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海でナンパってホントにあるの?


 夏休みが始まって数日。ぼくは今、電車に揺られながら外の景色を眺めている。


 両隣には姉帯さんと新妻さんが座っている。ぼくを挟んで座るふたりは、お菓子を交換しあっていた。


 そう、ぼくは今 ふたりと海へ向かっている。朝早くから電車に乗り込み、だいぶ海も近づいてきたところだった。夏休みの約束第一段 海水浴!


 これまで海に行ったこともなく、せいぜい小さいころに家族とプールに行ったくらいのぼくが、今年は友達と海に海水浴だなんて人生何があるかわからないものである。


「弟月くんも食べる?」新妻さんがお菓子を差し出してくれる。


「あ、ありが……」

「ちょっと待った!弟月くん、お姉さんのお菓子も美味しいよ」


 ぼくが新妻さんのお菓子をもらおうとする直前、姉帯さんもお菓子を差し出してくる。


「ちょっと明日香!私のが先でしょ!」

「お姉さんは弟月くんがどっちを食べたいかが重要だと思いまーす!」

「……」

「……」

「どっちにする⁉」×2


 グイッと両サイドから迫ってくるふたり。今は夏休みで学校には行っていない。当然だ。そうするとふたりは私服なのである。当然だ……問題なのは、ふたりともかなり露出の多い私服だということだ!


 姉帯さんは胸元がかなり空いていて大きな谷間が強調されているし、新妻さんも短めのトップスからはお臍が丸見えだった。


 私服のふたりに会ったときは思わずガン見してしまった。いつも優しくしてくれるふたりに悪いと思い、今はなんとか冷静にと自分に言い聞かせて見ないようにしていた。


 しかし、そんな薄着のふたりに詰め寄られては、ぼくの覚悟も一瞬で吹き飛んでしまいそうだった。


 とりあえず、どちらのお菓子を食べるのかだけど、どっちかなんて決められそうにない。なんとか頼み込んでみるしかなさそうだ。


「姉帯さん(のお菓子)も新妻さん(のお菓子)も両方食べたい!ダメ、かな?」


「……⁉」ドキーン

「……⁉」ドクドク


「も、もちろんいいよ!ね、明日香?」

「う、うん!お姉さんも結もどっちも食べてね♪」

「ありがとう、ふたりとも!」


 よかった。ふたりとも納得してくれたみたい。ほっと胸をなでおろす。どっちのお菓子も美味しそうだもん。両方食べたいからね。


「じゃあ、さっそくお菓子を……」

「こ、ここじゃさすがに恥ずかしいよね」

「お、お姉さんは弟月くんが求めてくれるならどこでも……」

「……お菓子を、ん?」


「わ、私だって弟月くんのためなら!」

「え?どうしたの新妻さん?」


 覚悟した表情で見つめてくる新妻さん。


「弟月くん、お姉さんも結もこう見えて初めてだから…優しくしてね?」

「な、なにをでしょうか?」


 何故か頬を染めて手を握ってくる姉帯さん。


「あ、あの、ふたりとも?」


「ちょ、ちょっと!正気に戻ってーーー‼」


 移動だけでも神経をすり減らしたぼくだった……





☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆





「着いたーー!海ーーー‼」姉帯さんの嬉しそうな声が響く。


 目の前には太陽の光を受けて輝く綺麗な砂浜と海が広がっていた。


「うわぁ、綺麗だなぁ」

「え?そ、そうかな?」テレテレ

「結。海だと思うよ」


 今日は雲一つない晴天で、たくさんの人がビーチに遊びに来ているようだ。どこを見ても、水着姿の人、人、人。家族連れ、友達からカップルまで様々な人々で砂浜は溢れていた。


「私たちもさっそく水着に着替えよっか?」

「更衣室は向こうみたいね」

「じゃあぼく、ここで荷物見てるからふたりは先に着替えてきて大丈夫だよ!」


 ぼくの着替えはほぼ脱ぐだけなので、先に大変そうなふたりに着替えてもらった方がいいよね。


「いいの?弟月くん?」

「大丈夫だよ!ぼくもその後すぐ着替えるから、海で遊ぼう!」

「弟月くんったら!そんなにお姉さんの水着姿が早く見たいのね!すぐ着替えてくる!」

「あ!私の方が先に水着姿見てもらうんだから!」


 そう言ってふたりは全力疾走で更衣室に向かっていった。ふたりの水着姿が楽しみなのは事実なので黙って見送るぼく、水着は買いに行ったときに試着してもらってるんだけど、やっぱり楽しみなものは楽しみなのだった。



「すっごい日差しだなぁ。今日だけで黒くなりそう」


 ふたりの着替えを待つ間にビニールシートを広げて場所を確保する。あいにくパラソルなんてないので、炎天下の中、ふたりがくるのを一人で待っていた。




「ねぇねぇ、キミ?一人で来てるの?」

「あ、着替え終わったの?」


 後ろから声をかけられ、ふたりが戻ってきたかと思い振り向くと……目の前にビキニに包まれた大きなお胸があった。


 大きな胸と言っても姉帯さんじゃない、顔を上げると知らない女の人だった。


 姉帯さんや新妻さんと同じように派手な髪の色のギャルさんで、すっかりと日焼けした茶色の肌が健康的で活発そうな印象を受ける。後ろにもう一人、知らない女の人がいる。この人も派手な容姿をしており、友達のようだ。


 ぼくが、いきなりの事にまだ話せないままでいると、後ろのお友達さんが慌てたように話始める。


「ちょっと、何いきなり知らない人に声かけてるの?困ってるじゃん。ごめんねぇ」

「あ、いえ、大丈夫です。どちら様でしょうか?」


「ん~やっぱり可愛い!」ギュッ

「ふぁあ⁉」


 グイッと抱き寄せられるぼく。ビキニしか着けていない胸に引き寄せられ、ダイレクトに感触を感じてしまう。な、なんだこれ~ 未知の感覚だった。


「ちょっとあんた!いきなりなにしてんの⁉」

「え~いいじゃん。ねね、私たち女二人で遊びに来たんだけど、寂しくてさぁ。きみ、一緒に遊ばない?」

「え?ぼくとですか?」


 うんうんと頷くギャルさん。いきなりの事に思考が追い付かないぼく、助けを求めてお友達さんの方をみるが、何故か期待を込めた目で見つめ返されるだけだった。


「あの、ぼく今日は友達と来てて……」

「そうなの?でもキミを一人にしてどこか行っちゃってるんでしょ?」

「今は着替えに行ってるんだ。だからここで待ってないと」

「でもさ、私らと遊んだほうが楽しいよきっと!いいじゃん、ちょっとだけ、ね?」


 そう言ってぼくの手を引くギャルさん。


「あ、ちょっと!」

「キミのこと気に入っちゃった。私らと行こ!」


 そのまま連れ去られそうになるぼく……



「ちょっと待て、な」ガシッと知らないギャルさんの肩を掴む新妻さんがいた。


「うわ⁉ 誰?」

「そっちがどちら様?弟月くんは私たちと遊びに来てるんですけど」


 知らぬ間に現れた姉帯さんが後ろから守るようにぼくを抱きしめる。安心感を感じると同時に先ほどの知らないギャルさんより大きく柔らかい感触が背中に当たっていた。しかも姉帯さん。ビキニだけだ、これ。



「あ~お友達って、このふたりのこと?」ギャルさんが聞いてきたので、頷くぼく。


「お友達って女の子だったかぁ、一応聞くけど、私らも混ぜてくれない?」


 そろって首を横に振る姉帯さんと新妻さん。


「ん~残念。潔く立ち去りますかね」

「ホントごめんね。それじゃ」


 そう言って離れていく知らないギャルふたり。彼女たちの姿が見えなくなるまで姉帯さんは僕を離してくれなかった。



「もう!弟月くん!知らない女に付いて行ったらダメでしょ!」

「は、はいぃ。すみません」

「まぁまぁ結。弟月くんは悪くないでしょ」

「う、それもそうね。ごめんね。弟月くん」

「いやいや、ぼくこそゴメンね」


 新妻さんは心底慌てていたようで、今は息を整えている。


「けど、夏の海はやっぱり危ないわ。結」

「そうだね、どこの馬の骨が弟月くんにちょっかい出してくるかわかったもんじゃない!」

「絶対にどちらかは弟月くんから離れないように徹底しないと!」

「弟月くんは私たちが守る!」×2


 グッと拳を突き合わせるふたり。水着、似合ってるね。と言いたかったが、決意に燃えるふたりになかなか言い出せないぼくだった。

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