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鈍刀と銀の首  作者: 今田 七王月
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さらわれた姫 前編

夜影としぐれの二人は、埼玉県のとある城下町を訪れたその町は、活気にあふれ人々が行き来してるいさらに、江戸に近い事もあり商業がさかんである。


夜影は、とりあえず今日泊まる宿を見つけるとしぐれと町を、散策することにした。本来であれば、さっさと町を出て目的地を目指すべきだが長旅の疲れもあるし、なによりしぐれの事を思えばここで休息をとっておくべきだろう。しばらく二人で歩いているといきなりしぐれが、足を止めた。

「きれいじゃな。」

しぐれが見ていたのは、きれいな花の模様のついたかんざしだった。

「欲しいのか?」

「べつに欲しいわけでは..... ただきれいだったから見ていただけじゃ」

そう言うしぐれだがその顔は、いかにも物欲しそうである。夜影は、「くすっ」と笑うと店の店主を呼んだ。

「お侍さんどうしやした?」

「すみませんが、そこのかんざしをもらえますか?」

店主は、しぐれに目を向けた

「そのお嬢さんへの贈り物で?」

「ええ、まあ」

夜影は、少し気恥ずかしいと思ったが、しぐれに喜んでもらいたかった。その店の店主は、気前のいい人でしぐれが目の前でそのかんざしをつけた姿を見せるかわりに大きくまけてくれた。

「のうぬしよ本当に良かったのか、こんな高価なものを....」

「ああ、たんに俺がお前につけてもらいたかっただけだ。」

夜影は、かるくしぐれの頭をなでた、するとしぐれは、夜影の手を振り払い夜影の目のに出てくるっと回りにこりと笑ってみせた。

「おぬしは、ほんとにたわけじゃな。」

「まったくだ。」

しぐれの笑顔を見ると少しほっとする夜影だった。


その後も夜影としぐれは、町をまわったしかし、その二人の跡をつける男がいた。その男は、二人の泊まる宿を突き止めると自分の屋敷に帰っていった。その屋敷では、数人の刀を持った浪人たちがいてその中心には、商人風の男がなにやら話していた。

「かしら、いい獲物を見つやしたぜ!」

「ほぉ、どんなだ言ってみろ。」

「それが、かなりの上物で珍しい白い髪に、透きとうるような白い肌で、それはもう美しい少女で」

「なるほどな。それは、金になりそうだ。」

「ただ.....。」

「ただ、なんだ?」

「...役人風の男が一緒にいまして」

「馬鹿か、女連れの役人が何処にいる!!」

「す、すいやせん。」

商人風の男は、そのまま浪人を、連れて屋敷の奥に入っていった。



その頃、夜影は、宿で休んでいた。夜影は、すっかり疲れて壁によりかかり座っていた。すると風呂から上がったしぐれが(ふすま)を開けて部屋に入って来た。

「じつにいい湯じゃった。」

「そうか、じゃあ俺も入ってくるか。」

「ふむ、それがよい。」

それからしぐれは、髪をとくと夜影のそばに行き夜影の胸に耳をつけた。

「おい、しぐれ、、、?」

「なあ、夜影。わっちはの、この旅を精一杯楽しむことにしたんじゃ。もし一人で旅をしておったら今日のように町を周りはしゃぐ事もなかったであろうすべては、おぬしのおかげじゃ本当に感謝しておる。」

「それは、」

「なあ、ぬしよ。わっちは、このまま主と二人で旅をしたい。たとえ最後は、別れることになるとしても、それでもぬしは、わっちと旅をしてくれるか?」

「ああ、もちろんだ目的地までは、一緒だ。」



次の日、宿を出た夜影としぐれは、昼を食べてから町を出ることにした。

「昼は、なにがいい?」

「そうじゃな、美味いものなら何でもよい。」

歩いていた、二人に一人の商人が話しかけてきた。

「お二人さん、ちょと待ってくださいな。」

「わたしたちのことですか?」

「ええ、私は、あきないを営んでおります八吉ともうします。ぜひ私の店に寄って見ていってくださいな。」

「しかし、私たちは、これから食事をとるところで」

「いえいえ、お時間はとらせません少しでいいのです。」

そう言われ、仕方なく夜影たちは、その商人の店に招かれることにした。その店には、高そうな壺や皿がおいてある。しかし、しぐれは、なにやら気に食わないという表情して夜影のそでを引っ張った。

「なんじゃこの店には? ここにあるものは、偽物ばかりではないか。」

「わかるのか?」

「ああ、それよりぬしよ、気をつけろ。あの商人なにかたくらんでおる!」

夜影は、驚いたがなるべく表情にださないようにした。

「どうかしましたか?」

八吉が二人の会話を遮った。

「いいえ、なにも...」

「そうですか。いえね、ぜひ見てもらいたい物がるんですよ。」

そう言うと八吉は、店の奥から一つの箱を持ってきた。

「どうぞ、お開けになってください。」

夜影は、ゆっくり箱を開けた。箱の中には、割れた小皿が入っていた。するといきなり八吉が叫んだ。

「なんてことだ!? 二十両もする小皿を割ってしまうなんて!」

夜影は、あわてて言い返す。

「馬鹿な事を言うな! この皿は、最初から割れていた。」

「いえいえ、さっき私が確認したときは、割れてませんでしたよ。とりあえず二十両きっちりはらってもらいましょう。」

「二十両、、そんな金額はらえるわけがない...。」

するとしぐれが怒鳴った。

「これが二十両じゃと? 嘘を言でないこんな皿が二十両するわけなかろう!!」

「これは、とんだ言いがかりですな。いいでしょうお金がないならあなたをもらいましょう。」

そう言うと八吉は、しぐれの腕をつかんだ。

「おい、しぐれをはなせ!」

夜影が叫ぶと、奥から刀を持った男が二人でてきた。

「その客には、もう用はない帰ってもらえ。」

八吉がそう言うと二人の男は、夜影の両腕をつかみ店の外へ出そうとした。

「この、はなせ....。今助けるぞ、しぐれ。」

「夜影」

しぐれも抵抗をみせるが、そのまま店の奥に連れていかれ、そして、夜影も抵抗むなしく店の裏手になげだされてしまった。

「ざまあみろ、調子に乗って女と歩いているからこうなるんだよ。文句があるならその腰のお飾りでも抜いたらどうだ、この腰抜け侍が。」

そう罵声を夜影に浴びせると男ちは、店の中に入っていった夜影は、地面に拳をつき嘆いた。

「俺は、なんて無力なんだ....約束したのに、、、約束したのに目的地まで一緒に行くとそれなのに俺は....。」

夜影の叫びが空に届いたように雨が夜影を冷たくうった。


「そんな所でいったい何をしているんですか?」


そう言いながら傘を夜影に差し出す者が一人...


ますます雨は強くなる


次回「さらわれた姫」後編




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