安部公房 『砂の女』
新潮社(新潮文庫) 【純文学】 初版発行: 1962年6月8日 著者:安部公房 挿絵: 香月泰男 映画化有り
今回は日本文学の最高傑作の一つと呼び声の高い、安部公房の『砂の女』を紹介します。数々解釈はあると思いますが、私なりの紹介をしていきますのでその辺は大目に見てください。
名作ってタイトルの名前は知っているけど、話の内容は知らないって方の方が多いいと思うのですよ。だって昔の純文学って読みずらいじゃないですか。確かに文学的表現は読みずらいですが、ストーリーは面白いんですよ。
だから、現代まで残っているのですがね。ストーリーが面白くなかったら読まれませんからね(笑)。
まあ、この小説は何から何まで、凄い! 状況描写、背景描写、心理描写が一級品なんですよ。まるで、自分が体験しているような艶めかしい描写の数々。安部公房の感性ですねー。
それでは紹介していきます。
作者は安部公房ですね。プロフィールはこちら
【(1924-1993)東京生れ。東京大学医学部卒。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。1973年より演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、1992(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。】
今回はウイキペディアではなく、新潮社の著者プロフィールから引用させてもらいました。こっちの方が単組にまとまってていいですねー。世界でも大絶賛です。
確か、前に『陸海空こんな時間に地球制服するなんて』、というバラエティー番組を見たのですが、その時に世界で知られている日本人ランキングをやっていたんですよ。そのベストテンの中に安部公房が入ってました。
ちなみに、一位は宮崎駿や安倍首相、イチロウ選手、村上春樹、鳥山明、などなど、色んなジャンルに入っていました。そんな中に安部公房は入っているなんて意外ですよね(驚き)。
私が見たジャンルは世界で知られている、日本の小説家ベストテンみたいな、ジャンルでした。どうでも良い話ですね。それでは本題に戻っていきましょう!
私が思う安部公房さんの作品の特徴はとにかく、描写が凄い、ということです。異様な普通ならまずありえない、話なのにリアリティーが半端ない!
この砂の女も怖いぐらいに描写がリアルです、そして話に引き込まれる! 性描写を書かせたら、安部公房の右に出る人はいない、と私は思います。
それでは簡単なストーリー紹介をしていきましょう。昆虫採集に来た男仁木順平を主人公にして、物語は始まります。どこに昆虫採集に来たかと言うと、砂漠みたいなところにですね。
イメージを植え付けるのはよくないかもしれませんが、私は鳥取砂丘を想像して読んでいました(笑)。そして、順平は昆虫採集をしている内にある、集落を見つけます。
読んだのはもう何年も前なのでうろ覚えですが、確か道に迷ったんだったかな? で、順平はその村にある縄梯子を下りた家に一晩泊めてもらうことにしました。
おかしな話ですよねー。何で家に行くのに梯子を下りないといけないの! と思うでしょ、だけど描写がリアルなので読んでいる時は全然気になりませんでした。縄梯子を下りたら最後……。後から、思い返してみて、あれ? 言われてみれば変だな、と思うぐらいです。
その家には女が一人だけいて、色々あって砂掻きをしている、そうなのです。何で砂掻きをするかと言えば、なんでも砂がづってきて家が埋もれるからなのだとか。
ツッコミどころ、満載ですが読んでいる時は気付かない、「へぇー、そりゃあ、大変だー」って具合にね。安部公房の文章力なせる業です。
そして、次の日順平は自分の家に帰るため、縄梯子を下してくれる様に頼みますが、村の人達は下ろしてくれない。そうです、閉じ込められました……。その日から女との奇妙な同居生活が始まるのだった。
雰囲気的にはフランツ・カフカの『変身』的な作品だと私は思いました。いや、雰囲気が本当に変身に似ている。変身をモデルにしているのか?
順平は毎日砂掻きをさせられるんですよ。搔いても掻いても、毎日砂は積もる、積もる、いつまで経っても終わりません。それが死ぬまで続きます。絶望的ですよね(苦笑)。
仕舞に順平はいら立ってきて、色々な方法で丘から脱出しようとするのです、がどれもこれも失敗続き。順平はプリズンブレイカーじゃないのですねー。「え? 監獄なの?」、いいえ、蟻地獄です。
女のとにかく、質素な生活が心を打ちます。蟻地獄に住んでいますから、外出もできず、本当に質素に暮らしています。順平が来る前も一人でこんな生活を続けていた、と思うとなんとけなげなんだと、本気で思います。
唯一の贅沢と言えば、貯めたお金でラジオを買う事ぐらい。ラジオを買える日を楽しみにしてるんですねー。けなげすぎるでしょう!
はい、そんな、密閉された空間ですから、当然順平と女には肉体関係が生まれます。
こんな所でしょうね。ジャンル的には何に当たるのでしょうか? まあ、純文学だとは思いますが、ホラー要素も強い気がします。そして、考えさせられる、作品でもあります。
淡々とした紹介になってしまいましたが、私が語れるのはこれぐらいでしょう。順平は村から脱出できるのか? そして、順平が選んだ決断とは? 最後に予想を裏切る結末があなたを待っています! ありがとうございました。