乙一 『ZOO1』
集英社 (集英社文庫) 全・1 2 ジャンル・分類不能 著者・乙一 陽だまりの詩映画化あり
この短編集本当に凄いッ!
やっぱり乙一さんは短編がべらぼうに上手い。
この短編集には五編が収録されているのですが、どれも傑作と言ってまず間違いないと思います。あらすじにも傑作短編集と書いていましたから、間違いありません。こんなに衝撃を受けた短編集は初めて読みました。
すべて紹介すると長くなるので、三編を簡単に紹介します。今回は無駄話を省いて、ストーリーに焦点を当てましょう。
まず『カザリとヨーコ』これは読んでいてめちゃ辛かった。虐待の話なんですよ。ヨーコという少女は母親から、酷い虐待を受けているのです……。
タイトルにもなっているカザリとヨーコは双子なのですが、姉であるヨーコにだけ母は酷い虐待をしているんです……。双子の妹である、カザリは溺愛です。読んでいて、何度心が煮えくり返ったことか。
どうして母親がヨーコを虐待するのか? 明確に記されているわけではありませんが、同族嫌悪という奴です。母は自分に似ているのだとヨーコはいうのです。
外では暗く、家ではヨーコに横暴を働く。自分に似ているヨーコが許せないのでしょう。私にはその心理が理解できません。けれど最後は凄い衝撃的でした。
本当に乙一さんは上手いんだよなぁ~。起承転結の結が本当に上手い。話をまとめるのって本当に難しいですからね。はじまりは面白いけど、終わりに近づくと勢いが落ちる作品数知れずです。
それをいえば全編衝撃的なのですが、このカザリとヨーコはこの短編集で一二を争うくらいに衝撃的でした。だって、最後――。
はい、次ぎ『SEVEN ROOMS』です。これが私の中にトラウマを植え付けました……。こんな怖い小説、滅多にありませんよ……。
内容を簡単に言うと、順番に女性たちが殺されていくのです……。女性たちが誘拐され、ある部屋に閉じ込められるのですよ。
この物語の主人公は“ぼく„という男の子です。そして、姉。姉と弟はある日誘拐されてしまい、七つの部屋に監禁されます。
どうして、こんなことになってしまったのか。いつ出られるのか?
姉と弟は恐怖に怯えます。
監禁されて二日目? だったかなに、トイレとして使っていた溝があって、その溝を通れば外に出られやしないか、とクラスの中でも体の小さかった弟に溝を通って見てくるように姉が言うのです。
もし、外に出られれば助けを呼べるでしょ。
渋々弟は溝を通って出口を探すのです。けれど、その溝は出口になど繋がっていなかった。その溝はとなりの部屋につながっていたのですよ。その部屋は計七部屋あって、一部屋ずつに誘拐されてきた女性が監禁されているのです。
そのことを姉に話し、そして翌日溝を通り、またとなりの部屋を回るのです。けれど、昨日までいた女性がいた部屋は、翌日になるといなくなっているんですね。
そして、兄妹は七つの部屋のルールに気付きます。言っちゃうと、曜日ごとに月水金ってぐわいに、部屋が振り分けられていて、順番に殺されてしまうのです……。
な~だそうか、だったら読まなくていいや、と思った方。損してますよ。最後がとんでもないですから! 本当にとんでもない! トラウマレベル。トラウマが嫌なら、読まない方がいいかもしれません。
読んで思いました。人間が家畜にしていることと同じことを、この物語では人間に行っているんだな、って……。動物たちからしたら、人間はああ映っていることでしょう……。
最後に紹介するのは『陽だまりの詩』です。
これはあるアンドロイドの少女が、自分を作った男と触れ合う中で、大切なことに気付いていく、という白乙一作品になっています。男は自分が死んだ後に、叔父のとなりの墓に埋めてもらうために少女を作ったんですね。
どうして? そんなことのためにアンドロイドを作ったの。そんなん作る必要ないじゃん。と思うでしょ。違うんですよ。それにはちゃんと理由があるのです。
実はこの話、人類が滅んだあとの話なんですね。世界には誰もいないのです。だから、自分を埋めてくれる人もいないわけですね。というわけで、アンドロイドを作ったのです。
何を隠そう、私にドンピシャの物語でした。とても美しい物語です。実はですね。私も終末物を書いてみたいと思っていたところだったんです。
そう思っていたさなか、出会ったのがこの作品でした。私が表現したかった、世界観です。とても美しい世界なんですよ。いつか、それほど遠くないいつか、私は終末物を書くかもしれません、し書かないかもしれません。
やる気が湧いたら書きます。こうご期待! とてもインスパイアされた作品が『陽だまりの詩』でした。この短編集は本当にオススメですよ!




