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ハラハラする展開


 夕食を食べ終えたぼくたちは姉帯さんの部屋に戻ってきていた。ちなみにお姉さんも来ようとしていたが、姉帯さんに追い返されている。


 買ってきたお菓子や、飲み物を準備するぼくたち。食卓で会話が弾んだせいか、気づけばもう23時に近い時間になっていた。


「じゃあ、そろそろかな?」

「うん、観ようか」

「そ、そうだね。観よう」


「ホラー映画!」×3


 今晩のメインである。夕食前に出かけたぼくたちは、夏の定番ということでホラー映画を借りてきていたのだった。


 三人でそれぞれ怖そうな映画を選んでみたが、さてどれを観ることにするか……ぼくが、どれにするか考えているとふたりも相談を始めたようだった。



「ちょっと結、結が借りたのって怖いの?」

「子供の頃は怖かった。今は平気だから借りた」

「じゃあ弟月くんも怖がらないじゃん」

「……明日香のは?怖いの?」

「子供の頃は……」

「一緒じゃん」


「でも、どうする?このままだと怖がった弟月くんに甘えてもらう作戦が……」

「こうなったら、弟月くんが選んだ映画にかけるしかないんじゃない?」

「ハロウィンのだっけ?仮装するのかな、あんまり怖くなさそうだけど……」

「ウチらのよりはマシなんじゃん?」

「確かにね、それでいこっか!」


 なんだか拳を握りしめているふたり、何が見たいか決まったのかな?


「姉帯さんと新妻さんはどれが観たい?」

「せっかくだから、弟月くんが選んだのにしようよ」

「え、いいの?」

「私も賛成。一番面白そうじゃない?」

「そっか、ぼくまだ迷ってたけど、ふたりがそう言うならこれにしよう!」

「オッケー、じゃあさっそくセッティングを……」


 カーテンを閉め、部屋の電気を消す姉帯さん。見えるのはテレビの灯りのみで映画館のようだ。


「夜に暗くすると雰囲気あるね」

「せっかくだからね、雰囲気大事」

「ぼく驚いてビクッてなったら恥ずかしいなぁ」

「あはは、大丈夫だって、お姉さんと結がいるから、ね!」


 そう言って両脇に座ってくれる姉帯さんと新妻さん。なんて心強いんだ。いつもならふたりと密着してドキドキするぼくだが、今はホラー映画に気がいって、自然とふたりとくっついていても気にならなかった。


(よし!いい感じ!)×2


 何やら笑顔のふたり、さすがだなぁ……


「じゃあ再生するね」姉帯さんが再生し、ぼくたちは固まって映画を見始めたのだった。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 ぼくが借りた映画はアメリカのある街でハロウィンの日に殺人鬼が現れる話だ。シリーズものの最新作で、マスクをかぶった殺人鬼はかなり怖かった。


 まだ序盤だが、評判通りなかなか怖い。BGMがまたいい仕事をして怖さを盛り上げている。一人で見たらかなり怖かったなぁこれ。ふたりがいてくれてよかった。


 なんて思えていたのは、本当に初めの頃だけだった。今やぼくは、両脇からガッチリと腕を掴まれ、これでもかというほど密着されているため、まともに身体を動かせない。


 少し驚くような場面があると、腕を握っているふたりの手に力が入り、かなり痛い。本当に怖いの平気なのだろうか?段々と疑問に思えてくる。


 新妻さんを見てみる。一見普通に見ているかと思ったが、よく見ると目を完全に閉じていた。この人まったく映画を観ていません。音声とBGMにだけ反応して怖い場面では力が入るようだ。しかも、何故か脚まで絡めてきている。新妻さんのスベスベの脚に挟まれて、もうぼくは脚をまったく動かせない。


 姉帯さんはというと……ほぼ横からぼくに抱き着くような体勢になっており、ぼくの肩ごしで映画を観ていた。観ている分、新妻さんよりは平気なのかもしれないが、問題は別にある。


 これまでにないくらいの力で抱き着かれているため、姉帯さんの大きな胸がものすごい圧迫感で押し付けられていた。もう形が変わるほど押し付けられている。


 映画は面白くて観たいのだが、ふたりに握られる痛みと、ふたりの柔らかい感触でなかなか集中してみることができない。


 映画で殺人鬼が音もなく現れるたびに、抱き着く力と挟まれている脚に力が入り、気が気でないぼくは、普通にホラー映画を観るよりも消耗していくのだった……。



スタッフロールが流れる画面



「い、いや~なかなかだったね、ちょい怖くらい?」

「ま、まぁそれくらいかな?弟月くんは大丈夫だった?」


「ぼ、ぼくは、かなりヤバかったよ……」


「弟月くんは苦手って言ってたもんね。お姉さんが隣にいてよかったでしょ?」

「私も怖くないように手を握ってあげてたもんね」

「う、うん。そうだね」


 そのおかげで、主にふたりの柔らかい感触のおかげで、ぼくの心は疲労困憊だった。


「汗もかいちゃってるね。シャワー浴びる?」


 密着され続けた関係でかなり暑かった。いろんな意味で……


「よ、よければ借りたいです」

「もちろん、あ!一緒に……」

「はい、明日香ちゃんはお部屋で待機ね」

「くっ……」


 姉帯さんに浴室まで案内をしてもらい、ぼくは今シャワーを浴びていた。ちなみに姉帯さんは案内したあと、新妻さんに連行されて部屋に戻っていった。


 シャンプーを借りようとして手を伸ばすが、見覚えのないボトルばかりで、どれがシャンプーかわからない。


 さすがは、姉帯さんの家の浴室だ。置いてあるものは当然女性用のものばかりだろう。種類が多くてどれを使っていいか迷ってしまう。


 気疲れで意識していなかったが、ここは普段姉帯さんもシャワーを浴びている場所なのだと今更ながらに実感する。


 なんだかイケないことをしている気分になってきた。いたたまれないので、早く出たいのだが……


「う~ん、どれを使っていいのか」


「シャンプーは赤い色のボトルだよー」脱衣所から声が聞こえてきた。


「あ、ありがとうございます」求めていたものがわかり、さっそく使ってみるぼく、教えてもらって助かったよ……ん?


「あ、弟月くん?シャンプーわかった?」

「お、お姉さん⁉ な、なんでそこにいるんですか⁉」

「え?シャワー浴びようと思って」


 当然のように答えるお姉さんの声が聞こえる。しかも、浴室のすりガラス越しに何やら服を脱ごうとしている様子が……


「ま、待ってください!出ます!出ますからちょっと待って!」

「え、いいよぉ。弟月くんも入ったばかりでしょ?一緒にシャワー浴びよ、ね」

「いえいえ!いえいえいえ!それはマズイですよお姉さん、ね!」

「だいじょぶだって!私、明日香よりスタイルいいんだよ。喜んでもらえると思うから」

「知ってます!スタイルいいのは知ってますけど、そういう問題じゃなくて!」

「あぁ、そっか」


 何かを理解した様子のお姉さん。服を脱ぐような動きが止まり、ホッと一息つく。


「わかってる。ちゃんと洗ってあげるからね!」

「ち、ちがーいます‼ 落ち着いてお姉さん!そうじゃなくて……」

「洗いっこしようね?」


 まったく伝わっていない。しかもどんどんと服を脱いでいるようなお姉さん。もうほとんど肌色に見えるような気がする。


「ふふ、お姉さん張り切っちゃうよ」

「ま、待って!待ってー‼」


 お姉さんが浴室に入ってこようとしたその時!


「何やってんだ!このバカ姉ー‼」

「いたっ⁉」

「その声!姉帯さん!」


 どうやら騒ぎを聞き駆けつけてくれたようだ。助かった。


「弟月くんと洗いっこするのは私なの!」

「……え?」


「明日香ズルいなぁ。お姉ちゃんも混ぜてくれてもいいんじゃない?」

「絶対にNO!」

「いやいやいやいや。姉帯さんもダメでしょ」


「安心して弟月くん。私が連れて帰るから」

「あ、新妻さん!」

「ゆ、結!ちょ、ちょっと待って裸の弟月がそこに……」

「結ちゃん?あの、私裸なんだけど……」



 その後すぐ、姉帯姉妹は新妻さんが連れて行ってくれた。映画の後もハラハラする展開の夜だった。

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