リザ・テツナー 『黒い兄弟』
福武書店(福武文庫) 『上下巻』 初版発行: 1941年 著者:リザ・テツナー 訳者:酒寄進一
世界名作劇場にてアニメ化あり
はい! 今回はリザ・テツナーの「黒い兄弟」を紹介します。まず、初めに、私は「黒い兄弟」を読んでいません。ん? 何か声が聞こえる……。
「読んでいないのに、何で紹介してるんだよ?」
と、いう声が聞こえる。一応、キーワードにはアニメのタグを付けているので、今日はアニメ紹介です。読んでいませんが、ちゃんと原作とアニメの違いをできる限り、調べて、紹介するので、そこは許してください。
まず、「黒い兄弟」とは第21作目に、世界名作劇場にてアニメ化された、作品です。
世界名作劇場は主人公の名前をタイトルに、付ける、というお決まりみたいなものがあるらしく、世界名作劇場では、「ロミオの青い空」という名前でアニメ化されています。
そう、隠れた名作と名高い、あの「ロミオの青い空」です。原作の方はロミオという名前ではなく、ジョルジョ、という名前だと聞きます。
どうして、「ジョルジョの青い空」ではなく「ロミオの青い空」になったのかは分かりませんが、色々な事情があったのでしょう。
まぁ、そんな事はどうでもいい事です。
「ロミオの青い空」の原作、「黒い兄弟」は【ドイツ出身でナチス時代にスイスに亡命したリザ・テツナーの著作名、またそこに登場する煙突掃除夫の少年達の結社名。19世紀のスイス・イタリアを舞台に少年売買や少年労働の苛酷さを描く。 主人公ジョルジョは、スイスのソノーニョ村から貧しさのため煙突掃除夫としてミラノに売られる。】
とウイキペディアに書いていました。リザ・テツナーはドイツ東部の医者の家に生まれました。
1927年(33歳)時に、ヒトラーがドイツ首相に就任し、ナチスがドイツで政権を獲得します。ナチスがやった事はユダヤ人大量虐殺だけではなく、ナチス・ドイツの焚書もしてますよね。
独裁者になると、焚書をしたがるんですよ。自分の政党の考えに合わない、書物を燃やすのです。秦の始皇帝は儒教の書物を燃やし、儒者を生き埋めにしました。
そんなことしたら、当然庶民の不満はたまり、秦をつぶせと言う思想が高まり、秦は滅亡するのですから。
強引な変革は駄目だという事です。人間の歴史は繰り返されますね~。どれだけ、科学文明が進歩しようと、人間の本質は変わらないものです(呆れ)。
ドイツもナチズム思想に合わない書物は燃やされて、本を出版する事も禁止されるのです。丁度、リザ・テツナーが活躍していたのは、ナチスによる、焚書が行われていた時代です。
ドイツではこれ以上、本を書けないと思った、リザ・テツナーはスイスに亡命する決意をするのです。
1941年(47歳)時に、スイスに亡命しました。そんな壮絶な亡命の末に書いたのが、「黒い兄弟」なのです。リザ・テツナーはその他にも、『自由への長い旅』『赤毛のゾラ』なども、この年に出版しています。
あ、ちなみにナチスの焚書時代を知りたい方は、ナチスの焚書をテーマに扱った、マークース・ズーサックのベストセラー小説『本泥棒』を映画化した、「やさしい本泥棒」という映画をお勧めします。
ナチスの焚書の話を、少女の成長と共に、追体験できる作品になっています。
一冊の本で救われる、命もあるんですね(涙)。「やさしい本泥棒」という、タイトルの意味とは?
話が反れました。
「ロミオの青い空」を紹介していきます。この、「ロミオの青い空」とは、煙突掃除夫の少年たちを扱った作品です。
煙突掃除夫とは名前の通り、煙突を掃除する人の事です。煤とか、鳥の巣とか、その他色々で、煙突って結構、詰まってしまうんですよ。
煙突の中は狭いから、子供じゃないと中に入って掃除ができないのです。だから、毎年、子供たちが、煙突掃除夫として、売られているそうです。
その話を初めて知った時は結構、衝撃を受けました。日本を含む、アジア圏では、暖炉なんてありませんから、同然、煙突なんてありません。
世界にはそんな辛い仕事がある事をこの作品で初めて知りました。知れば、知るほど人間の歴史は残虐です。
貧しさのあまり、親に売られ、煙突掃除夫として、誇り高く生きていく少年たち。
原作は少年売買や労働の苛酷さを中心にストーリーが展開されていくそうですが、世界名作劇場の
「ロミオの青い空」は少年たちの生きる様と友情に描写の重点が置かれているそうです。
だから、暗い話が苦手な方はアニメをオススメします。
まぁ、確かに、少年少女が観る物語ですから、あんまり、過酷な労働や、虐待を描いたら、クレームが出ますよね(笑)。トラウマ物です。
ちょっと、過激な描写を入れてもいいから、大人のために世界名作劇場を作って欲しい。世界には大人を主人公にした、物語が沢山あるからです。
世界名作劇場は13歳から14歳ぐらいの、少年少女が、主人公の作品が多いいのです。
それはなぜか? それは視聴者年齢が、大体少年少女だからです。当たり前ですよね。世界名作劇場の主人公が、おっさんだったら、誰も観る気はしません。
だけど、世界にはおっさんを主人公にした、名作がいっぱいあります。だから、視聴者年齢を引き上げて、大人のための世界名作劇場みたいなのを作ってもらいたい、と思う今日この頃。
この物語の主人公ロミオ(原作はジョルジョ)はトウモロコシ畑を営む、農家の家の子供です。実は、ロミオは捨て子で、ロベルトという男がロミオを拾うのです。
ロベルトはロミオを実の子のように育て、家族の一員として、接します。
しかし、ロミオが11歳の時に皆から、死神と恐れられる、人買いルイニがロミオの村に現れます。
ルイニはロミオに目を付け、ロベルトにロミオを売るように、迫ります。しかし、ロベルトは頑として、ロミオを売りわたす気はないと、意志を示しますが……ある事件が起きて、ロベルトの気が変わってしまうのです。
その事件とは、トウモロコシ畑が燃やされてしまうというものです。
雨が降らず、カラカラに乾いた、トウモロコシの葉は良く燃える、良く燃える。その他にも色々ありトウモロコシ畑を失った、ロベルトはロミオをルイニに引き渡すか、渡さないかで、迷うのです。
それでまた、色々あり、ロミオを売らない、事を心に決めた、ロベルトですが、ロベルトが病に倒れた事で、事態は一転してしまうのです。
ロミオは大好きな、家族のために、自分から死神ルイニと交渉して、ミラノで一年間煙突掃除夫として働く事を契約するのでした。
まさに、自己犠牲の愛です。
家族はなんて馬鹿な事をしたのと、責めますが、契約書にサインしてしまったからには行かなければなりません。ミラノに行く道中永遠の親友、アルフレドと出会います。
そう、知る人ぞ知る、みんなのリーダー、アルフレドです!。先の話ですが、アルフレドにはある秘密があるのです。まぁ、見てくれから、一般人ではない事が分かると思います。
ミラノに向かう、道中で後に黒い兄弟という同盟を結成することになる、沢山の仲間たちと出会うのです。ミラノに向かう道中から、波乱万丈ですよ。
死神ルイニのアジトみたいなところで、閉じ込められたり、嵐に遭い、乗っていた、船が沈んでみんなは離れ離れになったりします。
なんやかんやあって、ようやく、ミラノに着いてからも大変な生活が続きます。買われた先で、ご飯をもらえなかったり、悪質な嫌がらせにあったり。
だけど、ロミオは持ち前の明るさで乗り越えるのです。私なら初日から、心が折れて、不のオーラを放っているでしょね。いや、絶対不のオーラ全開です。断言します。
そんな、不のオーラ全開の子供の前に天使なんて、現れる訳ありませんよね(笑)。物語を見た事がある人は天使の意味を分かっていただけると思います。
そんな、生活にも慣れて来た頃、ロミオはかつて離れ離れになった、仲間たちと再会するのです。別々に引き離された、アルフレドとも後に再開し、煙突掃除夫の少年(少女)たちで、「黒い兄弟」という同盟を作る事になります。
ミラノの街には狼団というもう一組の、悪ガキ集団がいて、「黒い兄弟」と「狼団」は対立していくことになります。
どうでしたか? 隠れた名作アニメと名高いんですよ。原作の方はアニメとストーリーが違ってくる見たいです。アニメの感動を味わいたくて、原作を読むと少しガッカリした、という感想をネットで見ました。
少年たちの友情や成長をメインに観たい方は、アニメ版を、歴史の闇、「黒い兄弟」という作品を深く知りたい方は原作の方を読んでください。
絵柄が古くて、観る気がしないという方、安心してください。二、三話見れば、絵柄なんて気にならなくなります。ジブリだって、今現在でも見られているじゃないですか。それと同じです。
名作は絵柄ではない、内容なのです。それに、ロミオの青い空の絵柄は綺麗ですよ。
優しい作画で、これぞ世界名作劇場という感じに仕上がっています。それに最後はハッピーエンドですから、安心して観てください。
ロミオと仲間たちの友情の物語、知る人ぞ知る名作、あなたの考え方が変わる作品になるかも知れませんね。




