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派手なギャルと地味なぼく ~目立たないけどあの子、なんか気になるんだけど~  作者: 美濃由乃
二学期

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学校でお泊り‼


「そろそろ消灯時間だから、お前ら準備できてるか?」


 明日の準備もそこそこに、みんなで喋っていたぼくたちは、担任の先生が見回りに来たところでハッとした。時計を見ると夜の十時、寝るにはまだ早い時間だけど、近隣への騒音になると学校としてもシャレにならないと、今日の消灯時間は厳格に決められていた。


「うわっ、もう時間かぁ。まだまだ話足りないんだけど」

「話足りないってお前ら、明日の準備してたの?」


 あきれたような先生が教室を見渡す。それでも、ほとんど終わっていたから、問題はないはずだ。先生も教室の様子から大丈夫そうだと思ったようで、それ以上の小言は言わなかった。


「まぁ大丈夫そうだな。寝具もあるな、じゃお前らも寝ろ、教室に鍵をかけて、明日の起床時間まで静かにしてろよ」

「「「はーい」」」


 元気よく返事をする三人。

 ぼくは、先生が言っている意味がちょっと分からなかった。

 え?教室で鍵かけて寝るの?ぼく男なんだけど、教室で女の子三人と寝ていいの?どっかに隔離しないの?


「先生、ぼくもここで寝るんですか?」

「何言ってんだ。泊まり込みの生徒はそれぞれの教室で寝ることになってるだろ?だから女だけでって……」


「……」←男

「……え? なんで弟月がいるの?」


 しばらく呆然としていた先生、ぼくの存在を段々認識してきたのか、ダラダラと汗をかき始めて、なんだか見ていて可哀そうになってきた。


「ちょっと!委員長⁉ 申請書には四人女って!」

「弟月君ってかわいくて女の子っぽいからいいかなって」

「よくないよね!しっかりして委員長!」


「まぁまぁ先生。お姉さんと弟月君は一緒にシャワーも浴びた仲だよ?一緒に泊まるくらい普通」

「だから浴びてないよね?未遂だよね?」


「私なんて弟月君と朝チュンしてるから問題ないでーす」

「だから事故なんだよね?何もなかったんだよね⁉」


 先生は、ハハッって笑いながら白目をむいていた。正直怖い。


「じゃ、弟月も女ってことで、先生何も知らんから」

「いや、先生しっかりして!よくない状況ですよ!」


 ふらふらと帰って行こうとする先生を慌てて呼び止める。このままだと本当に女の子三人と密室で夜を過ごすことになってしまうじゃないか!僕の声に立ち止まった先生は振り向いて、グッと親指を立てた。


「弟月、せめて教室では、いたさないでくれ、先生気まずいから」

「いたさないですよ!先生しっかりしてください!」


 僕の心からの叫びも空しく、先生はフラフラとした足取りで帰っていってしまった。ポンッと肩を叩かれる。振り返ると委員長が親指をグッと立てていた。


「大丈夫、ふたりといたしてても、私は知らないふりするから、でも……よければ後学のために、撮影の許可を」

「いたしません!」


 委員長に慰められながら教室に戻ると、すでに姉帯さんと新妻さんが寝具の用意をしていてくれた。簡易的なマットレスにタオルケットが綺麗に四枚横並びでピッタリと並べられている。それはもう少しの隙間もなくピッタリとだ。


「あとは誰がどこに寝るか決めるだけだね」

「あ、ぼくは端っこの」

「弟月君は真ん中で決まってるから、後は左右が誰かを決めるだけだから」


 ぼくには初めから選択肢なんてないようだった。問答無用で右から二番目の布団に寝かせられる。すぐにぼくの右隣りに姉帯さん。左隣に新妻さんが横になった。「じゃ電気けすよー」と委員長が教室の電気を消して、一番左の布団に横になる。


 暗くなった静かな教室にみんなの息遣いだけが聞こえる。


 はぁ、はぁ、ハァハァハァハァ、フッー!フゥー!


「うん、ちょっと落ち着いてね。鼻息すごいよ!両方からそんな血走った眼で見られると落ち着いて寝れないよ!」

「いや、もう全然大丈夫、お姉さん全然落ち着いているから」

「私も、これからこのことを冷静になってシミュレートしているから」


 鼻息荒いふたりはちっとも大丈夫じゃなさそうだ。しかも、新妻さんの向こう側からはスマホのカメラを起動させている委員長が今か今かといった感じで鼻息を荒くしている。落ち着いて寝れそうになかったぼくは、強制的に布団を移動。一人だけ暗幕の中で寝ることにした。ちなみに暗幕の中に入ってきたら罰金ねと伝えると、何故か笑顔になったふたりは大人しく布団に戻っていった。委員長が残念そうにしていたのは、見なかったことにして、ぼくはゆっくりと目を閉じたのだった。






チュンチュン、チュンチュン


 聞こえてきた小鳥の声で意識が覚醒していく、うっすらと目を開けると、教室の窓からは太陽の日差しが差し込んできていた。先生が見回りに来てないってことは、まだ起床時間前なのだろう。僕は時計を確認しようとして、身体がまったく動かないことに気が付いた。


「え? え⁉」


 慌てるぼくの目に映ったのは、ぼくの右腕にからまる姉帯さんと、左腕にからまる新妻さん。腕はふたりの柔らかい胸に抱き寄せられていて、足にはふたりの足が絡まっていて、ちょっともう大変な状態だった。


「ちょっとふたりとも!起きて!ていうか何で僕の布団にいるの⁉」

「ふぁ……あれ、弟月君……しょうがないなぁそんなにお姉さんと一緒に寝たかったの?」

「いや、姉帯さんがぼくの布団に来てるの!」


「ん?……お、弟月君、今度こそ私たち、一線を越えてしまったのね」

「越えてない!越えてないと思います!ていうかふたりは寝ぼけてこっちに来たの⁉」


「ちょっと、まだ起床時間前だから静かに……」


 ぼくたちが騒いでいるのが聞こえたようで、委員長も起きぬけにぼくの布団まで様子を見に来たようで、暗幕をめくったまま固まっていた。


「あ、委員長、助けて!この二人を引きはがして!」

「……すごッ、初めて見た。これが、さんぴ」

「言わせないよ!」


 こうして、騒がしい朝とともに、文化祭当日がやってきた。

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― 新着の感想 ―
[一言] いいな〜弟月君、、、 羨ましい、、、
[良い点] 更新待ってました~! 続きを読めるのを楽しみに待ってます!
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