支援を申し出てくれているからですね。


 まあ、梨花が小さい時からKから何万円もする花束が毎年送られてきているのですが。


 Kとは何者なのか、と梨花は両親に聞きました。梨花の両親や祖母はそのKの正体を知っている様な意味深な事をいうだけで答えてくれません。


 母親は「くじ引きに当たった様なものよ」といいますし、祖母は何も答えてくれません。


 感の良い人だったら、物語の中間ぐらいで、謎の真相に気付くと思います。だけど、私は最終近くになるまで全然気づきませんでした。


 巧妙に作られた、ストーリー、伏線。それでは三人の主人公を簡単に紹介していきましょう。


 この三人の女性のストーリーは『花』『雪』『月』の順番で語られます。『花』の主人公は今名前が出てきた梨花です。梨花は自分が勤める、英会話スクールがある事情により倒産し無職になります。


 そして、不幸は続くもので、梨花の祖母が癌である事が分かるのです。そして、祖母は自分の全財産を使ってでもオークションで欲しいものがある、と打ち明けます。


 おばあちゃん子の梨花はどうしても祖母の願いをかなえてあげたくて、オークションの商品を買ってあげたい、と思うのです。


 だけど、祖母の手術費がかさむのにオークションで高価な買い物などできるはずがありません。そして、登場するのが謎の人物Kなのです。梨花はKに手紙を書きます。手紙の内容は当然、お金を借りる事だったのです。


 続いて『雪の主人公は美雪という女性です。美雪は旦那とラブラブの一見幸せに見える女性です。いや、幸せなのでしょう、ある事を除いては……そのある事とは子供を授からない事です。


 美雪はその事で精神的に参っているんですよ。旦那とは職場で知り合い結婚します。和弥という名前です。和弥は建築師をしており、ある事情から、建築の会社を立ち上げるのですが……。


 最後に『月』の主人公は紗月といいます。紗月はある絵がある山岳小説の表紙になった事でイラストレーターをしています。と、言っても、イラストレーターだけでは食べていけず絵の才能を生かし、絵の先生をしています。


 紗月の教える絵は花の絵です。花の絵専門の画家ですね。紗月はある事がきっかけで山岳部に入り、山に登り始めるのです。そして、その山岳部で紗月はお父さんに出会います。


 え? 紗月にはお父さんがいなかったんですよ。なぜ、お父さんがいないのかは作中に大きく関わる謎なのです。それでは山岳部で知り合ったお父さんとは? 誰の事でしょうか。


 そうです、これは群像劇です。群像劇の面白いところはどう主人公たちがつながってくるのか? というところですね。


 私も、この女性たちはどうつながってくるのか、ワクワクしながら読んでいました!。だって、何の接点もない様な感じなんですよ。このままじゃあ、主人公たちはつながらないだろう、と思いましたもの。


 だけど、そんな心配はいりませんでした。最初から最後まで計算し尽くされた、ストーリー構成です。さすが、湊かなえさんですね。


 そして、物語の大きなカギを握るのが、ある、和菓子屋さんです。この和菓子屋さんが三人の物語をつなげていくんですよねー。どうつながってくるのかは、ご自身でお確かめください。


 Kの正体とは?。お父さんの正体とは?。祖母が全財産をはたいてまで、欲しいものとは?。

 すべての謎がつながる時、感動の結末があなたを待っています!。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ