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楽しかった海の思い出


 海の家での騒動の後、ぼくたちは午後も海を満喫していた。ちなみに新妻さんには改めてかき氷を「あ~ん」させてもらった。その後は機嫌もなおったみたい。


 そうして三人で遊び続け、気が付くと夕方。海に来ていた人たちもだいぶ帰っていったようで、砂浜に人はまばらになっていた。


 夕焼けに染まる海を眺めながら、砂浜に横になった姉帯さんに砂をかけるぼくと新妻さん。


 新妻さんに差し出したかき氷を横取りした罰だそうです。実は機嫌、なおってないかな。



「早いねぇ。もう夕方」砂に埋められながら姉帯さんがつぶやく。


「そうだね。楽しいとあっという間」姉帯さんを埋める手を休めず、どこか寂しそうな様子で答える新妻さん。


 確かに、早いなと思う。今日は朝早くから電車に乗って海に来た。少しでも長く三人で遊んでいたかったから、朝から海に来ていろんなことをした。


 ナンパのような事件があり、窒息しそうになったり、ビーチボールで遊び、海の家にも行くことができた。楽しい時間だったけど、それも もう終わりが近づいていた。


 三人でしばらく無言で夕日を眺める。


「ぼく、今まで友達と海に遊びに来たことなかったけど、今日はすごく楽しかった!ありがとうふたりとも!」


 今日は本当に楽しかった。誘ってくれたふたりにはお礼を言わないと、とタイミングを探していたが、場の雰囲気もあり自然と伝えることができた。


「それはこっちのセリフだよ」

「そうそう、お姉さんと結も楽しかったから、ありがとう弟月くん」


 照れながらもしっかりと返してくれるふたり。



「今日ふたりと一緒に海に来たことは一生の思い出だよ」

「私も、忘れない」

「お姉さんも」


 尊い時間だ。



「来年もまた来ようよ!」新妻さんが呟く。


「いいね、三人でまた来ようよ!」姉帯さんは嬉しそに笑う。


「うん!絶対三人でまた来よう!」


 夕日に染まる海に約束する ぼくたちだった。



「さて、そろそろウチらも帰ろうか?」

「あ、ちょっと……」


「そうだね、今からでも着く頃は暗くなりそうだね」

「もしも〜し」


「じゃあ着替えてまたここに集合しよっか?」

「す、砂が……」


「わかった!またここでね」

「ま、待って……」


「弟月くん、また知らない女に声をかけられても着いていかないようにね」

「お〜い」


「だ、大丈夫だよ。たぶん」

「……」



「ちょっと!お姉さん動けないんだけど⁉︎無視しないで!」

「ぶふっ、に、新妻さん。いつの間にこんなに?」

「話してる間ずっとやってました」


 話をしている間も新妻さんはせっせと砂を盛っていたが、ここまでとは……姉帯さんの身体はしっかりと分厚い砂で埋め固められていおり、胸の部分にはこれでもかと言うほど砂が盛られていた。


「ちょっと結!何これ⁉︎胸に盛りすぎ!塔みたいになってるじゃん!」


 まさにそびえ立つ二本の塔だ。


「別に私より胸が大きいからって何とも思ってませ〜ん」

「む、胸が重い……」

「弟月くんのア〜ンを横取りされた怨み、ここではらす!」

「ゆ、結⁉︎ た、助けて弟月く〜ん‼︎」


 やっぱりまだ機嫌はなおってなかったみたい。なんとか新妻さんを説得して、姉帯さんを砂の中から助けだすのだった。



☆☆☆☆☆



 夕焼けの中、電車が走る。帰路についたぼくたちは、ゆったりとした電車の揺れに身をまかせていた。電車に乗ったばかりのときはまだまだはしゃいでいた。


 けれども段々と眠りに落ちていくふたり。今、ぼくの両肩には姉帯さんと新妻さんが寄りかかって寝ていた。


 いつもは大人っぽくて、ぼくを引っ張ってくれるふたり。寝顔は安心しているのか、安らかで可愛らしかった。いつまでも見ていられそうだった。


 至近距離で寝顔を見つめてしまっていたことを自覚し、慌てて視線をそらす。寝ているうちに見られてたら嫌だよね。


 すぐに寝てしまうくらい海を楽しんでくれたのかと思うと嬉しさが込み上げてくる。穏やかな気分になると眠気がやってきた。


 ふたりも寝てるし、いいよね……揺れに身をまかせ、ぼくも眠りにつくのだった。


楽しい夏はまだまだ続く……



〜途中で起きたふたり〜



「……寝顔ヤバいかわいい」

「うん、ヤバい。写真撮る」

「ゆ、結!私に送ってね!」

「おっけ、ベストショットを狙うから」


「……ふぅ」×2



「今日楽しかったね」

「うん、弟月くんも言ってたけど、マジで一生の思い出かな」

「ああ言ってくれて嬉しかったね」

「うん、感動して泣くかと思った」


「夏休み、まだまだ三人でいっぱい遊ぼ!」

「そうだね!遊びまくるぞー!」


「来年も三人で来ようね」

「うん、約束」


 その時、電車がひときわ揺れた。姉帯さんの胸に寄りかかっていく弟月。


「お!やっぱりお姉さんの胸がいいって」

「んなわけあるか、私の脚が好きなはず!」


 グイッと自分の膝に横にする新妻さん。


「いやいや、お姉さんの胸でしょ」グイッ

「いやいや、私の脚だって」グイッ

「いやいや」グイッ

「いやいや」グイッ



「あの、さすがに起きました」


「あ、あはは…」

「ご、ごめん…」

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