貴志祐介 『雀蜂』
角川ホラー文庫 ジャンル: ミステリホラー・フィクション 初版発行: 2013年10月 著者: 貴志 祐介
はい、積読本をまた一冊消化したので紹介、というよりかは感想を書きます。最近では書評というよりかは、感想という感じで書いているので、このエッセイのタイトルの、『書評』を、『感想』に変えた方がいいのか悩んでいる今日このごろです。
他の方の書評を読んでいると、立派な書評だな~とか、こういうのを本当の書評って言うんだな~、って感心させられるんですよね。果たして私の紹介は書評と呼べるのか? たんなる感想ではないのか? と思っているのですがこのままのタイトルで続けていくべきか、『書評』を消して、『感想』にすべきか? どう思われますか?
ともう一つ、以前紹介した貴志祐介さんの、『青の炎』←を→『青い炎』と誤って認識していました……。タイトルを間違えるなど、あってはならない誤りでした……。貴志祐介さんのファンの方々、本当に申し訳ありませんでした。
先入観で、『青い炎』だと思い込んでいたんですよね。人間は先入観をもっちゃうと滅茶苦茶な文章でも、脳が勝手に補強変換して読めてしまうという凄い能力を持っているものですから、私の場合もそうでした。
と、まあ私情はこのくらいにして、貴志祐介さんの『雀蜂』を紹介します。この、『雀蜂』は角川ホラー文庫20周年記念、書き下ろし傑作ホラー! と銘打って書かれた、角川ホラー文庫のために書き下ろされた作品なのだそうです。
傑作ホラー? とまでは呼べないかな~……という印象でしたね。だけど決して面白くなかったのではないですよ! 面白かったです。だけど怖くなかっただけで。スズメバチに一度刺されたことがある方が読んだら、また違った恐怖と感想になると思います。が、私はスズメバチに刺されたことがないので、主人公アンザイがやっていることがとても滑稽に見えちゃったんですよね(笑)。
登場人物はすごく少ないです。せいぜい6人くらい。ほとんどがアンザイの一人語りで進む一人称。一人語りでここまで場面を持たせられるのは、さすがプロって思いました。大抵の物語は人物同士の会話でストーリーを進めないと、手詰まっちゃいますからね。
で、アンザイは妻であり絵本作家の安斎夢子と八ヶ岳にある山荘に遊びに来ていたのです。そしてアンザイは山荘で目覚めると、夢子は消えておりスズメバチ達が山荘の中を飛び回っているという状況になっています。
そこからアンザイとスズメバチ達の壮絶な戦いが幕を開けるのであった、というお話。どうしてそんな状況になっているのか? アンザイは考えました。そして思い至ります。夢子が高校時代の同級生、三沢雅弘と共犯で自分を殺そうとしていることに。
アンザイはスズメバチ達と知略を駆使して戦います。一度刺されれば死ぬかもしれないのだから必死になるのは分かります。ちゃんと分かりますよ。スズメバチ怖いですからね……。私だってもしスズメバチを見つけたら、戦おうなんて考えずにゆっくり逃げます。まず近寄りません。
だけどアンザイには戦わなければならないわけがあるのです。そう雪で閉ざされた山荘だからです。
が、代の大人が小さな蜂とバドミントンのラケットやフルフェイスマスクや厚着をして戦っている姿を想像してみてください。そうです面白いんですよ。滑稽なんですよね。
まるで、『ドン・キホーテ』のラ・マンチャが風車に戦いを挑んでいるシーンのように滑稽なんですよ。B級パニック映画みたいな物語です。「最後明らかになる驚愕の真実。ラスト25ページのどんでん返しは、まさに予測不能!」とあらすじに書かれていたのですが、たしかに予測不能でした。
だけど伏線はちゃんと張っていたので、滅茶苦茶だとは思わなかったです。それより上手いな~と感心してしまいました。はい、というわけで、どうして夢子はスズメバチを使いアンザイを殺そうとしているのか? アンザイはスズメバチの巣窟から生還することができるのか? いま、人間VSスズメバチの英知をかけた戦いの火ぶたが落とされる!




