上橋菜穂子 『獣の奏者<闘蛇編><王獣編>』
講談社(講談社文庫) 【ファンタジー】 発行期間:2006年11月21日 - 2009年8月11日 著者:上橋菜穂子 漫画化有り アニメ化有り
今回は上橋菜穂子が創り出した、傑作大河ファンタジー『獣の奏者』シリーズを前編、後編に分けて紹介します。作品は読んだことなくても名前を聞いたことがある方も多いいのではないでしょうか?。
NHKでアニメにもなってるし、漫画にもなっている、数々のメディアで取り上げられた、作品ですねー。それと、国際アンデルセン賞を受賞している作品なのだとか。この書評を書くにあたって、調べてみたら、国際アンデルセン賞って凄い賞なのですね。児童文学のノーベル文学賞だと言われています。
上橋菜穂子さん自身はこの『獣の奏者』を児童文学だとは思っていないそうです。まあ、確かに、政治的やり取りや、ちょっと残酷な描写があるので、そう言われるとうなずけますね。
この獣の奏者はとにかく、主人公のエリンが苦労するお話です。親を殺されて、里を離れて、蜂飼いに育てられる。そして、ある学堂である獣に出会い、国を揺るがす政治に巻き込まれていく。どうですか? 波乱万丈でしょ、これを波乱万丈じゃない、と言う方はいないでしょう。
上橋菜穂子さんの作品に登場する、女性は色んな意味で強い人が多いいですよねー。 精霊の守り人のバルサであったり、この獣の奏者のエリンであったり。
上橋菜穂子さんと言えば、『獣の奏者』の他にも、今言ったバルサを主人公にした『守り人』シリーズ、とか『鹿の王』などがあります。あと、エッセイも書いています。どれもこれも、壮大なファンタジー小説です。
上橋菜穂子さん作品はとにかく、自然描写が美しい、これだけでも読む価値があります。芸術性が高いので、純文学でも通用します。本当に美しい描写なんですよ。まるで、生きているかのように自然が動きます。川の音や光のきらめき、匂いまでも感じる描写です。
そして、上橋菜穂子さんのファンタジーは壮大、その一言に尽きますね。魔法バトルとか派手さはありませんが、読むものを魅了する描写であったり、ストーリー構成が上手い作家さんです。
細かく作りこまれた、世界観、ストーリー、キャラクター、一流のファンタジー小説です。そして何よりも、歴史です。細かく作りこまれた、神話や歴史が物語の本官を流れています、正に大河の様にです。
それに、上橋菜穂子さんはオーストラリアの先住民アボリジニを研究されているそうです。民俗学というのでしょうか? の大学教授です。経歴からして凄いですよねー。
『守り人』シリーズや『獣の奏者』は世界でも高い評価を受けている作品です。それだけでも、読んでみようと思いませんか?。私はミーハーだから、人気がある作品は一通り読みます。人気になるには人気になる、訳がありますからね。
それでは簡単なストーリー紹介をしていきましょう。
この作品はファンタジーですが、魔法は登場しません。登場するのは闘蛇と王獣という、けた違いの力を持つ獣です。闘蛇もけた違いに強いですが、王獣はそれ以上に強いです。
どれだけ、王獣が強いかって? そりゃあ、百倍強いです。何だよ、それじゃあ、闘蛇と王獣、勝負になんねーじゃん。御もっとも、闘蛇と王獣では作中でも勝負になっていません。
「そんなに強い奴いっと、オラ、ワクワクすっぞー!」ですね……悟空並みに、単純ですいません。
だけど、単純なおかげで、この作品と出会えたのだから、そんなに悪い事ではありませんね!。闘蛇と王獣に隠された、災いの神話とは?。
ストーリー紹介するっていって、全然紹介してないですね、今から本格的に始めます。主人公エリンは闘蛇部隊がいる村で生まれます。そうなんです、闘蛇って生物兵器として使われているのです。
いつの時代も人間ッて生き物は……。
その村の場所はいまいち説明できませんが、大公領というところだそうです。で、その村で獣ノ医術師をしているのが、エリンのお母さんソヨンです。
ソヨンは霧の民と呼ばれる、民族です。上橋菜穂子さんの作品には色んな民族が登場しますよね。そして、専門用語が多いい、それがまた上橋作品に良い雰囲気を出しているのです。
ある日、闘蛇の「牙」たちが死んでしまう、という事件が起こり、その責任をソヨンが取ることに……そして、闘蛇に生きたまま喰わせるという残酷方法で殺されてしまいます。
エリンは母を助けようとするのですが、助けられず、目の前で母の死を目撃することになるのです……。
衝撃的ですよね!。進撃の巨人にも、エレンのお母さんが巨人に食われる、というシーンがありましたね。巨石の下敷きになった、お母さんをエレンは助けようとするのですが、助けられずハンネスさんに担がれて逃げる、というシーンです。ハンネスさんも戦おうとしたのですが、あの巨人怖すぎますよね(ザワザワ)。あんなの誰だって逃げ出しますよ。
まあ、目の前で母親を喰われたんじゃ、エリンだって、一生消えない心の傷になりますよ。で、色々あって、蜂飼いに育てられ、色々あって、学堂に入って、そこで王獣リランに出会うのだった。
そして、もう一人の主人公がイアルです。このイアル、心理描写がほとんどなく、色々なぞ? に包まれています。イアルは王の盾という、王のSP的な仕事をしています。王に危機が迫れば、自分が盾になる、それで王の盾と呼ばれているのです。正にSPですね。
上橋菜穂子さんの作品には「王の槍」だとか「王の盾」だとか、上橋菜穂子さんにしか書けないお話ですね。
小説を読むのが億劫という方は漫画でもアニメでも見て、もっと獣の奏者ワールドを知りたい! と、思われましたら、小説を読んでみてはいかがでしょうか。アニメ版は少しストーリーが違いますよ、どう違うのか原作と比べてみるのも面白いかもしれません。
それでは後編に続きます。後編は<探求編><完結編>です。エリンの苦労の果てには何が待っているのでしょうか!。ありがとうございました。




