告白
新しい店は以前スナックだったらしい。
大幅に改装工事をし、出来上がった自分の店に足を踏み入れた瞬間は感無量だった。
敦こと小杉拓真は思わず口笛を吹きたくなるのを抑えて、床から天井にいたるまで見回した。
「どう? 気に入った?」
「ありがとう、亜由美さん! 想像以上だよ!!」
彼は高島亜由美の細い身体を抱き締めた。
高級な香水の香りが鼻をつく。彼女が実年齢よりずっと若く見えるのは、金をかけて皺を伸ばしているからだ。
それだけじゃない、体型を保つために日々涙ぐましいほどの努力をしていることを知っている。
ある時急に、それらをやめたらどうなるのだろう?
まるで浦島太郎だ。あっという間に白髪になり、顔中皺だらけになるのだ。
「しっかり稼いで、お店を盛り上げてね」
「でも亜由美さん、こんなにしてもらって本当にいいの? 俺……」
「いいのよ。私の楽しみはね、あなた達みたいな若い子がこの広島を、地元を元気にしてくれることなの。あなたも伝説になれるぐらい頑張りなさい」
バカな女。敦は胸の内で舌を出した。
女一人で何店舗もチェーン展開するようなレストランの剛腕経営者でありながら、半分真実ではない身の上話を真に受け、自分の店を持ちたいんだと言ったら、あっさり大金を貸してくれた。
結局、彼女も一皮むけばただの『寂しい女』なのだ。
最初は隼人を指名していた彼女に、タブーとされるルールを冒してまで取り入り、何度も口説いて関係を結んだ。
その後は簡単だった。
隼人と言えばあの弥生という妹。あの女もバカだった。
お前の兄さんが事件を起こして相手に怪我をさせた。このままじゃ刑務所行きだ。
そう言ったらすぐに大金を用意してきた。本当のところ隼人は何もしていない。売られたケンカを買って、相手に大怪我を負わせたのはこの俺だ。
さすがに本人には言えないけど隼人は妹をうっとおしいと言っていた。
いつも自分の身を犠牲にして兄貴に尽くしている、そんな自分に酔っている。いくら血のつながりがないからってそんな気にはなれない。
だいたいあいつの母親は、親父をたらしこんで家に転がり込んできた、どこの馬の骨とも知れない泥棒だ。
そう言うあいつは俺もことも見下していた。
ホステスの子。父親の素性も知れない卑しい産まれ。
お前にはお似合いだよ、この商売。
やってみたら案外上手く行ったし金になるから楽しいけど、そのうち辞めるつもり。
だいたい得体のしれない女なんか触りたくないし、この商売、若さが売りみたいなところもあるだろ? お前、今はいいけどその内、頭とか禿げてきたらどうする?
まー、お前みたいなのはこういう職場がお似合いだよな。
その内、歳とったら裏方で掃除とかしてんだろ? どう見ても経営者ってガラじゃないもんな……。
いつか絶対、思い知らせてやる。
秘密にしているようだが、あいつには特定の女がいる。
隼人が客達の誰にも手を出さないのはその女のためだ。名前は知っている。『あゆみ』だ。
元々この商売を始めたのもその女の為だ。
そうだ、その女を俺のものにしてやろう。女なんて口先一つでどうにでもなるバカばっかりだ。
そして何よりバカなのは警察だ。
あんなくだらない、トリックとも言えないような稚拙な細工を真に受けて、何の関係もない客の女を疑うなんて。
自分が疑われることはないだろう。何しろ隼人とは本気で愛し合った仲になっているのだから。
葬儀の時も少し大げさに見えるぐらい涙を流した。
あいつのことを話す時は、いつだって心から愛したことを印象づけるように注意した。バカな
刑事達はそれが演技だったなんて気付きもしないだろう。




